小園海斗(広島)、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)のルーキーイヤーは、まさにプロの洗礼を浴びた1年となった。それ…

 小園海斗(広島)、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)のルーキーイヤーは、まさにプロの洗礼を浴びた1年となった。それでも随所に素材のよさを見せつけ、2年目のレギュラー獲りへの期待がかかる。いずれにしても、一軍で生き残るにはバッティングで結果を出すしかない。彼らのバッティングは、NPB歴代3位の567本塁打を放った門田博光氏の目にどう映ったのか。はたして、2年目の飛躍に必要なものとは何なのだろうか。



昨シーズン、一軍で4本塁打をマークした小園海斗

小園海斗(広島)

 足があって、ショートを守れて、しかも一軍でホームラン4本。たいしたもんや。足が速いと、当て逃げみたいなバッティングをする選手がいるけど、小園のスイングは体から腕が離れず回転していて、しっかりしている。この巻きつくような形のスイングが常時できてくると、疲れが出てくる夏場でも打てるはず。

 体からバットが離れてスイングするタイプは、体力がある時はいいけど、体が疲れてくるとスイングが鈍くなって、確率も悪くなる。僕が現役時代の時に疲れて調子が落ちてきたなと思ったら、鏡の前で素振りをして、体からバットが離れていないかよくチェックしていました。

 小園はライナーでいい打球を飛ばしますし、右中間をきれいに抜けたと思った打球がそのままスタンドに入ったり、打球が失速しない。さすが高卒1年目からカープの一軍で試合に出るだけのことはあります。

 ひとつ気になったのが足元。構えた時に、ややオープンスタンスに見えました。我々の現役の頃はスクエアスタンスかクローズドスタンスが主流で、オープンスタンスで構える打者はほとんどいなかった。僕からすれば、なんで足を開いているところから閉じて打ちにいくのかと。0コンマ何秒の戦いをしているのに、なぜ無駄な動きをするのか……。

 おそらく、オープンスタンスで構える理由は、変化球全盛時代にボールがよく見えるということやろうけど、見えすぎることで狙ってもいないボールに手が出てしまう弊害もあると思う。ボールを両目で見るということなら、首の柔軟性を高めることでクリアできるはず。

 ただ小園の場合、両ひざの位置は同じラインにある。つまり、右足のつま先を少し開いているだけで、ひざまでは開いていない。これは許容範囲でオープンスタンスではありません。

 この構えからゆっくり足を上げて、そして下ろすまでちゃんと間(ま)がある。この足の上げ方、下ろし方で打てるかどうかの感じがある程度わかります。

 かつてオリックスで一緒になった松永(浩美)から「門田さんはゆっくり足を上げた時が怖い。そこをいつも見ていました」と言われたことがありましたが、実際、間の取り方はすごく大事にしていました。

 小園の場合も、いろんな投手、球種に合わせられる間を持っている。1年目から限られた試合数のなかでホームランを4本打ったということですから、いろんなタイプの打者になれる可能性がある。あとは本人がどこを目指すのか。

 スピードがあって、長打力もあり、ヒットも打てる……今の時代、活躍次第ではどんどん給料も上がるので、そのうち広島城でも買えますよ(笑)。



今シーズンから外野手に挑戦する根尾昂

根尾昂(中日)

 台湾(アジアウインターリーグ)での打席を見ましたが、しっかり振れていました。打席ごとの内容にばらつきがあるのはルーキーなら当然なんですけど、それでも雰囲気は感じました。

 今は技術も不安定で、気持ちもグラグラしている時期。どういう指導者と出会うかも重要になる。昨年は中日の二軍監督だった小笠原道大という指導者がいた。小笠原はフルスイングを貫いたバッターだったし、野球に取り組む姿勢もすばらしかった。

だから、根尾にとってこれはいい出会いになると思ったけど、今年から小笠原は日本ハムのヘッドコーチになった。教えてもらっている人が1年で変わるというのはもったいないことだし、選手にとっても不安だろう。

それほど多く根尾の打席は見ていないですが、小笠原と通じるところがある。小笠原も体は大きくなかったけど、とにかく強く振ることにこだわった選手で、手先で打つようなタイプではなかった。

根尾も強く振れるのが長所で、確率を上げていくのはこれからの作業になるけど、しっかり腰が回転できているというのは魅力。手元までしっかり呼び込んで、そこからブンと腰の回転で打てる。生まれ持った体の強さ、筋肉の柔らかさを感じる。

 それに目もいいんじゃないかな。動体視力ですね。これがいいと判断力が上がって、ボールを手元まで引きつけられる。

 ホームランを量産するには、もっと背筋を鍛えないといけませんが、3割は近い将来打てるイメージがあります。

 19歳というと、僕は社会人2年目。高校時代ホームランは0本で、社会人で4年やってダメならあきらめようと思っていて、とにかくひたすらバットを振っていた時期。だから、根尾もこの時期にどれだけバットを振って、基礎をつくっていけるか。

 また技術と並行して、若い頃はバットの長さ、重さと格闘していた時期でもありました。自分に合うバットというのは、じつは簡単に見つからないんです。僕もプロ6、7年目にバットを耳の下に置く構えの形は見つかったけど、バットだけはなかなか決まらなかった。

 つまり、どういうバットを扱うかでバッターのタイプが決まってくるところがある。僕は最終的に34インチ半、多くの選手より半インチ長く、重さも1キロまでいった。半インチ長くするということは、それだけ回転力を上げないといけない。通常の長さと同じ感覚で回ると、先を長くした分、ヘッドが返ってこない。そうした格闘をしながら自分に合うバット、使いこなせるバットを見つけている。これも打者にとっては大きな仕事なんです。

 今の選手は軽いバットを使うのが当たり前になっている。でも、重いバットを使ったらどうなるのか……とにかく一度挑戦してほしい。

 根尾なんかにしても、現時点でこれだけ振れるんやから、フォームだけじゃなくバットもいろいろと試して、可能性を探ってほしいね。



昨年、開幕スタメンを果たしたが、6試合だけの出場に終わった藤原恭大

藤原恭大(ロッテ)

 スイングについては、プロ1年目だけどよく振れている。さすが、小園、根尾らとともにアマチュア球界のエリートでやってきたというスイング。ただ、最初から最後まで一生懸命振っていて、スイングに強弱がない。とくにシーズン最初の頃は顕著だった。

 それに足を上げて打っているけど、軸足に体重が乗り切らないで、その場で足の上げ下ろしをしている感じでもったいない。体重移動の力を利用できていないからバネをつくることができないし、まだねちっこさもない。

 藤原のバッティングを見ていると、今年はピッチャーの投球に押されている場面が何度かありました。本人は引っ張りたいのに、右方向にいい打球のファウルが打てない。まあ、高卒1年目の選手はほとんどがそうで、イチローも1年目の時にファームで首位打者を獲ったけど、反対方向しか飛ばなかったと聞きました。藤原も強い打球のファウルが一塁方向に飛ぶようになれば、ファーストの頭上をライナーで抜けていく当たりが増えるはず。

 タイミングの問題もあるやろうけど、まだこのコースにはこの角度といったスイングができていない。なにより、すべての球種に対応せんとあかんと思っているんじゃないかな。そうなると余裕がなくなって、自分のスイングができなくなってしまう。

 あと、見た打席のなかで甘い球をミスショットする場面が何度かありました。もちろん、一流になってもそういう時はありますが、ここから上がっていくにはミスショットの数をどれだけ減らせるか。

 藤原の場合、足があるからつい “中距離ヒッター”を目指すのだろうと勝手に思ってしまいがちだけど、僕なんて高校時代は練習試合でもホームランを打ったことがなかった。でも、藤原は高校時代に4番を打って、ホームランもそれなりに打ってきたんでしょ。もし本人が「ホームラン打者になりたい」と思うのであれば、どこまで頑固になりきれるか。その可能性は十分にあると思います。

 あと最後にもうひとつ、藤原を見て気になったのは打席に入る前の姿。ネクストバッターズサークルから歩いてきて、打席の横で軽く2~3回ほどスイングするでしょ。これは好きじゃないんです。僕は”遊びのスイング”は一切しなかった。若い頃は、ネクストで5~10回ほど思いきりスイングして、ネクストを出た時は打つための準備ができていた。それぞれやり方はあると思うけど、どういう準備をして打席に立つか……そういうところも考えられるようになると、また違った結果になると思います。