コンセプトは「もう一つのプロ野球」、「eBASEBALL プロリーグ」開催の目的とは「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形…

コンセプトは「もう一つのプロ野球」、「eBASEBALL プロリーグ」開催の目的とは

「eBASEBALL プロリーグ」は、一般社団法人日本野球機構(以下、NPB)と株式会社コナミデジタルエンタテインメント(以下、KONAMI)の共催という形で発足した「実況パワフルプロ野球」(以下、パワプロ)のプロ野球 eスポーツリーグだ。そのリーグのこれまでの軌跡とこの先の展望について、主催のNPB、KONAMIを代表して谷渕弘氏(KONAMI/eBASEBALL プロリーグ 統括プロデューサー)にインタビューを行った。

 第1回は「『eBASEBALL プロリーグ』誕生」。「eBASEBALL プロリーグ」開催の目的と、実現までの道筋について取り上げる。

 2018年7月19日、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」(名称は当時。現在は「eBASEBALL プロリーグ」)の開催が発表された。KONAMIが開発するパワプロという“ゲーム”の、それもeスポーツのリーグを“リアル”のプロ野球を総括するNPBと共催するという試みは、多くのパワプロファン、プロ野球ファンの注目を浴びた。

 リーグのコンセプトは「もう一つのプロ野球」である。eドラフト会議、eペナントレース、e日本シリーズ――「プロ野球ファンの方にも違和感のない大会設計を心がけました」と谷渕氏も語るように、プロ野球ファンにはなじみ深い言葉が多い。実際にリーグを戦うのもセ・パ12球団だ。また、対戦は1対1だが、チームとしては3人(現ルールは4人)という点も団体戦である「野球らしさ」をうかがわせる。

 そこにはプロ野球ファンへのなじみやすさだけでなく、実際の選手を元にしたデータで遊ぶことができるパワプロという「野球ゲーム」が、リアルのプロ野球をなぞることによる面白さがある。同時に、ゲームならではの要素(特殊能力など)が加わることで、リアルにはない作戦や展開が生まれる。現実と仮想の比較がまた新たな野球の側面を見せてくれる。谷渕氏は「eBASEBALL プロリーグ」開催の狙いについてこう語った。

「世界市場、特に若年層に人気のあるeスポーツを通じて、プロ野球を広く紹介できる場を設けること、プレイヤーに活躍できる場としての大会を開催することで、多くの方々に野球や野球ゲームの新たな楽しみ方を提供し、そしてそれを大きな意味での野球ファン醸成、野球振興につなげるのが目的です」

 eスポーツは現在、日本でも大手企業の参入などもあり徐々にその認知度を上げている。これを新たなアプローチとして野球振興につなげる一方で、既存のプロ野球ファンにもゲームという一味違う“プロ野球”の楽しみを提供する――「eBASEBALL プロリーグ」は、リアルとバーチャルの垣根を越えて、野球と野球ゲームの新しい関係を築く。

NPBとKONAMIの想いが一致。1年もしないうちに企画が実現

 ここからは「eBASEBALL プロリーグ」が生まれるまでをたどる。まず、KONAMIがeスポーツへの取り組みを検討し始めたのは2015年だと谷渕氏は言う。

「その当時は、まだ日本ではeスポーツという言葉は(広く)知られていませんでしたが、海外事例を参考に手探りで取り組んでいきました」

 そのなかで、「パワプロフェスティバル2016(2016年)」、「パワプロチャンピオンシップス2017(2017年、NPB公認)」とKONAMIが独自にパワプロの公式大会を開催。そして2017年後半に、プロ化の構想が持ち上がった。2018年初頭には、NPBもeスポーツへの参入を検討していたこともあり、思惑が一致。2018年に共催という形で「eBASEBALL プロリーグ」を立ち上げることが決まった。

 リーグの設立には参加するプレイヤーはもちろんのこと、ルールも重要だ。パワプロの大会のノウハウを持つKONAMIがルール制定の主軸を担当。リーグを構成する12球団については、NPBが主だって動いた。

「ルールはこれまでの大会での経験をもとに、KONAMIがたたき台を作成し、NPBと意見交換しながら決めていきました。(リーグの)大枠については主催者となるNPBとKONAMIが協議して事前に方針を固め、12球団が集まる会議にて合意を得ておりました。各球団との個別の折衝は、NPBが主に行い、KONAMIがフォローしました」

 こうして2018年初頭から2018年7月までの半年ほどの短い間に、「eBASEBALL プロリーグ」の計画は進み、1年目が始まった。開催発表までに壁になったのは何か、という質問に対し、谷渕氏はこう答えた。

「開催発表に向けて、準備の時間は厳しかったですが、想定よりも順調に進みました。一方で、開催発表後の方が、多くの壁にぶつかっています(笑)」

 さらに大きなコンテンツへの成長を目指す「eBASEBALL プロリーグ」にとってリーグの開催はゴールではない。1年目、2年目を終えた今でも課題は山のようにあると言うように、まだ「eBASEBALL プロリーグ」は生まれたてで、これからのコンテンツだ。1年目のスタートは、「eBASEBALL プロリーグ」が競技として、そしてひとつのビジネスとして発展していく歴史の始まり。私たちは、時代の先端にいる。(「パ・リーグ インサイト」丹羽海凪)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)