「悪口だろうが誉め言葉だろうが、少なくとも話題になっているだろう?」これは1990年の記者会見でアンドレ・アガシ(アメリカ)が発した言葉だ。30年後の今日、生ける伝説である彼はナイキの新たなチ…

「悪口だろうが誉め言葉だろうが、少なくとも話題になっているだろう?」これは1990年の記者会見でアンドレ・アガシ(アメリカ)が発した言葉だ。30年後の今日、生ける伝説である彼はナイキの新たなチャレンジコート・コレクションを通じて、再び話題を呼んでいる。米テニスメディアBaselineが報じた。【実際の写真】鮮やかなネオン色のクビトバのウェア

自滅してしまった試合から、歴史的パフォーマンスを見せた試合まで、グランドスラム8回優勝を誇るアガシは、常にユニークで情熱的なテニスを見せてくれた。彼の型破りな態度は世界中を惹きつけ、さらに彼のウェアはテニスに新たな一面を加えた。90年代の反抗的な若手として、アガシはその予測不能なコート上の振る舞いとカラフルなウェアで時に論争を引き起こした。

今回、アガシのスタイルにインスパイアされた新しいナイキのウェア、チャレンジコート・コレクションがニューヨークでお披露目となった。

アガシは緑のネオンカラーと大胆なグラフィックのミックスにデニムという、いずれもテニス界では珍しい素材とデザインをあしらった出で立ちで1990年の「全米オープン」に参戦した。当時、アガシにまだグランドスラム優勝経験はなかったが、正真正銘の熱情とスタイルですでにスターダムへと駆け上がりつつあった。

アガシはインタビューで語った。「テニスは、僕にとって選択ではなかったそれはやらなければいけないことだった。そのうち、それだけしかできなくなったんだ。その状態への腹立たしさはあったと思うけれど、報われる部分も多くあった。そういう矛盾した気持ちを抱えていたから、服装は自分自身が選べて自分のものにできると思った。どちらかというと反体制的な方向を選んだのは、その腹立たしさのせいだね」

チャレンジコートの30周年に、ナイキとアガシは再びチームを組み、あの象徴的なシリーズを復活させた。現在50歳となったアガシだが、ナイキは大胆なフォントと色使いで彼のオリジナリティを打ち出そうとした。チャレンジコートのロゴは、ミスプリントのインク染みに着想を得ている。それはまるでコート上のアガシのように、はちゃめちゃなようで、だがしかし一流の職人技といった印象を与える。

ナイキのデザイン・ディレクターは、「30年前の歴史的コレクションを復活させるのは刺激的で、やり甲斐があり、とても楽しかった。このウェアが今でも共感を得ると確信している」とインタビューに答えている。

今年の大会では、アリーナ・サバレンカ(ベラルーシ)、デニス・シャポバロフ(カナダ)、マディソン・キーズ(アメリカ)、フェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)らが、鮮やかなネオンカラーのウェアでアガシの精神を纏う。

「ぴっちりとアイロンをかけ、たくし込んだ白シャツ。あ~、こんな人達と一緒に居たくない!と思ったもんだよ」とアガシはナイキのビデオで語っている。

90年代の反抗的スタイルは、現在のナイキの選手たちにも人気だ。

ペトラ・クビトバ(チェコ)はアガシのようにプレーできたらいいな、とコメントし、グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)はお気に入りのウェアだと語っている。

コレクションの大胆な色使いは、派手で挑戦的、かつノスタルジックだ。アガシの精神は、引退してずいぶん経った今でもテニス界に深く染み込んでいる。彼のファン、そして現在活躍する選手たちも、彼のスタイルと伝統を引き継ごうとしている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000ウェスタン&サザン・オープン」でのシャポパロフ

(Photo by Matthew Stockman/Getty Images)