「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第19回目の講師は、平泳ぎの競泳選手として高校3年生の時にインターハイで優勝。日本選手権や国際大会でもトップの成績を上げ、リオデ…

「明日へのエールプロジェクト」の一環で、学生とアスリートが今とこれからを一緒に語り合う「オンラインエール授業」。第19回目の講師は、平泳ぎの競泳選手として高校3年生の時にインターハイで優勝。日本選手権や国際大会でもトップの成績を上げ、リオデジャネイロ五輪では金メダルを獲得した金藤理絵さんだ。全国高校水泳部の現役部員や顧問の教員などが集まり、今のリアルな悩みや質問に答えた。

応援してくれる人の力があった

金藤さんは「インターハイが中止となり、私だったら『どうしていただろう』と思った。もしリオデジャネイロ五輪が中止となっていたらと考えたら凄く怖く、戸惑ったと思う」と自分の身に置き換えながら活躍の場を失った生徒の心情に共感し、「この機会を大切にして皆さんが、どんな気持ちなのかを聞いて、どうやって頑張っていけるかを一緒に考えたい」と柔和な笑顔で話した。

金藤さんは高校生に今の率直な気持ちを訊ねた。すると「何もしたくない状況になっていたが、少しずつ明るい気持ちになっている。ただインターハイがなくなり心のどこかで悲しい状態が続いてるが、周りの支えや仲間が支えてくれた」と思いの丈が詰まった言葉を聞き、「私もタイムが延び悩んだ時やロンドン五輪に出場できなかった時は、喪失感がとても強かったが、応援してくれる人の力があったことが嬉しかった」と語った。

次に、金藤さんの高校時代についての話題に。「練習場所は公共施設のプールだったので自由に泳げる環境ではなく、オフには陸上部の練習にも参加もした。常に速く泳ぐためにはどうするかを考えていた」と振り返り、「目標はベストを出すことで、結果よりも努力をすることに重点を置いていた高校生だった」と振り返った。

「水中ではなく、陸上で肺活量のトレーニングをするには?」との質問に対し、金藤さんは「走ることもそうだが、普段の生活から、お腹を凹ませたまま腹式呼吸をすることを意識して欲しい。腹筋の使い方や持久力にもつながってくる」と答えた。すると画面からお腹に力を入れている参加者たちの姿が伝わってきた。

ポジティブなことで1日を締めくくる

メンタル面の質問も多く聞かれた。「ベストが出ないとき、どうモチベーションを上げるのか?」と訊かれると、「上手くいかない時は粗探しをしていた。ただ1つでも良いことを探すことが大事」だと話すと、「練習日誌をつけて、出来なかったことで終わるのではなく、出来たことでノートを締めくくり、少しでもポジティブな気持ちになるように気を付けていた」と、プラス方向に目を向けることの大切さを説いた。

指導者である先生からは興味深い質問が届いた。「多くの選手が大学卒業後に引退するが、どうして五輪を目指し頂点に立てたのか?そのエネルギーはどこから湧いたのか?」。金藤さんは「ロンドン五輪に出場できず辞めめたい気持ちが大きくなっていた。同級生も引退し脱力感もあった。ただ大学院に進学したことで良い意味で勉強に逃げること、水泳以外の友だちが支えになった。あとは辞めたくても辞めさせてもらえなかった加藤(健志)コーチの存在も大きかった」と言う。金藤さんが引退を口にしても引き留め、温かく見守り背中を押し続けた。10年間、二人三脚で歩いてきた加藤コーチは、愛弟子の秘めたる可能性を信じリオ五輪に目標を定めた。

「辞めたい気持ちを理解してもらえず辛かった時期もあった。反抗し、言われるほど意固地になり聞き入れたくなかった」と自らが反抗期だったと口にする。金藤さんは現役続行へと気持ちをリセット。強い覚悟は2016年日本選手権200メートルで2分19秒65の結果を残すと、未もなお日本記録として輝いている。そして続くリオ五輪では金メダルを獲得。師弟の想いが結実した瞬間でもあった。

金藤さんは「周りには頑張りを認めてくれた人たちがいてバランスが取れていた。伝える方法を変えることで生徒の心に言葉は入りやすくなる。周りの環境でモチベーションを保てたことも大きい」と自身の経験を踏まえアドバイスを送った。

また「目標設定の仕方についてと顧問の先生に感謝と共にタイムを出して気持ちを伝えたい」と話す高校生には「大きな目標を達成するための小さな目標を設定することが良い」と答えると「リオ五輪まで、世界一を目指す練習は心身共にきつかった。それでも最後まで応援してくれる人たちと一緒に笑顔になりたかったし、頑張ってきた過程を証明したかった。今、とても感謝をしている」とコメントすると「そういう関係を顧問の先生と作れていることは素敵だと思う」と優しい口調で伝えた。

金藤理絵さんが語る“明日へのエール”

最後に“明日へのエール”を求められた宮﨑さんは、「泳げなかった時にやっていた陸上トレーニングも水泳につながっているので思い出して欲しい。そして試合がなくなりテンションも落ちていると思うが、なくなったものはしょうがない。今、何ができるかを1日の練習の中で考えて頑張って欲しい。皆さんの活躍を応援しています」と、今夏一番となるであろうエールを送ると、ベストタイムが出た時のガッツポーズで記念撮影を行い、オンラインエール授業は終了した。

今後もさまざまな競技によって配信される「オンラインエール授業」。

これからも、全国の同世代の仲間と想いを共有しながら、「今とこれから」を少しでも前向きにしていけるエールを送り続ける。