川崎フロンターレ 中村憲剛インタビュー 後編  前編はこちら>>「DAZN Jリーグ推進委員会」のメディア連動企画、…

川崎フロンターレ 中村憲剛インタビュー 後編  前編はこちら>>

「DAZN Jリーグ推進委員会」のメディア連動企画、「THIS IS MY CLUB-FOR RESTART WITH LOVE-」。Jリーグ再開にあたって、川崎フロンターレ中村憲剛選手インタビューの後編をお届けする。今回はクラブの哲学とサポーターへの想いを語ってもらった。

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中村憲剛が川崎フロンターレのサッカーとサポーターへの想いを語った

――フロンターレでの印象的な出来事を語ってもらっていますが、もう1つ、チームとしての分岐点を挙げるとすればどの時期になりますか?

「これはまた難しいですね。ただ、17年間を振り返ってみて思うのは、クラブとして僕が加入する前から”攻撃的”というアイデンティティがあったことです。周りから見ると、関さん(関塚隆)が率いていた時代から、『攻撃的だけど、守備は……』といった印象があったかと思います。当時は基本的に殴り合い上等なダイナミックなサッカーをするチームでしたからね(苦笑)。それはそれですごく魅力的だったと思うんですよ。

 そうした攻撃的なサッカーが、風間(八宏)さんが率いるようになってより緻密になった。ボールをしっかり止めて蹴るところからはじまって、その技術をベースにして個々のイメージの共有へとつながっていった。だから、僕は思うんです。ずっと取り組んできたことで今の結果を導いたと。クラブが何を大事にしてきたかという点が、ブレていなかったんだなと。

 ある監督が来たら攻撃的で、ある監督になったら守備的になるのではない。うちは攻撃的なサッカーがやりたいという哲学がベースにあって、それに合った監督がその都度、チームを率いてきてくれた。今は、オニさん(鬼木達)が自分の色を出しつつ、たくさん得点を奪おうという目標を掲げている。サッカーにトレンドがあるように、そのときどきで目指すサッカーは変わるかもしれませんが、”攻撃的”という哲学は変わらないんじゃないかなと。そこがブレなければ、20年先も30年先も、フロンターレはきっと変わらないと思うんですよね」

――それはチームだけでなく、クラブという単位で見ても言えることかもしれませんね。

「そうですね。優勝したからサポーターが増えたわけじゃないですから。フロンターレはずっと地域密着を掲げてきたクラブ。多くの先輩たちが地道な活動を行ない、地域の人たちに知ってもらって、スタジアムに来てもらって、そこで面白い試合を見せて、徐々に人が増えていったクラブなんです。ある日、突然、サポーターが増えたわけじゃない。

 だから、今いる選手たちもスタッフも、そうした先輩たちの努力があったから今があるのを忘れてはいけないと思います。それはちゃんと今後にもつないでいかなければならないものだと思っています。きっと、今のフロンターレを築くうえでは、どの時代も必要だったと思うんです。いい時もそうじゃなかった時も、変わらないものをちゃんと貫いたから今のフロンターレがある」

――ものすごく漠然とした質問ですが、中村選手がフロンターレっていいなって思う瞬間はどんな時ですか?

「僕、試合に勝って、サポーターのところへ挨拶に行く時からロッカールームに戻るまでがいちばん好きなんですよ」

――それはどうして?

「みんなが笑顔だからです」

――満面の笑顔が見られる瞬間ですね。

「みんなで掴み取った勝利を一緒になって喜んでくれる。サッカーしている時って、なかなかサポーターの顔って見られないじゃないですか。試合が終わって、バックスタンドからサイドスタンドに歩いていって、メインスタンドに戻ってくる。選手同士でも試合の感想を話したり、喜び合いながら、サポーターの人たちが笑顔で名前を呼んでくれたりして。

 あの選手とサポーターがつながる瞬間。あれは何度、味わってもいいんですよね。本当にすごく、すごく、幸せな空気なんです。フロンターレのサポーターは、滅多にブーイングをしない。当初は、それが甘いと言われることもありました。でも、選手からしてみたら、(ブーイングを)されないのも辛いんです。逆にそれがエールになってお尻を叩かれたことは、過去にもたくさんありました。

 もちろん、負けてもなお、チャントを歌ってもらって背中を押されることもあった。だから、フロンターレのサポーターは、いつかタイトルが獲れると信じて、ずっと背中を押しつづけてくれた、そんな人たちなんです」

――そんなサポーターに、3年連続でタイトルを届けてきました。今後のフロンターレはますます期待されるクラブになっていくと思います。

「だからこそ、ピッチ内外を含めて幹となるもの、大事にするべきところはしっかりと受け継いでいかなければならない。ただ、現状維持は後退のはじまり。やっぱり、新しいこと、面白いこと、サポーターの人たちと一緒に楽しめる、喜べるものを常にやっていかなければいけない。そうしなければ、フロンターレらしさは継続していけないと思うんです。……もはや、クラブスタッフの考えに近いですね(笑)」

――最後にリーグ再開に向けて意気込みをお願いします。

「プロスポーツでは野球が始まり、つづいてサッカーも始まります。一方で、甲子園やインターハイなど、小中高生の大会が中止になっている。そうした状況なだけに、自分たちがプレーできる意味を、全Jリーガー、そしてJリーグに関わる一人ひとりがかみ締めなければいけないと思っています。

 だからと言って硬くなる必要はなく、プロってすごいなというプレーを見せなきゃいけない。待ち望んでくれていた人たちが試合を見て、待っていたのはこの週末だったとなるような試合をしなければいけないと思います」

――左膝前十字靱帯損傷からの復帰を目指している自身のリハビリも前に進んでいます。

「そうしたなかで、自分はサラッと復帰できればと思います(笑)。というのは冗談ですけど、おそらく復帰するとなれば、注目してもらえるはず。それだけに、自分自身もいい準備をして臨みたい。やっぱり憲剛のプレーはさすがだなって思ってもらえるように。自分自身もそこに期待してもいるので、そのために日々のきついリハビリを頑張っています。リーグ再開後は、猫の手も借りたいくらいの連戦ですし、きっと出番は来るはず。その時まで温かい目で見守ってください(笑)」
(おわり)

中村憲剛
なかむら・けんご/1980年10月31日生まれ。東京都小平市出身。川崎フロンターレ所属のMF。中央大学卒業後、03年に川崎入り。以降17シーズンでJリーグベストイレブン8回、MVP1回の活躍。クラブの3度のタイトル(J1優勝2回、ルヴァンカップ優勝1回)獲得に貢献している。日本代表国際Aマッチ68試合出場。10年W杯メンバー。