東京V eスポーツチームのy0ichiro(左)とTakaki サッカーゲームにはふたつのビッグタイトルが存在する。海外のゲーム会社EAが開発する『FIFA』シリーズ、そして国内のKONAMIが手掛ける『ウイニングイレブン(ウイイレ)』…



東京V eスポーツチームのy0ichiro(左)とTakaki

 サッカーゲームにはふたつのビッグタイトルが存在する。海外のゲーム会社EAが開発する『FIFA』シリーズ、そして国内のKONAMIが手掛ける『ウイニングイレブン(ウイイレ)』シリーズだ。『FIFA』は世界中さまざまなリーグのクラブや選手が実名で登場し、テンポの早いプレー感を特徴としている。一方『ウイイレ』はプレーの手軽さから国内のプレー人口が多く、スマホ版も盛況だ。

 そんな両タイトルのプロeスポーツ選手を抱える珍しいJリーグのクラブが、東京ヴェルディだ。ヴェルディのeスポーツチームには『FIFA』を主軸に『フォートナイト』などシューティングゲームでも活躍するy0ichiro(よーいちろう)と、『ウイイレ』のタイリーグに単身乗り込むフロンティア精神あふれるTakaki(たかき)ら総勢9名の選手が所属している。共にヴェルディらしい「開拓者精神」を体現するふたりに、現在の活動や今後の野望などを聞いた。

――おふたりがプロのeスポーツ選手になったきっかけを教えて下さい。

y0icihiro 幼少期からゲームが好きで、親がインベーダー世代で理解もあり、さまざまなジャンルのゲームに触れてきました。ずっと『ウイイレ』をプレーしていましたが、高校1年生の頃に友人の紹介で『FIFA』と出会いました。

 好きなゲームで生計を立てることを希望していたのですが、私が大学生の頃はeスポーツという単語自体ほとんど知られていませんでした。ただ『FIFA』で上を目指す(※1)気持ちはあって、その時に当時東京ヴェルディに所属していたマイキー選手と会い、その縁からヴェルディにお誘いいただきました。
※1 国内では『FIFA』シリーズの大会 「eJリーグ」などがあり、そこで優勝者して世界予選を突破すると「FIFA eワールドカップ」に出場できる。

Takaki 小学生の頃に『ウイニングイレブン』の存在を知りました。そのときは楽しんでプレーする程度だったのですが、中学からYouTubeなどで上手い人のプレーを見て練習するようになったんです。高校生くらいの時に『ウイイレ 2015』の日本代表を選出する大会を見て、徐々にeスポーツのプロになりたいと思うようになりました。

 とはいえ、当時はeスポーツが今ほど盛り上がっておらず、一度ゲームから距離を置いてしまいました。3年くらい経った時にeスポーツが盛り上がり始めて、そのタイミングで改めて『ウイイレ』を本気でプレーするようになったんです。そしてヴェルディ所属のらんこむ選手と仲良くなってヴェルディeスポーツが主催するイベントに参加していくうちにオファーをいただき、僕もヴェルディに所属することになりました。

――eスポーツ選手として、普段はどのような活動をされていますか?

y0ichiro 『FIFA』の大会は9月からシーズンが始まり、期間中は世界各地で大会が行なわれます。オンシーズンですと、1日あたり4~5時間ほど練習をしています。操作の練習や、ほかのプレーヤーの配信を見ての研究、トッププレーヤーとの練習試合を録画して見返すなど、強くなるために必要なことはたくさんあります。

 ただ、本来であればこの時期(5月)に大きな世界大会が開催されている予定だったんですが、コロナ渦の影響で大会の中止、延期が相次いでいます。そのため多くの『FIFA』選手にとってはオフシーズンのような状況になっています。

 現在はバーチャルな車を操作してサッカーを行なう『ロケットリーグ』というゲームでも世界を目指していて、そちらの練習が中心ですね。

Takaki 僕は『ウイイレ』の練習をしています。ゲーム内の練習に特化したモードを利用し、普段一緒にプレーしている仲間と通話して意見交換しながら練習しています。僕も気がつくと4~5時間はプレーしていますね。

――戦ってみたい相手はいますか?

y0ichiro 先日スペイン1部エイバルのダニ・ナバレテ選手と対戦する機会がありました。また、レバンテにはマエストロという選手がいて、彼はPS4版『FIFA』(※2)でもトップレベルで強いプレーヤーなんです。ゲームの特性に合ったプレーをしますし、判断が早くスピードもあってすばらしい選手なので、ぜひ戦いたいですね。
※2 『FIFA』にはPS4版とXbox One版があり、日本ではPS4版をプレーする選手が多い。

 ほかにもスイスリーグのバーゼルに所属しているニコラス・ビラルバ選手とも戦ってみたいです。ゲーマーらしい戦い方ではなく、サッカー選手が理想とするようなプレーをするスタイルで、よく世界大会にも出場しています。サッカーIQの高い選手と試合をしてみたいですね。

Takaki 『ウイイレ』にはプロリーグ『eFootball.Pro』(※3)があって、バルセロナやマンチェスター・ユナイテッドやユベントス、アーセナルといった各国のプロサッカークラブのeスポーツ選手が参加しています。ユベントスに所属しているエトリート選手や、昨年の世界大会で優勝したモナコのアスマカバイル選手とは対戦してみたいです。
※3 欧州の10クラブが参加するリーグ。並行して行なわれるオープン大会「eFootball.Open」とあわせた賞金総額は200万ドル(2億1600万円)以上。

 エトリート選手は僕が中学生の頃からYouTubeで見ていて、世界大会ですばらしい成績を残している選手です。アスマカバイル選手もここ最近でかなり実績を残している選手なので、ぜひ戦ってみたいですね。

――おふたりの将来のビジョンを教えて下さい。

y0ichiro  eスポーツ大会『INTEL World Open』(※4)というのがあって、種目のひとつに『ロケットリーグ』が採用されています。新型コロナの影響でおそらく来年2021年の開催となりそうですが、日本代表として出場することを目指して『ロケットリーグ』を練習しています。
※4 2020年7月に開催予定だった世界大会。『ロケットリーグ』と『ストリートファイターV』が採用され、賞金総額はそれぞれ25万ドル(2700万円)。延期後の日程はまだ発表されていない。

 その先の目標としては、『FIFA』でよりレベルアップして、世界のプレーヤーと戦っていきたいですね。また強欲ではありますが、ほかのゲームでも注力したいタイトルが出てくれば、日本一、世界一を目指したりと、マルチに活躍したいと考えています。

Takaki 世界大会での優勝が最終的な目標ですね。すぐにでも達成したい目標ですが、まずは世界大会の常連になることを直近の目標にしています。そしてもうひとつ、幼少期から『ウイイレ』をプレーしているので、ゲームのコミュニティ自体を盛り上げたいという気持ちもあります。その盛り上がりの中心にいたいですね。

――最後に読者へメッセージをお願いします。

y0ichiro 伝統ある東京ヴェルディに所属しているので、クラブ全体を盛り上げていきたいと考えています。今は「eスポーツなんて知らない」という方も、少しでも興味を持っていただけたらうれしいです。コロナ禍が終息に向かって大会やイベントが開かれるようになったら、観客がたくさん入って盛り上がっている様子を見ていただきたいですね。

Takaki 昨年の茨城国体では文化プログラムとして『ウイイレ』の大会があって、僕は配信を通して”eスポーツの熱量”を再認識しました。この盛り上がりを僕やヴェルディを通して知っていただければうれしいですね。

Profile
y0ichiro(よーいちろう)
1994年9月6日生まれ、東京都出身。「FIFA」のトッププレーヤー。マイキー選手と親交を深めたことがきっかけで、慶應義塾大学理工学部を卒業してすぐにプロeスポーツプレーヤーの道を選んだ。「FIWC Regional Final Season3」準優勝、「FIFA17WL」日本初40連勝(世界2位)、ロケットリーグPS4世界Top100

Takaki(たかき)
1997年7月21日生まれ、神奈川県出身。「ウイニングイレブン」で数々の実績を誇る国内トップクラスの実力選手。海外のプロリーグに単独で参戦した経験を持ち、技術向上の為の努力を惜しまない。高校サッカーで培った確かな戦術眼を武器に世界を目指す。「ウイイレ2019 PES LEAGUE JAPAN National Finals」(日本代表決定戦)Season1:4位、Season2:準優勝