-Future Heroes 一覧はこちら-  3年前に弟ともに生まれ育った徳島県吉野川市から青森県八戸市へやってきた武岡大聖が、憧れの舞台でその存在を知らしめる活躍を遂げた。<弟・武岡龍世の記事はこちら> 6月10日に開幕した第68回全日…

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 3年前に弟ともに生まれ育った徳島県吉野川市から青森県八戸市へやってきた武岡大聖が、憧れの舞台でその存在を知らしめる活躍を遂げた。

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 6月10日に開幕した第68回全日本大学野球選手権大会。その大会初日の第2試合・佛教大戦で武岡大聖(3年・生光学園)が2打席連続本塁打を放ちチームの全打点となる3打点を挙げて大きなインパクトを残した。

<佛教大 対 八戸学院大 のハイライト動画はこちら>

 生光学園時代は高校通算27本塁打を放ったものの最高成績は徳島大会ベスト4。その悔しさがあり大学でも野球を続けることを決めると、弟・龍世が先に進学の方向を決めていた八戸学院光星の系列校である八戸学院大に進むこととなった。

 同じ寮で過ごし、自主練習の時間に兄弟で力を合わせて鍛錬していくと、まずは弟がメキメキと力をつけていく。兄が果たせなかった甲子園に昨夏、今春と出場を果たし、侍ジャパン高校代表の国際大会準備対策合宿に召集されるドラフト候補にまでなった。

 四国では龍世が「武岡(大聖)の弟」と言われていたが、今やアマチュア球界では大聖が「武岡(龍世)の兄」と言われるほど立場は逆転した。大聖も負けまいと昨秋にはさらなる高みを目指して捕手に挑戦するが、その難しさや打撃に取る時間が減少したこともあって持ち味の打撃が低迷。ベンチを温める日が多くなり、明治神宮大会出場をかけた東北代表決定戦でも最後の打者となり、全国への道が閉ざされた。

 そんな苦悩の日々で奮い立たせてくれたのが全国区に活躍を広げる弟の姿だ。再び外野手に戻ると、3月のオープン戦期間に正村公弘監督からノーステップ打法を提案されて、これが見事にハマった。春のリーグ戦では打率.371を放って富士大の11連覇を阻止して優勝を果たして、高校時代に叶わなかった全国の舞台に乗り込んだ。

 そして迎えたこの日、車で8時間をかけて徳島からやってきた両親や親戚の前で2打席連続本塁打。野球を始めるきっかけとなった憧れの阿部慎之助(巨人)がプレーする東京ドームでの大活躍に父子とも「夢のよう」と口を揃え、表情を緩ませた。

 父・克明さんは「兄弟でよく食事に行くようで、互いにホームシックなども一切なく、寮生活によって生活面でもすごく成長してくれています」と活躍に目を細め、「これまでは弟ばかりが目立っていたから良かったですよ」と安堵の表情を見せた。

 チームは9回に4点を奪われる逆転サヨナラ負けを喫して初戦敗退となったが、大聖は「1回でも全国に出た経験は今後に生きるはず。必ずここに戻ってきます」と力強く誓った。
 
 今大会で得た自信と悔しさ、「良きライバル」と認める弟の存在を糧とし、今後もさらなる活躍を目指す。

文・写真=高木遊