FC東京・森重真人インタビュー 後編

 FC東京は今シーズン、4-3-3のシステムを採用し、リーグ開幕に向けて調整している。4-4-2のベースを持っているからこそ、大胆なチャンレジにも挑戦できるわけだが、それはこの2年間、FC東京が育んできたものが形になった証でもある。それを踏まえて今シーズン、4-3-3をどう完成させていくのか。森重真人は、そのシステムについて、どう考えているのだろうか。



2020シーズンは新システムで戦うFC東京

--昨年は優勝争いをして、チームは2位になりました。森重選手のパフォーマンスも、ベストイレブンに選出されるなど、個人としての活躍も目立ちました。好調だった要因はどういうところにあったのですか?

「手術(※2017年7月に左足首)をして数年経って、足首の痛みがなくなったことが大きいですね。あとは、いいメンタリティで、いい意味で全力というより80%ぐらいで力みすぎずにプレーできました。仲間を頼りつつ、仲間をうまく使えるようになったのも大きいかなと思います」

--80%ぐらいがいいというのは、面白いですね。

「自分が100%でやれたな、今日は結構動けたなと満足していても、実際はそれほどではなく、逆に今日はあんまり動けていなくて要所要所でやっていくと、周囲の反応がよかったんです。自分は楽をしている感覚の時もあるのですが(苦笑)。そこで自分の感覚と客観的な自分の評価に、ズレが生じていた部分があったことに気づけたのは、新しい発見でした。それでも、動けるうちはまだまだ動きたいですね」

--今年は4-3-3になり、センターバックの仕事は相当増えるのではないでしょうか?

「そうですね。今まではワイドにいた東(慶悟)選手とかが、すごく守備を頑張っていてくれたので守備が安定していたのですが、そこの守備の調整が大変かなと」

 4-3-3のシステムは、最終ライン、とりわけセンターバックの負担が増えると言われている。チームが攻撃に転じた場合、最終ラインの前にはアンカーこそいるが広大なスペースが広がる。2バックで守ることもあり、センターバックの仕事エリアは広くなる。

--守備の負担も増えそうですね。

「今までは攻守の割合が5:5だったのが、6:4あるいは7:3でいいとなるのか、正直やってみないとわからない。ただ、(新加入の)アダイウトン選手やレアンドロ選手が入ってくると、より攻撃的になるし、それぞれのよさが出るように自分が舵を取って、バランスを取りたいと思っています」

--横浜FMも苦労していましたが、攻守のバランスを取るには少し時間がかかりそうですね。

「そうですね。ただ、攻撃的に行くほうがバランスを取りやすいというか、修正がしやすいかなと思います。攻撃的なサッカーをして、何回かカウンターでやられないと、どこにどんなバランスの歪みが出ているのかわからないものです。試合をやればわかってくると思うので、その歪みがわかれば後ろからコントロールすることができるかなと思います」

--4-3-3の印象は、どうですか?

「現代サッカーという感じがします。チームが攻撃的にやることは個人的に歓迎だし、僕は攻撃することが好きなので、この戦い方を確立したいと思います。まあその分、守備の負担は増えるけれど、城福浩(現サンフレッチェ広島監督)さんやランコ・ポポヴィッチ(現町田ゼルビア監督)さんの時に経験してきてわかっているし、中盤には髙萩(洋次郎)選手とか東選手ら、賢い選手がいるので、むしろ楽しみです」

--アンカーにはその髙萩選手が入っていましたが、3枚の中盤のユニットは橋本拳人選手や、東選手もいます。個人的には髙萩選手のインサイドハーフ、トップ下も面白いかなと思っています。

「髙萩選手は広島でトップ下をしていたし、アンカーも含めて、あのポジションはすごく得意なので、今は髙萩選手の意見を聞きながらやっているところもあります。攻撃はうまく話をしながらやってくれると思うし、あとはアダイウトン選手とか外国籍選手は自由にプレーすることで、東選手はそれに合わせて動ける。どんな組み合わせになるにせよ、中盤は心配していないです」

 FC東京には4-4-2という戻る場所はあるが、今シーズンは4-3-3と心中するぐらいの覚悟で臨まないと成熟はしないだろう。多少チーム状況がガタついても、4-3-3を最後まで貫いていけるか。それが今シーズン、FC東京が優勝できるかどうかのキーになりそうだ。

--今シーズンは、仮に苦しんでも最後まで4-3-3を貫くべきと思いますか?

「4-4-2はできるので、そこからワンランク上にいくために4-3-3に取り組んでいる。僕はチャレンジするべきだと思うし、監督もやると言った以上、僕らも相当の覚悟でやらないといけないと思います」

--今シーズン、他チームで気になるところはありますか?

「鹿島(アントラーズ)、(横浜F・)マリノスはかなり補強しているし、そういうところは気になりますね。(ヴィッセル)神戸も天皇杯で勝って自信を深め、かなり強いのではないかと思います」

--いよいよ始まる2020年シーズン、これまで6位と、2位と来ています。今シーズンの森重選手の決意を。

「6位、2位と来ているので、今シーズンは1位しかない。本当にそこを目指していくだけです。ここ2年、夏場がひとつのポイントになっていたけれど、今年は序盤戦がチームにとって大きな山になると思います。そこでどうなるか。システムをどのくらい完成することができるのか。

 仮にうまくいかなくても、僕らには4-4-2というベースがある。それがあるから思い切ってチャレンジできると思います。今年は新しいことにチャレンジしていく。新しいスタイルを完成させて、優勝したいと思います」

 新しいシステムに挑戦して、リーグ優勝をつかみ取りにいく。

 FC東京の長谷川健太監督が下した決断と覚悟が選手に伝わり、それは困難を乗り越えていく大きなモチベーションになるだろう。果たして、念願のリーグ制覇達成となるか。

 FC東京の挑戦が始まる--。
(おわり)
森重真人
もりしげ・まさと/1987年5月21日生まれ。広島県出身。広島皆実高校から大分トリニータを経て、2010年よりFC東京でプレーするセンターバック。1対1に強く、ビルドアップ能力にも優れ、セットプレーでは得点力も発揮する、チームの中心選手。Jリーグベストイレブン5度受賞。日本代表Aマッチ41試合出場2得点。身長183cm/体重79kg。