八村塁が残した最新の言葉の数々に、NBAという大舞台で1年近くを戦ってきた自信と成長、そして再びプレーできることになっ…
八村塁が残した最新の言葉の数々に、NBAという大舞台で1年近くを戦ってきた自信と成長、そして再びプレーできることになったことへの強烈な喜びを感じたのは、私だけではなかったはずだ。
リーグ再開後の活躍が期待されるウィザーズの八村
7月3日、八村はワシントン・ウィザーズが主催したシーズン再開前のズーム会見に登場。合計30分以上にわたり、日米のメディアからのさまざまな質問にじっくりと答えた。
「(中断中は)ずっとLAにいて、家でウェイトトレーニングしたり、ジムを何回か借りて使ったりしていました。あとは、チームのズームでのワークアウトセッションが毎日あったりとか、フィルムセッションがあったりしたので、ずっとそれをやって過ごしていました」
新型コロナウイルスの影響による自粛期間中の生活を、八村はそう振り返った。そこで話したのは、中断中の練習方法やモチベーションの作り方、再開後の目標といったバスケットボールに関することだけではなかった。
「アメリカは何でも発言できる自由の国。NBA全体がひとつになって、人種についても話している。そういうリーグにいられて誇りに思います」
人種差別のデモに参加した意図を尋ねられた際には、そのように慎重に言葉を探して答えた。
さらに開催延期になった東京五輪については、「夢であり、大きな目標」であると語り、「チャンスがあればもちろんプレーしたい」と希望を述べた。一方、中断中に楽しんだことについて聞かれると、お気に入りのゲーム『Call of Duty』が「うまくなった」と、まだ22歳の若者らしい屈託のない言葉を返した。
ウィザーズに入団してからの八村は多くのインタビューをこなしてきたが、特にシーズン中の囲み取材は短いやりとりで終わることが多かった。長いシーズンの疲れや緊張に加え、まだルーキーであることのプレッシャーもあったのだろう。
しかし、この日のズーム会見でのコメントは、筆者が知る限り、内容の深みはこれまでの中でベストだったように思う。すでにさまざまな媒体で紹介されているのですべては記さないが、丁寧に言葉を紡いでいく対応に好感を抱いた。
しばらくメディアからも離れたため、インタビューに新鮮味があったことが大きかったのだろう。または、NBAでの経験が余裕を生んだのかもしれない。ようやく、またバスケットボールをプレーできることの開放感、練習再開後に感じた手応えが、言葉をも滑らかにした部分もあったのではないか。
「体重が増えて、体つきも大きくなったってよく言われます。10ポンド(約4.5キロ)ぐらい増えましたね。そういう時間、時期がほしかった。(コロナの影響で)今回はこういうことになってしまったんですけど、時間を無駄にせず(トレーニングが)できたんじゃないかなと思います」
実際に、チームのツイッターなどに投稿されている映像や写真を見ても、もともと1年目とは思えないほど逞しかった八村の体はさらに厚みを増したように思える。すでにシーズン再開に向けたトレーニングをスタートさせ、そのボディを有効に使えている手応えもあるのだろう。
「スリーポイントシュートも、より自信を持って打てるようになりました。まだ対人(のプレー)とかはやってないんですが、僕の体ができてきていることが(いいほうに)出ると思うので、プレーするのがすごく楽しみです」
こういった八村の言葉からは、再びコートに立てることへの興奮が伝わってくる。長い中断が厳しいものだったことは容易に想像できるが、その時間をうまく使えたのであれば、本人だけでなく、周囲も今後に期待せずにはいられない。
もちろん八村は、ただただ”パンデミック下の開幕”に向けてエキサイトしているわけではない。アメリカ国内では、依然として多くの人間がウイルスに苦しんでいる。そういった中でプレーすることへの不安を尋ねると、再び成長を感じさせる言葉が返ってきた。
「(怖さは)もちろんありますね。どの選手もあると思います。子供がいたり、家族が一緒に住んでいる選手もたくさんいます。僕も子供がいたらどうだったのかなと思いますし、やっぱり健康第一でいきたいです」
リスクを理解し、恐怖心もありながら、八村は欠場を考えなかったという。だとすれば、ある程度は精神的に安定した状態で実戦を迎えられそうだ。現実的に、フロリダ州オーランドでのリーグ再開後は、八村がウィザーズ内で重要な役割を担うことになる可能性は高い。
中断時点でイースタン・カンファレンス9位だったウィザーズからは、得点源のひとりだったダビス・ベルターンズが、オーランドでのプレーを辞退することを表明している。さらに7月8日には、大黒柱のブラッドリー・ビールも肩の痛みでチームを離れることになった。トミー・シェパードGMは「誰がチームの得点リーダーになるかはまだわからない」と話してはいたが、現実的に八村がエース的な役割を任されることになるのだろう。
「僕らもプレーオフに行けるチャンスがあると思う。8試合をしっかりと戦って、シーズンもこんな感じになってしまっているんですけど、僕としてもルーキーシーズンをしっかり終わらせて、次のステージに行けたらいいなと思います」
プレーオフ圏内の7位にいるブルックリン・ネッツも欠場する選手が続出しており、ウィザーズのポストシーズン進出の可能性を語る声も増えてきている。ただ、ドラフト上位指名権を得られるという点で、プレーオフを逃すことにはメリットもある。オーガニゼーション全体の最優先課題はプレーオフ進出ではあるまい。
何より大切なのは、若手選手たちが貴重な経験を積むこと。即座に結果を出さなければいけないというプレッシャーは小さいだけに、特に八村のような若手にとってはプレーしやすい環境のはずだ。だとすれば、”サマーリーグの拡大版”とでも表現できそうなリーグ再開後の8試合は、八村の成長度を存分にアピールする舞台になるかもしれない。
「(中断中に重視したのは)スリーポイントシュートの練習や、ミッドレンジ(のシュート)、あとはボールハンドリング。ウィザーズとしては僕に3番(スモールフォワード)、4番(パワーフォワード)でプレーしてほしいと思うので、ボールハンドリングやスリーポイントが必要なのもわかっています。そういうところを意識して練習してきました」
そうやって積み上げてきたものを、久々の実戦でどれだけ披露できるか。1年目から平均14.0得点を記録するルーキーは、”1〜2年目間のシーズン”とも言える再開後の舞台で大暴れできるのか。心身の成長とバスケットボールへの渇望がいい形でミックスされ、状態のよさを感じさせる八村の今後が本当に楽しみだ。