現在、ベルギー1部リーグのクラブに所属する日本人選手は9人いる。そのなかでもとくに好調なのは、シャルルロワのMF森岡亮太とゲンクのFW伊東純也だろう。

 昨年秋にトップ下からボランチにコンバートされた森岡は、「すっかりリーグのトッププレーヤーの姿に戻った」(フットボール/スポルトマガジン)と、ベルギー国内で再評価を受けている。



トップ下からボランチにコンバートした森岡亮太

 1月25日のメヘレン戦は濃い霧のために前半途中で中止となり、2月11日に再試合を行なうことになった。そのため、残念ながら森岡が決めたPKのゴールは取り消されてしまったが、このPKも森岡自身がスルスルと相手ペナルティエリア内までドリブルでボールを運んで得たものだった。

 俊足ウインガー伊東純也は、カウンターで相手スペースを突くのはもちろんのこと、ポゼッション時の狭いスペースでも打開する力が武器となっている。フェリチェ・マッズ前監督時代からは全幅の信頼を得られなかったが、後任のドイツ人指揮官ハネス・ヴォルフ監督になってからは、優勝に貢献した昨季のフォームを取り戻した。

 この両者が2月1日、ゲンクのルミナス・アレーナで激突した。

 6位ゲンクは前節のゲント戦で1-4と完敗したため、そのリベンジに燃えていただろう。キックオフからゲンクは猛攻を仕掛け、4分には伊東のヒールキックから右SBのヨアキム・マーレが抜け出し、最後はMFパトリック・フロショフスキーがゴールを決めたかに見えた。しかし、惜しくもオフサイド。さらに15分にはPKも得たが、これは左SBのイェレ・ウロネンが失敗した。

 一方、首位クラブ・ブルージュとの激闘(0-0)から中2日と、シャルルロワはリカバリーに不安があった。だが、ボランチの森岡のところでボールを溜めたり散らしたりしながら、徐々にゲンクの勢いを弱めて中和していった。

 しかし、ゲンクがついに膠着状態を打開する。40分にマーレとのコンビで伊東が右サイドをドリブル突破し、最後はフロショフスキーがゴールを決めた。これで、伊東は今季7アシスト目。

 年明け初戦のズルテ・ワレヘム戦で1ゴール。前節のゲント戦はアシストこそつかなかったものの、突破力を生かしてFWデオ・ボンゴンダのゴールをお膳立てした。今年に入ってから、伊東は毎試合ゴールに絡んでいる。

 後半に入ると、両チームともにチャンスを作るようになった。相手のテクニックやスピードの乗った攻撃に対して身体を張って守り合い、攻守交代が目まぐるしいバトルになる。結局、試合はゲンクが1-0で勝って6位の座をキープし、5位シャルルロワとの勝ち点差を4まで詰めた。

 タイムアップの笛が鳴ると、負けたシャルルロワの選手たちはがっくりとひざを落とした。一方、勝ったゲンクのアタッカー陣も、伊東を含めて「もう一歩も動けない」といった表情で立ち尽くしていた。それほど、攻守に負荷の高いゲームだった。

 そんな伊東に森岡が近寄り、ひと言ふた言、声をかけていた。ゲンクの右サイド「伊東&マーレ」コンビは絶好調なだけに、ボランチの森岡は伊東に対して激しくタックルするシーンもあった。

 その一方で、伊東も森岡の球出しを警戒してチェックに回っていた。見ごたえあるデュエルが随所にあった一戦だった。

 森岡はマーレを止めに行った際、その裏を伊東に抜かれて失点を許した。そのシーンを振り返り、「ちょっと(マーレとのデュエルで)ゴチャッとなって、うまいこと純也にいい形を作らせちゃったなと思います」と語った。

「あそこは僕が(右に出て)行って、(マークが)ずれていくしかない状況だった。相手のボールを奪ったところをしっかりカットし切るシチュエーションだったと思います」

 シャルルロワのサッカーは、攻守ともに強度の高いプレーで一気呵成のカウンターから相手を仕留めるというものだ。森岡のプレーには、相手ボールをカットし切ってからカウンターの起点になろうとする意図が表われていた。

 森岡がアンデルレヒトからシャルルロワに移ったのは、昨年1月末のこと。あれから、ちょうど1年が過ぎた。

「ポジションを変わって、また新しい自分を発見できたりしました。充実しています。自分のやりたいことと、ポジションの兼ね合いがマッチしている」

 それは、何を指すのだろうか?

「できるだけボールを触って、ゲームをコントロールしていきたい。前はナンバー10(トップ下)のポジションでしたけれど、ナンバー9(ストライカー)っぽくプレーすることを求められていたので、そのようにプレーしていましたから。

 今はむしろ、自分のやりたいことに近いポジションをやっている。もちろん、ディフェンスの部分では運動量や仕事量も増えましたけど、ボランチでプレーする楽しさを今は感じていますね」

 ベルギー人にとって、森岡のイメージはワ-スラント・ベフェレン時代に「絶滅危惧種の10番タイプ」と称された、アーティストのようなプレーだ。それだけに、今の泥臭く守備をして、攻守をつなぐリンクマンとしての「いぶし銀」の姿に、メディアも驚きを隠せない。

 カウンターサッカーのシャルルロワで「ナンバー9.5」のようなプレーを要求され、前線でボールが来るのを待っていても、なかなかボールタッチは増えなかった。

 だが、ボランチに下がったことによって、森岡はボールタッチが増えただけでなく、ポゼッション時のスペースも与えられた。また、後ろから味方を操ったり、バイタルエリアに生まれたスペースに潜り込んだりする特徴も生きるようになった。

「また新しい自分を発見できました」という森岡の言葉が、2時間半の帰りのドライブで、何度も私の頭のなかでリフレインした。