東京五輪を目指す若きフットボーラーたち(9)
名古屋グランパス・相馬勇紀@前編

 東京オリンピック本番を半年後に控え、まさかのグループステージ敗退に終わったU-23アジア選手権。不甲斐ない戦いに終始したなかで、数少ない光明が相馬勇紀のパフォーマンスだろう。

 サイドで1対1の勝負になれば、ほとんどの場面で相手を振り切り、クロスを上げた。固まりつつあった序列を一気に覆し、本大会のメンバー入りへアピールに成功した名古屋グランパスのスピードスターに迫る。

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FW相馬勇紀(そうま・ゆうき)1997年2月25日、東京都生まれ。早稲田大学出身

-- 昨夏、相当な覚悟を持って鹿島アントラーズに期限付き移籍して、今回戻ってくるにあたっても、同じように相当な覚悟があるのではないかと思います。

相馬勇紀(以下:相馬) 夏に東京五輪があるので、「意識してない」と言ったら、変になりますよね。でも、五輪のために毎日過ごすわけではなくて。意識はするけれど、成長して戻ってきたところを見せたい。ここ(名古屋グランパス)でしっかり活躍して勝利に貢献したい。その結果として、五輪がついて来ると思っています。

-- 鹿島ではケガをしてしまい、思うようにプレーできませんでした。鹿島に行ったのも、五輪を意識して出場機会を得たかったからだと思うので、かなりつらい時間だったのではないかと想像します。あの時期、自分自身とどう向き合っていたのですか?

相馬 でも、ポジティブに捉えていますよ。もちろん、プレーしたかったというのが本音ですけど、プレーできなかった期間にあらためて、どうすれば活躍できるのか考え直すことができた。何十年も上位に居続けて、タイトルを獲り続けているクラブの雰囲気や姿勢は、鹿島に行かないと感じられないものでしたね。

 それに、風間(八宏/前名古屋監督)さんから技術面をかなり鍛えてもらったぶん、鹿島の練習に入っても相手のプレッシャーをあまり感じなかったんですよ。それも、外に出て初めて気づけたことでしたし。これまでは得意だったけど忘れかけていたものにも気づけた。だから、よかったと思うことはたくさんありますね。

-- 忘れかけていたものとは?

相馬 自分の武器である、ランニングしてスペースを取ることだったり、そういうのを思い出せたのはよかったと思います。それに、動き出しの種類をもっと増やさないといけないとか、キックの精度も見直さないといけないとか、気づけたこと、感じたことはたくさんありますね。

-- 常勝軍団の雰囲気は、どんなものでしたか?

相馬 言葉では表現しづらいんですけど、やっぱり練習はピリピリしているし、オンとオフもしっかりしていて。勝ちにこだわる姿勢というか、執念というものを選手だけでなく、スタッフやサポーターからも感じられました。

 クラブに関わる人、全員が勝利だけを見ている。そんな雰囲気を肌で感じましたね。だから、ここ(グランパス)でも戦う姿勢というものを示せていけたらいいなと思っています。

-- 昨シーズン前半の、名古屋での半年間についても聞かせてください。その1年前、大学4年生の時は特別指定選手としてインパクトを残しましたが、昨シーズンは持ち味であるスピードや突破を見せられず、苦しんでいるように感じました。何が問題だったのでしょう?

相馬 もちろん、技術面にも問題はあったと思いますけど、一番感じたのは、コンディションの問題ですね。大学4年までは週に1回、コンスタントに90分の試合をして、練習でもたくさん走っていたから、身体にキレがあった。特別指定での活躍も、それがベースにあったからだと思うんです。

 でも、去年は試合にコンスタントに出られなかったので、身体をいい状態に保てなかった。それも結局、自分で掴まなければならないんですけど、僕はスピードや駆け引きで勝負するタイプなので、コンディションの大切さをあらためて感じましたね。

-- 今シーズンからはマッシモ・フィッカデンティ監督のもとでプレーします。サガン鳥栖時代や昨シーズンの名古屋のサッカーを見て、どんな印象を持っていますか?

相馬 まず、守備からしっかり入る。前の選手にはハードワークが求められるし、速い攻撃を繰り出すためのクオリティも求められる。だけど、しっかり守るぶん、相手陣内には大きなスペースがあると思うので、やりやすいかなと思っています。

-- スピードやドリブルを武器とする相馬選手のプレータイルとの親和性は、かなり高いと見ています。相馬選手、マテウス選手、前田直輝選手の左右の槍がどんどん仕掛けていく姿が目に浮かぶというか。

相馬 僕もそう感じていますね。マッチすると思います。あとは、結果にこだわってプレーしたいですね。E-1選手権やU-23アジア選手権で代表としてプレーさせてもらって、結果の大切さを痛感しました。

 もともと、そういうものを考えながらプレーしてきたけれど、結果が出なかったことで、さらに気づかされた。自分の評価を高めるうえでも一番大切なのは数字であり、結果。そこはさらにこだわりたいですね。

-- 代表の話が出ましたが、E-1選手権でもU-23アジア選手権でも、相馬選手は相手と1対1になったら必ずと言っていいほどクロスを上げていて、頼もしさを感じました。一方で、それがチームの結果には結びつきませんでした。

相馬 自分がボールを持って仕掛ければ、相手を剥がすことがほぼ確実にできる。それは自信になりましたけど、得点につながらないと、なんの意味もない。

 E-1で韓国と対戦した時もクロスは上げられたんですけど、得点に結びつけられなかった。誰が、どのタイミングで、どこに入るか……。チーム内で合わせる必要もありますけど、単純に僕のキックの質も高めなければいけないなと。

-- ただ、E-1選手権やU-23アジア選手権では右サイド、左サイド関係なく、突破を仕掛けてクロスを上げた。両サイドでできる、という点では自信を深めたのでは?

相馬 そこはあらためて自分の武器だと思いました。基本は左サイドのほうが得意なんですけど、鹿島で点を獲った時のように、右サイドでもカットインから左足でシュートだったり、縦に行って右足のクロスだったり。左右どちらも遜色なくやれる自信が、今はありますね。

 それにE-1でも、U-23アジア選手権でも、試合にけっこう出られたので。試合に出た時の成長率ってかなり高いから、なおさら攻撃の面では自信がつきました。

-- U-23アジア選手権では主力として出場しましたが、1分2敗でグループステージ敗退を喫しました。チームとしての課題をどう捉えていますか?

相馬 どうなんですかね……局面で相手にやられてしまう場面があったので、ひとりひとりがもっと能力を高めないといけないと思います。対戦相手は個人のクオリティも高かったし、懸けているものも違った。あらためて、もっと戦わなければいけないなって。

 これまでは南米やヨーロッパと対戦することが多くて、相手がボールを持って主導権を握る展開。どちらかと言えば、こっちがカウンターを仕掛ける展開で、うまくいったことが多かった。

-- トゥーロン国際大会やブラジル遠征ですね。

相馬 それがアジアでは、相手がブロックを敷いて守ってくる。そこで「どうやって点を獲るの?」という部分がちょっと明確じゃなかった。

 クロスを入れても、中の枚数が少なかったり、中央からの崩しも、シャドーや1トップのコンビネーションやスペースを作る動きがうまくできなかった。戦うというベースの部分と攻撃のバリエーションは、もっと高めていかないといけないと思います。

(後編に続く)

【profile】
相馬勇紀(そうま・ゆうき)
1997年2月25日生まれ、東京都調布市出身。三菱養和SCユースから早稲田大学に進学。在学中に名古屋グランパスの特別指定選手に登録され、2018年8月にJリーグデビューする。2019年6月に行なわれたトゥーロン国際ではU-22日本代表の準優勝に貢献し、大会ベストイレブンを受賞。同年12年には日本代表にも選ばれ、中国戦で初出場を果たす。ポジション=FW。165cm68kg。