第13回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権(2月25日~3月1日)が、北海道札幌市のどうぎんカーリングスタジアムで行なわれた。

 新型コロナウイルスの影響により、無観客での開催が決定。会場内は、例年とは違う雰囲気に包まれていたが、大会3連覇を狙う『藤澤 山口』の藤澤五月(ロコ・ソラーレ)が開幕前に、「私たちが元気にプレーすることが大事だと思います」と抱負を語ると、そのとおり、参加チームが日々高いパフォーマンスを見せて、ハイレベルな熱戦がファイナルまで繰り広げられた。

 その決勝で対戦したのは、優勝候補筆頭の藤澤と山口剛史(SC軽井沢クラブ)がペアを組む『藤澤 山口』と、今季からペアを組んだ松村千秋(中部電力)と谷田康真(コンサドーレ札幌)の『松村・谷田』だった。

 ともに全勝で決勝まで駒を進めてきたが、その過程がとりわけ際立っていたのが、『松村・谷田』だ。

 予選ブロックで、吉田夕梨花(ロコ・ソラーレ)&松村雄太(コンサドーレ札幌)ペアの『吉田・松村』を下すと、決勝トーナメントに進んでからも、準々決勝で前回大会準優勝の鈴木夕湖(ロコ・ソラーレ)&平田洸介(KiT CURLING CLUB)ペアの『鈴木・平田』を撃破。続く準決勝でも、吉田知那美(ロコ・ソラーレ)と清水徹郎(コンサドーレ札幌)の『吉田 清水』を退けて、4人制でも実績豊富な、強化委員会推薦のトップペアを次々に倒してきたのだ。

 4強進出を決めた際、『松村・谷田』の谷田は、「優勝が見えてきたか?」と記者から質問されると、「自分たちのショットの精度を突き詰めていくだけ。優勝というよりも、その結果、あとふたつ勝てればいいと思っています」とコメント。それを有言実行する形でショットの精度を突き詰めていった結果、準決勝を接戦で制すと、決勝でも勝負どころでのショットが光った。

『松村・谷田』は、第1エンドで2点を失ったが、第2エンドには谷田のランバックダブル(※ガードストーンに当てて、ハウス内にある相手の石を弾き出すことをランバックと言い、そのショットでハウス内にある相手の石を2つ出すこと)でチャンスを作り、それに呼応するようにして、松村がハウス中央にドローを決めて、2点を奪い返した。

 その後、『松村・谷田』は第5エンドにも2点加点して、5-3とリードを奪ったが、直後の第6エンドで苦戦を強いられる。先攻ながら、相手の攻撃を食い止めるような強い石を作れず、試合後に谷田が「下手すれば、3点、4点取られて(試合が)終わっていたかもしれない」と振り返るほどの窮地を迎えていた。

 しかし、「ここしかないところに(石を)置いてくれた」と、谷田が絶賛する松村のラストショットで窮地から脱す。「ミスはどうしても出る。その後のショットでどう挽回するかが大切」と、大会後の谷田のコメントを象徴するようなプレーだった。

 そうして、『藤澤 山口』に1点だけ取らせることに成功。残りエンドも大きなミスをすることなく、うまく消化していった。

 ただし、『松村・谷田』は決して消極的な戦術を取っていたわけではない。最後まで攻めの気持ちを忘れずに、『藤澤 山口』にプレッシャーをかけ続け、7-4で勝利。見事に初優勝を飾った。



ミックスダブルスカーリング選手権で優勝した松村千秋&谷田康真ペア

「松村選手、谷田選手のショットがすごくうまかったので、感心するばかりで……。完敗に近い試合だった」

 試合後、3連覇を阻まれた藤澤は、そう言って白旗を掲げた。加えて、「際どいラインでガードをかわし、毎回いいところに(石を)置いていた」とも語った。

『松村・谷田』のショットの精度は、それほど秀逸だった。

 また、『松村・谷田』は大会序盤、ほとんどすべてのショットを投球者自らがスイープしていたが、試合重ねていくうちに、デリケートなコントロールが要求されるドローショットを選択した際には、谷田がスイーパーとして、松村の脇に控えた。

「自分で投げて履くっていうことに、まだ慣れていないのか、自分の石をしっかり見られていないのかわからないけれど、(パートナーに)スイーパーについてもらうほうが投げやすい。それで、(ドローも)決めることができました。ありがとうございます」

 そう言って、松村は谷田に感謝したが、大事な局面においては、チームとしての共通事項も崩して、好ショットにつなげた。そうした柔軟な対応も、このペアの大きな武器となっていた。

 このあと、『松村・谷田』のふたりは、日本代表としてカナダ・ケロウナで開催される世界選手権(4月18日~25日)に出場する。

 日本のチームは出場していないが、ミックスダブルスは2018年平昌五輪から新種目として採用されている。その出場権は、4人制と同様、直近2大会の世界選手権の結果(※2大会で積み重ねた五輪ポイント)によって得られる。

 つまり、日本代表ペアが2022年北京五輪に出場するためには、今度の世界選手権の結果も関わってくる。『松村・谷田』に求められるのは、ひとつでもいい成績を残してくることだ。

「日本代表として戦うことになった以上、求められるのは結果。そこに向かって、自分たちで言い訳することなく、しっかりと準備をしていきたい。世界選手権では、一番いい色のメダルを目指しますけど、まずはプレーオフ(決勝トーナメント)に出ることを目標として、今大会と同様、一試合一試合、全力で戦います」(谷田)

「日本代表となって、責任感も、プレッシャーもありますけど、それをしっかりと背負って、世界選手権ではチームのパフォーマンスを上げて、いいゲームをしたい」(松村)

 谷田はコンサドーレ札幌、松村は中部電力と、4人制での北京五輪出場も目指している。当然、優先されるのはチームだが、それを前提としつつも、ともに多種目での五輪挑戦にも意欲を見せた。

「まず、自分のチームを第一に考えています。ただ、ミックスダブルスも同じオリンピック(種目)。それに、少しだけ手がかかった、というのは事実で、これからもそこ(五輪出場)を狙っていきたいと思います。そして、その姿勢を見せていければ、ミックスダブルスのレベルも上がってくるのでは」(谷田)

「北京五輪にはまず、4人制で出ることを目標にしています。その延長戦上に、『ミックスダブルスでも(五輪に)出られればいいな』という思いがある感じ」(松村)

 世界選手権の結果によって、日本が北京五輪の出場枠を獲得した場合、国内選考については、今回優勝した『松村・谷田』と、来年のミックスダブルス日本選手権で優勝したペアが、トライアルで代表の座を争うことになる(※日本選手権で優勝した2ペアより、世界ツアーランキング上位ペアがいれば、3チームでのトライアルとなる)。

 仮に、『松村・谷田』が日本選手権で連覇を遂げれば、代表ペアに無条件で内定となる。しかし、リベンジを期す『藤澤 山口』に、3位の『吉田 清水』、北海道ブロックから勝ち上がってきて4位入賞を果たした北見工業大学(飯島奈都美、鹿野大貴)ら今大会の上位チームをはじめ、強化委員会推薦ペア、さらには歴代最多優勝を誇る苫米地美智子・賢司夫妻の『チーム苫米地』などバラエティに富んだペアが、それを阻もうと、今後も強化を続けていくだろう。

 北京五輪まであと2年を切り、4人制同様、ミックスダブルスの争いも熾烈になってきた。はたして、初の五輪出場は実現するか。そして、どのペアがその切符を獲得するのか。ミックスダブルスの五輪代表レースからも、目が離せない。