新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中断していた2019-2020アメリカPGAツアーが、91日ぶりに再開。テキサス州フォートワースのコロニアルCCで、チャールズ・シュワブ・チャレンジ(6月11日~14日)が行なわれた。 試合は大混戦のな…
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中断していた2019-2020アメリカPGAツアーが、91日ぶりに再開。テキサス州フォートワースのコロニアルCCで、チャールズ・シュワブ・チャレンジ(6月11日~14日)が行なわれた。
試合は大混戦のなか、ダニエル・バーガー(27歳/アメリカ)とコリン・モリカワ(23歳/アメリカ)の2人が、通算15アンダーのトップに並んでプレーオフに突入。その1ホール目、ボギーのモリカワに対して、バーガーはパーで上がり、ツアー3勝目を挙げた。
大きな問題もなく、大会も無事に終わった。”無観客”での開催となり、選手たちは皆、「ファンの歓声が聞こえないのは、本当に寂しい」と口をそろえたが、PGAツアーのジェイ・モナハン会長は、「とにかく(選手、キャディー、大会スタッフ)全員が、安全に過ごすことができたなかで、世界にライブスポーツを届けられた意義はとても大きい」とコメント。あらゆるプロスポーツの中で、ゴルフが先駆けて再開し、しかも何事もなく終えられたことに胸を張った。
モナハン会長も語っているとおり、この大会が最も「成功した」とされるのは、出場した選手148名、キャディー、そして大会関係者からひとりも、コロナの”陽性”反応が出ず、最後まで安全に行なわれたことだ。
各選手は事前に、37ページにも及ぶ『健康と安全を守るプラン』というガイドラインを受け取って、”ニュールール”に沿って参戦した。
現地に向かう前には自宅で唾液検査のテストを行なって(こちらは任意)、現地到着後はすぐにPCR検査を受ける。さらに、大会期間中にも再テストを受けて、そこで万が一”陽性”反応が出た場合、選手は大会棄権の処置がとられる。その他、「ソーシャルディスタンスを取る」「会場では食事ができない」「コーチは練習場でも選手に触れることは禁止」など、細かい決まり事がガイドラインには列記されていた。
その結果、全員の健康が守られた。そのことが「一番の成功」と評価された。ちなみに、同じ週に再開した下部のコーンフェリー・ツアーでは、自宅での事前テストで、選手1人、キャディー3人に”陽性”反応が出ている。
無観客開催で再開したPGAツアー。選手たちはソーシャルディスタンスを保ってプレーした。右はロリー・マキロイ。左はブライソン・デシャンボー
何はともあれ、世界ランキング1位のロリー・マキロイ(31歳/北アイルランド)をはじめ、トップ5が勢ぞろいした同トーナメント。出場選手たちは、およそ3カ月ぶりの公式試合に大いにエキサイトした。
この大会には初出場ながら、優勝候補の最右翼だったマキロイは、3日目までは好調をキープ。首位と3打差の9位タイで3日目を終えたものの、最終日に崩れて、通算6アンダー、32位タイに終わった。それでも、まずはツアー再開を何よりも喜んで、こう語った。
「とにかく、試合に戻って来られたことが本当にうれしい。ロックダウンの期間は、最初の2カ月間はほとんどゴルフをしなかった。こんなにクラブを持たなかったのは(生まれて)初めて、というほど。
(再開までの)最後の1カ月は(フロリダ州の)自宅近所に住む仲間とプレーをしていた。ダスティン(・ジョンソン。35歳/アメリカ)や、リッキー(・ファウラー。31歳/アメリカ)、シェーン(・ローリー。33歳/アイルランド)らと頻繁にラウンドをこなしたけど、試合を戦いたくて仕方がなかったよ。
(無観客試合で)ファンがいないのは残念だけど、ルールをしっかり守って、ツアーが継続できるように努めたい」
世界ランキング3位(大会時点)のブルックス・ケプカ(30歳/アメリカ)も、再開初戦からカムバック。マキロイと同様、32位タイと振るわなかったが、「この3カ月の休みは、僕にとってはある意味”ボーナス”だった」とケプカ。膝を痛めていた彼にとっては、ツアー中断期間がいい休養になったという。
「おかげで、しっかりとリハビリができた。本当のところ、シーズン中に(故障した膝は)もう二度と戻らないと思っていたから、この休みはありがたかった。そのうえ、(膝は)以前よりもいい状態になったから、今は戦えることが本当にうれしい。ツアーもすばらしいルールを作ってくれたから、安心して転戦を続けられる」
膝の負傷という長いトンネルから抜け出したケプカ。以前よりも明るい表情を見せていた。
一方、母国スペインの家族のことを思いつつ、不安な日々を送っていた世界ランキング2位のジョン・ラーム(25歳/スペイン)も、ツアー再開には喜びの声を上げ、試合に向かう士気は高まっていた。
「3カ月も試合に出なかったのは、これまでの人生で最長。だから、自分への期待をどれだけ抑えることができるか。そこが、今週のカギだ」
しかし、ラームは予選落ち。久しぶりの試合で、逸る気持ちをうまく抑え切れなかったようだ。
悲喜こもごもあったにせよ、PGAツアーは再開を果たした。ただ、モナハン会長が「ここからがまた、新しい挑戦」と言うとおり、今後も新型コロナウイルスとどう共存していくのか、という課題と向き合っていかなければいけない。
今回にしても、PGAツアーが取り決めた”ニュールール”がしっかりと守られていたか? というと、そうではない。握手の代わりにグータッチで挨拶をかわしつつも、うっかりハグをしてしまうこともあったし、選手はキャディーバックから自らクラブを抜くように定められていたが、キャディーからクラブを手渡されることがほとんどだった。
また、メディアとのやり取りについては、ソーシャルディスタンスを守るためにリモート映像によるオンライン形式で行なわれたが、質疑応答がうまく続かなかった場面が見られた。
そうしたこと含めて、「より安全を守るため、ルールもいくつか修正していくと思う」とモナハン会長。次戦以降へ、より万全な対策を取っていく構えだ。
そして次戦は、サウスカロライナ州ヒルトンヘッドのハーバータウンGLで、RBCヘリテージ(6月18日~21日)が開催される。そこで、松山英樹もいよいよ復帰する。今週と同様、世界ランキングトップ5が勢ぞろいする同トーナメントにおいて、松山はどんなプレーを見せてくるのか、注目したい。