-WORLD BASEBALLの記事一覧はこちら- 7年ぶりにメジャーリーグの公式戦が日本で開催されている。それにちなみ、今回からはアメリカの野球について紹介していきたい。 この国が野球の母国であることは誰でも知っていることであるが、実際の…



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 7年ぶりにメジャーリーグの公式戦が日本で開催されている。それにちなみ、今回からはアメリカの野球について紹介していきたい。

 この国が野球の母国であることは誰でも知っていることであるが、実際のところこの競技は、1830年代から40年代に、当時の大多数のアメリカ人の出身地であったイングランド発祥のボールゲームにアレンジが加えられて形成されたというのが妥当なところであろう。実際、近年の研究では、イギリスにも「ベースボール」と呼ばれるゲームが存在していたことも判明している。

 他の多くのスポーツのように、原初の野球は、地方ごとにルールもバラバラであったが、1845年、アレクサンダー・カートライトによって定められたルールが現在の野球の基礎を作った。
このルールに従ったゲームが最初に行われたニューヨーク・マンハッタン島の対岸にあるニュージャージー州ホーボーケンには、その記念碑が建てられている。この「最初の野球の試合」を行ったニッカーボッカーズを中心として、1858年に全米野球選手協会が結成されると、「ニューヨークゲーム」が各地のゲームを包摂していく。



 しかし、この「事実」よりも、多くのアメリカ国民が信じてやまないのが、これより先、1939年にニューヨーク州クーパーズタウンでアブナー・ダブルディ将軍により野球が「発明」されたという「神話」である。実のところ、この「神話」の信憑性は薄いのだが、アメリカ人はこれを信じてやまず。現在この田舎町には、これを顕彰して野球殿堂が建てられている。

 アメリカ北東部・ニューイングランド周辺のローカルゲームだった野球は、その後、1960年代に起こった南北戦争の結果、南部にも普及し、「ナショナル・パスタイム(国民的娯楽)」として成長する一方、ルールの改編も進み、20世紀に入る頃にほぼ現在の形式を整えることになった。現在、投手板とホームベース間の距離を長くしようという改変が、アメリカで試みられており、侃々諤々の議論が繰り広げられているが、「野球事始」の当初は、この距離はおろか、塁間の距離も正式には定められていなかった。投手と打者との間の距離は、次第に長くなり、現在の60フィート6インチ(18.44m)となったのは、1893年のことである。
 
アメリカの人々の心をつかんだ野球は、多くの観客を集めるようになり、プレーに対し報酬を手にする者も現れるようになった。全米野球選手協会は当初、選手の報酬受け取りを禁止していたが、この流れに逆らうことはできなかった。
1869年に世界初のプロ野球チーム、シンシナティ・レッドストッキングスが結成されると、プロ化の流れは加速し、1871年には最初のプロリーグ、ナショナルアソシエーションが誕生、1876年には、現在まで続くナショナルリーグが誕生し、各地に勃興していた他のプロリーグと区別するべく「メジャーリーグ」を名乗った。


文・写真=阿佐智