2020年シーズンもパワプロを使った「eBASEBALL プロリーグ」が開催される(ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment) コナミデジタルエンタテインメン…


2020年シーズンもパワプロを使った

「eBASEBALL プロリーグ」が開催される(ⓒNippon Professional Baseball / ⓒKonami Digital Entertainment)

 コナミデジタルエンタテインメントが手掛ける野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』(※以下パワプロ)は、プロ野球ファンにもおなじみだろう。

 パワプロは2018年からeスポーツ大会「eBASEBALL プロリーグ」を開催しており、eドラフト会議により選ばれた12球団の腕利きのeスポーツプレーヤーが日本一を目指してしのぎを削ってきた。先日も、3季目となる2020シーズンの始動が発表されたばかりだ。

 そんなeBASEBALLの中継では球場での試合さながら、プロ野球OBが解説者を務める姿が恒例となっている。なかでも昨季は「応援監督」に就任し、開催前から各イベントに出席しリーグを盛り上げたのが、真中満氏だ。

 選手・指導者としてプロ野球界で輝かしい実績を誇る真中氏の目にパワプロトッププレーヤーの戦いは、そしてeスポーツという競技の魅力はどのように映ったのだろうか。

──まず、真中さんはパワプロのプレー経験はありますか?

真中 もちろん存在は知っていたし、自分の子供がプレーしている姿を隣で見ていたから内容もある程度はわかっていたけど、自分ではあんまり遊んでこなかったな。だから、こんなに大規模な大会になっていくなんて想像できなかったね。

──そこからeBASEBALL プロリーグで解説を務めて、ゲームやeスポーツに対する印象は変わりましたか?

真中 それまでゲームは「自分でコントローラーを握ってプレーするもの」って感覚だったから、誰かがプレーしているのを観戦するっていう発想はまったくなかった。だから、最初はすごく斬新に感じたかな。観てみると緊張感もあるし、プロとして報酬が絡むことで必死さも感じる。本当にスポーツの大会になってきていて面白いよね。

──「eスポーツ」という表現には賛否あるところですが、プロ野球でご活躍されてきた真中さんにとって違和感はありませんか。

真中 スポーツって言うと「汗をかいて息を切らす」っていうイメージが強いんだけど、eスポーツは指先の細かい感覚だったり、頭を使ったりっていう競技だよね。「スポーツは激しく動いて苦しそうじゃないと」っていう人には浸透しづらいし、なかなか認めたくないのかな。でも大会の雰囲気とか、何度も汗を拭きながらチームで話し合いつつ戦ってる姿を見ると、イメージが変わると思う。選手の真剣さも伝わるんじゃないかな。

──他のゲームジャンル、例えば銃を撃ち合うゲームなどに比べると、パワプロは野球なので伝わりやすいのかなと思いますが。

真中 銃撃戦のゲームだったら、俺は見てても「その撃ち方は反則!」とわからない(笑)。でもパワプロは野球のルールに則った勝負だからわかりやすいね。

──わかりやすいと言えば、プロ野球選手の能力値が出るのも特徴です。あの能力値についてはどう感じますか?

真中 あれは実際の選手もすごく興味を持ってるんだよね。俺も現役の時は自分の評価を確認してたよ。eBASEBALL プロリーグで何度も解説したから、特殊能力も覚えたけどね(笑)。

──「弾道」の能力値の重要性はゲームのプレーヤーでも気づきにくい点ですが、真中さんは見抜いていましたよね。

真中 そりゃ俺は応援監督だから、そういうのはわかるよ(笑)。弾道が最大の4だと、ちょっと芯に当たればホームランになるなって感覚があった。

──失礼しました(笑)。昨年はセ・リーグの順位予想も的中しましたが、初年度のeドラフト会議から見続けてきたからでしょうか。

真中 ドラフトはすごく面白かったな。実際の12球団から指名されるシステムもそうだし、2年目からは1チームが4人になったり、プロテクトルール(※)があったりして、画期的で盛り上がったと思う。残念だけど指名漏れになる人もいるし、意中じゃない球団に指名される人だっている。ドラマがあったな。

※2019年シーズンは前年に所属した3名のうち2名までしか契約できず、そのほかの選手は再度プロテストを経てドラフト会議に臨まなければならなかった。

──初年度に日本一となったライオンズでキャプテンを務めた大川泰広選手が、2年目にまさかのドラフト行きでした。

真中 その大川選手が入ったヤクルトが結果的に優勝したんだから、誰がどの球団に指名されるかも大事な要素だってことがわかるよね。2019年シーズンなんて、ヤクルトは開幕カードでジャイアンツにコテンパンにされて3連敗スタートだったのに。



「eBASEBALL プロリーグ」応援監督の真中満氏。大会では解説も務める

──2年間、eBASEBALLの解説を務められて印象に残っていることはありますか?

真中 やっぱり、マエピーかな。

──リーグが開始される前年の2017年大会で優勝した前田恭平選手ですね。リーグ開始時に最も注目されていた選手でした。

真中 ほかの若い選手がどんどん出てくるなかで、マエピーは結果が出なくてさ。選手のなかで一番悔しいのはアイツだと思うんだよ。特に初年度はヤクルト代表だったこともあって、OBの俺としてはこっそり気にかけていたんだよね。

──残念ながらプロリーグでは2年連続で負けが続いてしまいました。

真中 やっぱりメンタルの部分なのかな。自分も監督のときに90敗くらいしたことがあるから気持ちはわかるし、切り替えて頑張って欲しいね。

──勝ち負けで言うと、現実のプロ野球の結果も重要です。eBASEBALL プロリーグでは、12球団のeスポーツプレーヤーが各球団を操作してペナントに臨みますから。

真中 実際の野球の結果次第では強くなるチームも出てくるから、eスポーツプレーヤーは所属チームの結果にドキドキしてる訳だ! それも面白いね。

──成績もそうですし、投手の持ち球も反映されるので、eスポーツで対戦する際には重要なポイントです。eスポーツプレーヤーは気が気じゃないですね。

真中 昨年はソフトバンクや西武の打線はゲームでも強いって感じたね。球団ごとに戦力差があるのは気の毒だけど、それでも好きなチームを使いたいっていう熱い気持ちのあるeスポーツプレーヤーが、また魅力的だよね。

──パワプロのパワーバランスに影響を与えそうな選手はいますか?

真中 今年、ヤクルトの村上宗隆はこのままの調子でいったら「弾道4.5」ぐらいになるんじゃないか?

──ゲーム内では4が最大の設定なんですが、史上初の4.5になりますか(笑)。

真中 5とは言わないけどさ、4.2くらいにしてくれないかな(笑)。村上は実際の野球でレギュラーを獲得する前からパワプロでは使われてたな。

──そうですね。スワローズのeスポーツプレーヤーは、リーグ初年度からサードのレギュラーとして起用していました。

真中 言い過ぎかもしれないけど、村上はパワプロが育てた、みたいな感覚があるんだよ。逆にパワプロから野球を観た人は「村上って本当にゲームくらい沢山ホームラン打つんだ」って思ってくれたら楽しいな。

村上宗隆を門田博光が分析した記事はこちらから>>

──ほかにeBASEBALL プロリーグの仕組みとして、良かった点や改善点などはありますか?

真中 eスポーツプレーヤーからすると短いかもしれないけど、イニングは5、6回がいいのかな。ポストシーズンの9イニング制の試合は解説もしんどかったな(笑)。

──通常は5イニング制ですが、ポストシーズンの9イニング制は放送席もかなり大変そうでした。

真中 でも実際のプロ野球だと143試合も戦った結果がクライマックスシリーズの数試合で入れ替わっちゃうんだよ。その点、eBASEBALL プロリーグは1試合3ゲームずつにセパ交流戦を足して20試合強のシーズンだから、クライマックスシリーズがあって丁度いいと思ったよ。

──短いほうが、見る側からすると見やすいかもしれないですね。

真中 あとは、最終戦はぜひ盛大にやりたいね。東京ドームでやるとかさ。あんまり勝手なことを言うと怒られるかな(笑)。

──球場で試合ができるとなれば、eスポーツプレーヤーにとってもロマンがありますね。サッカーのeスポーツでは、アーセナルの本拠地で世界大会の決勝(PESリーグ2019ワールドファイナル)が行なわれたケースもあります。

真中 運営の人は大変かもしれないけど、可能性が広がる。今年はちょっと難しいと思うけど、今後に向けてそういう期待があるといいよね。

真中満 プロフィール
1971年1月6日生まれ、栃木県出身。93年にヤクルトスワローズに入団。勝負強さのあるバッターとして頭角を表し、在籍16年間でリーグ優勝、日本シリーズ制覇など数々のタイトル獲得に貢献。2008年の引退後はヤクルトで二軍打撃コーチ→二軍監督→一軍チーフ打撃コーチと経験を積み、15年には監督就任一年目でリーグ優勝を果たした。19年にはeBASEBALLプロリーグ応援監督に就任し、パワプロの魅力を伝えている。