ブンデスリーガ前半戦を首位で折り返すなど好調で、2月9日にバイエルンとの首位攻防戦を迎えるライプツィヒ。国際的な巨大企業『レッドブル』のプロジェクトとして、ここ数シーズン上位に進出し続けてきた新興クラブを率いるのは、リーグ最年少にして、ドイツ最高の監督と評価されるユリアン・ナーゲルスマンだ。



ブンデスリーガ制覇を狙う、ライプツィヒのナーゲルスマン監督

 32歳にして欧州で確固たる地位を築いたこの若手監督は、ここまでどのような道のりを辿ったのだろうか。ドイツ国内では、もはやリーグを代表する顔のひとりと数えられる指揮官の、ポートレートを描いていこう。

 ナーゲルスマンがブンデスリーガの舞台を初めて経験したのは、2012年12月まで遡る。ホッフェンハイムでマルクス・バッベル監督が更迭された後、そのシーズンの終了まで3人の監督のアシスタントを務めたのだ。

「初めてのブンデスリーガの試合では、ピッチに出る出口がどこかもわからなくて右往左往してしまった。ようやくピッチに出られて、ウォーミングアップの準備をしていたら、それは相手のハンブルクのピッチサイドだったんだ。慌てて自分たちのサイドに戻ろうとしたら、スタジアムアナウンサーがカメラの前で話しているところを横切ってしまって、注意を受けた。それを聞いたハンブルクのファンからはブーイングの嵐さ(笑)」

 初めての舞台での失敗を、ドイツメディア『SPOX』に語っているナーゲルスマン。ユーモア溢れる当意即妙な受け答えで好感を集めるが、20歳のときには、人生を左右する苦難を乗り越えている。数年に渡って痛めていたヒザの半月板のケガで手術を繰り返し、満足にプレーできない状態が続いたことで、アウクスブルクのセカンドチームで引退を決断したのだ。さらに、その約5カ月後には父親が亡くなるという不幸に見舞われた。

 経済的な支援を必要としたときに手を差し伸べたのは、当時アウクスブルクのセカンドチームで監督を務めていたトーマス・トゥヘル(現パリ・サンジェルマン監督)だった。シーズンが終わるまで、アシスタントコーチとして対戦戦相手のスカウティングなどの仕事を任され、シーズン終了まで契約することができたのだ。トゥヘルもまた、現役時代にナーゲルスマンと同じようにケガでキャリアを終えている身だった。

 ナーゲルスマンにとっても、このトゥヘルとの仕事は、指導者としての道を開くきっかけとなった。翌シーズンに古巣の1860ミュンヘンのU-17へコーチとして戻ると、それまで学んでいた経済学を止め、通信大学でスポーツおよびトレーニング科学と教授法を勉強し、卒業した。

 2010年には、ホッフェンハイムU-17のコーチに就任。当時、トップチームの監督としてプロジェクトを進めていたのは、現在はレッドブル(RB)グループのサッカー部門の責任者を務めるラルフ・ラングニックだ。彼はホッフェンハイムの監督を務めたあと、RBグループのライプツィヒやザルツブルグ(オーストリア)でスポーツディレクターや監督を務め、独自の戦術を駆使して躍進。また新進気鋭の監督も輩出している。

 ナーゲルスマンにとって、ラングニックがホッフェンハイムに残した遺産は大きなものだった。トップチームのアシスタントを務めながら、ユースチームでドイツ王者になるなどの結果を出す。そして16年2月にブンデスリーガ史上最年少28歳でのトップチーム監督就任。ラングニックの影響を受けつつ独自の色も出しながら、約3シーズン半、チームを率いた。そして今シーズンからライプツィヒの監督を務めている。

 戦術面に目を向けよう。現リバプール監督のユルゲン・クロップがドルトムント時代に成功を収めたおかげで、”ゲーゲンプレッシング”(カウンタープレス)がドイツサッカーの代名詞となりつつある。RBグループは、さらに組織的にこの戦術を体系化させたと見られている。

 だが、ナーゲルスマンは、自身が影響を受けた監督にペップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)を挙げる。そして、グアルディオラのサッカーのなかに、RBグループとの多くの共通項を見出しているのだ。

「ペップ・グアルディオラは、バルセロナで指揮していた当時から、RBのDNAにも組み込まれている要素を多く含んだサッカーをしていた。自分たちがボールを保持しながら、ゲーゲンプレッシングが機能するようにうまく準備をしていたんだ。ボールポゼッション自体は目的ではなく、ゴール前でチャンスをつくるための準備として行なわれていた」(ドイツメディア『SPORTBUZZER』)

 さらに、自身がウイングを使わない理由も詳しく解説している。

「理由の1つ目は、『ゴールは中央にある』。2つ目は、両サイドに人数を割けば割くほど、中央に置ける選手の数は少なくなる。だが、中央にうまく人数を多く配置できれば、カウンターを受けても、相手を自ゴールから遠ざけて守ることができる。対戦相手がカウンターからサイドを経由しなければならないとすれば、自分たちは撤退までの時間を稼ぐことができる。同時に、中央に人がいれば、ボールの後ろにゲーゲンプレッシングのための人数をより多く割くこともできる。

 さらに、自分たちの対戦相手は、深く引いて守備を固めてくる。自分たちの選手を中央に置くことで、対戦相手は中に選手を集め、ゴール前に密集する必要がある。そうすると、必然的に大外の両サイドが使えるようになる。このスペースから最後のフィニッシュワークを仕上げられるようになる」(ライプツィヒのファンコミュニティサイト『RB-Fans.de』)

 王者バイエルンには、ドイツ代表の14年ブラジルW杯優勝にも貢献したハンジ・フリック監督がいる。彼はマンチェスター・シティで研修を積むなど、グアルディオラのサッカーのエッセンスを追い求めるひとりだ。

 2月9日に行なわれるバイエルンとライプツィヒの頂上対決は、今後数年のブンデスリーガおよびドイツサッカーの行方を占う一戦になる可能性を秘めている。ライプツィヒホームでの第1戦は、守備的な布陣でスタートし、1-1という結果をもぎ取った。首位奪還のために勝つしかないライプツィヒ。そしてナーゲルスマンはどう出るかに注目だ。