-WORLD BASEBALLの記事一覧はこちら-  この秋に行われるプレミア12の球場紹介も3回目となった。これまでの連載をご覧になってわかったように、近年はトップレベルの国際大会が実施される各国のスタジアムは、その規模は小さいものの、設…

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 この秋に行われるプレミア12の球場紹介も3回目となった。これまでの連載をご覧になってわかったように、近年はトップレベルの国際大会が実施される各国のスタジアムは、その規模は小さいものの、設備面においてはアメリカや日本のそれと大差ないレベルになってきている。

 前回紹介した台中インターコンチネンタル棒球場に代表されるように、台湾では1999年代終盤から野球場のイノベーションが進んできた。現場からは、スタンドは整備されたがフィールドはまだまだ、いまだに小石が転がっている。という声も聞こえるが、現在では国際大会を開催できる球場は台湾各地に存在する。

 今回紹介する桃園国際棒球場もそのひとつだ。台湾の玄関口である桃園国際空港のすぐ近くにある2009年末完成のこの球場は、これまで2011、2013年のアジアシリーズ、前回のプレミア12などの国際大会で使用されている。

 2011年からはプロリーグ、CPBLのラミゴ・モンキーズの本拠となり、この球団が人気、実力とも台湾ナンバーワンになるにつれて、この球場も台湾一のボールパークへの成長を遂げた。
 
 台北市街と桃園国際空港はMRTという高架鉄道ができたおかげで簡単にアクセスできるようになった。桃園国際棒球場はこのMRTで空港から約20分。台湾自慢の新幹線、「高鉄」の駅からわずか1駅だ。球場への最寄り駅、体育園區駅の内装はホームチーム、ラミゴ・モンキーズ一色となっている。

 1990年のプロリーグ発足以来、フランチャイズ制がなかなか定着しなかった台湾において、この球団は、南部の都市、高雄から本拠地を移し、球団名を親会社名を冠したラニュー・ベアーズからラミゴ・モンキーズ(中国語名、桃猿)に改め、地域密着を推し進めた。

 その成果は確実に現れた。ラミゴ・モンキーズは桃園移転以来8シーズンで5回の優勝を遂げ、今シーズンも3連覇に向けてスタンドのファンを熱狂させている。

 駅から球場へ向かうと、まず印象に残るのは木が絡まったように見えるアートな外観だ。実際には金属の棒を組み合わせ外壁に張り付けているのだが、コンクリートの塊とも見られがちなスタジアムに建築美を吹き込んだその外観は、世界のスタジアムの中でもトップクラスと言っていいだろう。

 かつてはこのスタンドからがスタジアムの始まりだったのだが、現在はこのスタンド周囲のデッキの周囲を柵で囲い、このスペースで試合前に様々な催し物が行われている。今はやりの「ボールパーク」だ。

 スタンド内に入ると、フード、ショップの充実ぶりには驚かされる。スタンドの通路はまるでショッピングモールのフードコートのようだ。

 試合が開始されると、2層の内野スタンドはラミゴの大応援団一色となる。その迫力は、日本で言えば、広島や阪神のそれに匹敵するだろう。台湾の現在の応援スタイルは、日本の応援歌によるそれと韓国のスピーカーと美人チアによるそれをミックスしたもの。この応援風景を見るだけでも台湾での野球観戦の価値がある。

 今大会、ここで台湾代表は戦わない。実施される2試合はともに日本戦だ。侍ジャパンはオープニングラウンドB組開幕戦のベネズエラ戦と、翌日のプエルトリコ戦をここで戦う。

 台湾では、日本のプロ野球が大人気だ。プロ野球のスタンドでも日本のチームのユニフォームやTシャツ姿を頻繁に見かける。プレミアの舞台でも、台湾のファンが大声援で侍ジャパンを後押ししてくれることだろう。

文・写真=阿佐智