Never give up! 日本フィギュアスケート2019-2020総集編(8) 全日本選手権で3位となった鍵山優真 カナダのモントリオールで開催予定だった世界フィギュアスケート選手権が、新型コロナウイルスの影響で中止になり、2019…

Never give up! 
日本フィギュアスケート2019-2020総集編(8)



全日本選手権で3位となった鍵山優真

 カナダのモントリオールで開催予定だった世界フィギュアスケート選手権が、新型コロナウイルスの影響で中止になり、2019-2020シーズンが終了。今季も氷上で熱戦を繰り広げた日本人スケーターたちの活躍を振り返る。

 フィギュアスケート日本男子の次代を担う2人のジュニア選手が急成長を遂げた。今シーズンはジュニアの世界でそれぞれ活躍を見せ、シニアへの足掛かりを作ったと言っていいだろう。来季、その手ごたえと自信を持ってシニア転向を決めた。世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得したユース五輪王者の鍵山優真と、4回転ルッツを成功させてジュニアグランプリ(GP)ファイナル王者となった佐藤駿。ともに16歳のライバルだ。

 2人はお互いに刺激し合い、切磋琢磨しながら、好勝負を繰り広げてきた。大きな舞台での対決は、まさに目を見張る熱戦となった。

 今季初めて戦った11月の全日本ジュニア選手権では、鍵山に軍配が上がった。ショートプログラム(SP)で首位に立った鍵山は、フリーで2本の4回転トーループをきっちり決め、課題のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も成功させて、ほぼノーミス演技を見せた。国際スケート連盟(ISU)非公認ながら、ジュニア世界最高得点(当時)を上回る合計251.01点を叩き出して初優勝を飾り、自身初めてのタイトルを手に入れた。

 これに対して佐藤はSPを3位で発進。フリーでは果敢に習得中の4回転ルッツに挑むが失敗し、ほかのジャンプの着氷も乱れて得点を伸ばせず、総合2位となった。自信をつけた鍵山に対し、佐藤はこの悔しさを糧にする覚悟を持ったようだ。

 続く12月のジュニアGPファイナルでは、佐藤が気を吐く演技を披露した。SPは3位発進ながら、フリーでは冒頭の4回転ルッツを試合で初めて成功させる。これで波に乗ると、4回転トーループとトリプルアクセルをそれぞれ2本ずつ決めて、ジュニア歴代1位となる177.86点をマーク。合計でもジュニア歴代最高得点となる255.11点で初優勝を成し遂げ、日本人4人目のジュニアGPファイナル王者となった。

 一方、全日本ジュニア王者として優勝を目指した鍵山は、気負いが空回りしたようだ。SPでは課題のトリプルアクセルが不調で6位と出遅れ、フリーでも得点源の4回転トーループの単独ジャンプで転倒するミスを出して、合計227.09点の総合4位にとどまった。

 ここまでの直接対決は1勝1敗の五分。よきライバルとして刺激し合う鍵山と佐藤は、今季3戦目の全日本選手権で対照的な結果を残した。



ジュニアグランプリファイナルで優勝した佐藤駿

 SPで初めて4回転トーループを成功させた鍵山だが、なかなか安定しないトリプルアクセルが不発に終わって7位発進。ところがフリーでは一変する。2本の4回転トーループを鮮やかに跳び、苦手意識のあるトリプルアクセルを2本とも2点以上のGOE加点がつく出来ばえで成功させる。ほぼ完璧な演技を披露して2位となり、合計257.99点で総合3位に入った。

 一方、ジュニアGPファイナル王者の佐藤は、SPで初めての80点台となる82.68点をマークして3位につけて表彰台を狙う。ところが、フリーでは冒頭の4回転ルッツを失敗して6位に沈み、合計246.50点の総合5位に終わった。

 その後、今年に入ってからの鍵山は1月のユース五輪を初制覇。2月の四大陸選手権はシニアの国際大会への初出場となったが、SP、フリーともに自己ベストを叩き出す。合計でも自己最高得点を更新して270.61点で総合3位となり、堂々と表彰台に立つ活躍を見せた。これに対して佐藤もまた、2月のババリアンオープンで初優勝を飾っている。

 試合を重ねるごとに自信をつけて成長を遂げてきた鍵山と佐藤の両者は、満を持して3月4日開幕の世界ジュニア選手権に初参戦した。

「世界ジュニア(選手権)は世界一を決める舞台なので、メダルを獲りたい」(鍵山)と、2人は日本人6人目となる世界ジュニア王者の座を狙いにいったが、惜しい結果に終わった。

 特にシーズン後半戦に入っても勢いが続いていた鍵山はSPを首位発進と期待が高まったが、フリーでは4回転トーループとトリプルアクセルで痛恨の連続ミス。得点が伸び悩んでSP2位のアンドレイ・モザレフ(ロシア)に逆転を許した。結局、フリーは5位にとどまり、合計231.75点の総合2位。

 それでも、日本勢として5年ぶりのメダル獲得は価値ある結果だ。チャンスがありながらタイトルを取れなかった悔しさと、銀メダルを手に入れたうれしさを味わった鍵山は、新たな決意を胸にしていた。

「この大会をメイン(ターゲット)にすごく頑張ってきたので、メダルを取れてよかったと思いますし、今まで頑張ってこられて、よかったと思っています。いい経験をたくさんしたので、次にこの経験を生かせるようにシニアの舞台で頑張っていきたいと思っています」

 一方、フリーと合計でジュニア世界最高得点の記録保持者の佐藤は、SPで5位と出遅れた。そして、ただひとりルッツとトーループの4回転を計3本挑んだフリーでは、その大技ジャンプでミスを連発して総合6位に沈み、悔し涙を流した。フリーの演技後は、「最初にミスがあったんですけど、プログラム後半はしっかりとできたので、そこは成長できたかなと思っています」と振り返った。

 今季を戦い抜いて確かな成長につなげた鍵山と佐藤は、2022年北京冬季五輪を視野に入れ、来季はシニアに転向することが決まっている。

 豊かな表現力とジャンプやスピンなどのエレメンツの美しさを持つ鍵山と、ルッツを含めた4種類の4回転ジャンプを習得してトリプルアクセルを武器にする佐藤。いまのところ、両者に実力差はほとんどないと言っていいだろう。今オフは、4回転の種類を増やすとともに、完成度を高めて武器にできるまでにしなければならないし、シニア勢に肉薄できるような表現力も身につけなければならない。

「五輪で金メダルを取ることが目標」と口を揃えるふたりのライバル物語は、次なるステージに入る。来季は、ぜひとも羽生結弦や宇野昌磨を慌てさせるシニアデビューを飾ってもらいたいものだ。

【2019-2020シーズン主な成績】
鍵山優真
■全日本ジュニア選手権(251.01/1位)
■ジュニアグランプリファイナル(227.09/4位)
■全日本選手権(257.99/3位)
■四大陸選手権(270.61/3位)
■世界ジュニア選手権(231.75/2位)

佐藤駿
■全日本ジュニア選手権(213.20/2位)
■ジュニアグランプリファイナル(255.11/1位)
■全日本選手権(246.50/5位)
■ババリアンオープン(242.31/1位)
■世界ジュニア選手権(221.62/6位)