攻めては相手の立ち位置を見定め、しなやかな走りや左足のキックを繰り出す。守っては身長186センチ、体重98キロの体躯を活かし、高低を織り交ぜたタックルを放つ。 ティモシー・ラファエレ。コカ・コーラ加入3年目の25歳だ。主戦場はインサイドC…

 攻めては相手の立ち位置を見定め、しなやかな走りや左足のキックを繰り出す。守っては身長186センチ、体重98キロの体躯を活かし、高低を織り交ぜたタックルを放つ。

 ティモシー・ラファエレ。コカ・コーラ加入3年目の25歳だ。主戦場はインサイドCTB。今季の日本最高峰トップリーグでは、ここまで全7試合に出場中である。その存在を、チームの山下昂大主将も頼もしく思う。

「パスもいいし、(ボールを持てば)何かをしてくれる」

 勢いは加速するか。ラファエレは今回、ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチ率いるラグビー日本代表候補にも名を連ねた。「嬉しかった。うん、嬉しかった」。9日からの第1回合宿(都内)の直前、10月3日発表のメンバーに追加された。目指すは2019年、ワールドカップ日本大会での日本代表入りだ。

 サモアにルーツを持つ。お手本にするのはニュージーランド代表94キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)の万能型CTB、コンラッド・スミスだと語る。

 生まれ育ったニュージーランドでは18歳以下オークランド代表入りの実績を残したが、国代表経験はない。そのため、ジャパン入りの資格を有している。

 2010年、吉田浩二監督のスカウトを受け、関東大学リーグ戦2部の山梨学院大に入学した。ラストイヤーの入替戦では1部昇格も、自身はずっと2部でプレーしていた。

 そんな存在がトップリーグに加われたのは、1人の名士のおかげだった。元日本代表監督で、コカ・コーラの向井昭吾ゼネラルマネージャー総監督(当時)はこの才能に「ジャパンになれる」と太鼓判を押した。「向井さんがチャンスをくれた」。本人は、その感謝を忘れない。

 日本で好きになったのは「温泉」と「海」だと笑うこの人、ナイスガイとしても鳴らす。コカ・コーラの山下主将は、同僚の一面をこう明かしていた。

「めっちゃいい奴。チームにコミットしてくれる。海外のプロ選手が少しルーズになってしまうような時間やルールも、本当に守ってくれる」

 セールスポイントを問われた本人は、「試合中のチームメイトとのコミュニケーション」と即答する。周囲の選手の声から空いたスペースを探し出し、適切なプレーを選択する。英語はもちろん、日本語も流ちょうに話す。ナショナルチームでの「コミュニケーション」に問題はなさそうだ。

 23日は福井・テクノポート福井スタジアムで、トヨタ自動車とのトップリーグ第8節に先発。これが終われば都内へ出向き、ジャパン候補の第2回合宿で存在をアピールする。(文:向 風見也)