バドミントン女子ダブルス 福島由紀&廣田彩花インタビュー(2) 福島由紀/廣田彩花ペアは、多くの時間を日本A代表の活動に…
バドミントン女子ダブルス 福島由紀&廣田彩花インタビュー(2)
福島由紀/廣田彩花ペアは、多くの時間を日本A代表の活動に割いている。国内で合宿を行ない、海外遠征へ出るというサイクルを繰り返す。その合間、国内では、所属するアメリカンベイプ岐阜で活動している。

東京五輪イヤーに臨む、福島由紀(右)/廣田彩花ペア
アメリカンベイプ岐阜を率いる今井彰宏監督は、2人の成長と成果について「夏から試合の中で立て直す力がついてきたのは、大きな収穫です。廣田が言っていました? しっかり覚えているんですね。結構、強く言いましたからね(笑)。世界選手権は準優勝でしたけど、あそこから、ぐんと変わって来ました。五輪レースは、プランどおりに進みましたよ、すばらしいです」と手応えを語った。福島、廣田は、プレー面でどのような手ごたえを持っているのか。
--プレー内容について、進化や課題を感じているのは、どのような部分ですか?
福島「もともとの私たちの持ち味は、前衛と後衛を固定せずにぐるぐると回るローテーションでプレーできるところです。その中で、周りから『レシーブで粘るペア』と言われるようになって、たしかによくレシーブをしているなと感じるようになりました。それで、レシーブからローテーションで攻撃に転じる今のスタイルになりました。
ただ、少しレシーブに回りすぎるところがあったので、前のプレーを思い出して、もう一度ローテーションしながら攻めるプレーが少し強化できた1年でした。相手にプレッシャーをかけにいくことが大事なので、攻めの形を相手よりも多くつくるところは大事にしていますし、もっと出していけたらいいなと思っています」
廣田「福島先輩がレシーブで回している時に、自分が合わせすぎてしまうことがあるなとは思っています。私の持ち味は、果敢に前に出たり、ドライブで攻めたりするところなのに、レシーブばかりになったり(相手を崩すのではなく、高い球を)上げてばかりになったり。自分から積極的にリズムをつくれれば、相手にプレッシャーをかけられるし、そこで返球を予測してネット前でいかに潰すかというところを、もう少しできればと思います」
--廣田選手は「気持ちが引いてしまい、リズムが悪いまま終わってしまう試合がなくなってきた」と話していましたが、ペアとしての進化の手応えについても教えて下さい。調子がいい時、悪い時のバロメーターは、ほかにもありますか?
福島「私は、あまり、緊張はしないタイプですけど、集中力が上がらないと感じる時があります。気持ちは向かっていこうとしているけど、もう一個(ギアが)上がらないというか、上げられないというか」
--廣田選手が2019年7月のジャパンオープンやタイオープンで苦しんでいたことや、その後の変化について、福島選手はどう感じていたのですか?
福島「その2つの大会は、正直に言って、久しぶりにこんな(よくない)廣田を見たなという感じでした(苦笑)。いつも、悪いなりに何かできるのに、それもできなかったので。本人もきつかったと思いますが、その2つの大会が終わってからは、悪くても調子が戻ってくるようになったと感じていました。でも、廣田だけが悪かったわけではなく、自分もよくなくて、廣田に頼っていたというか、パフォーマンスも気持ちも変わったのをすごく感じていました」
--これだけ安定して好成績を出しているのに、廣田さんがいつも、どこか自信がなさそうに話されるのは、なぜなのでしょうか?
福島「あはは(笑)。思いますね。それ、言ったことがありますよ。『全然、強いんだから、できるんだから、自信持って!』って。冗談半分、本気半分で。結構、ずっと言っているかもしれません。本人もわかっています。でも、その謙虚なところが廣田のいいところかもしれません。でも、たしかに謙虚すぎるかも(笑)」
廣田「下手くそだと思っているから、ですかね……」
福島「さっき、廣田が攻撃に出ていけていないという話をしていましたけど、攻撃を狙えていない時は、どちらにもあります。もう一つ前のタイミングで攻撃に転じられたら……というところは、また2人で突き詰めたいですね」
アメリカンベイプ岐阜の今井監督は「攻撃力はたしかに課題ですけど、自分たちの力は、精一杯出していると思います。改善できるとすれば、ロビング。下(低い位置)からの球出しは、もっと成長できると思います」と話したうえで、プレー面とは別の課題を指摘した。

安定した成績を挙げているフクヒロペアだが、まだまだ成長の可能性がある
「あの2人は、したたかさが足りない。相手がバテるか、諦めるかという試合にならないと、勝ちパターンにならない。ハッタリをかますとか(予測の)ヤマをかけるとか、そういう駆け引きで糸口を探す考え方が身についていないように感じます。秋は福島のほうがミスをして崩れました。いいコースを狙うからリスクはつきものなのですが。気にせずに戦い、勝負師に徹してほしかった部分はあります。
廣田は、すごく性格のいい子なんですけど、『自分は下手だ』というコンプレックスがあるように思います。どの競技でも同じですけど、不思議なことに、選手というのは『強い』というよりも『うまい』と言われたがります。そのコンプレックスが、不安として相手に見えてしまっているところがあるかもしれないと思う時はありますね」
2人が土壇場で強くなるのは、守備で粘れた試合だ。反対に、駆け引きで後手に回り続けると跳ね返せない。勝つためのメンタルコントロールは、安定感の上にさらなる勝負強さを足すためのポイントかもしれない。
2020年は五輪イヤーだ。ほか2組の日本のペアと高めあってきたレースも終盤戦に入る。福島と廣田は、五輪レースの先頭を走り続け、出場権を確定させることが第一だが、目標である金メダル獲得の可能性を高めるための努力を続けていく。
今井監督には、4月まで続く五輪レースで期待していることがある。「五輪の金メダルは、日・中・韓のどのペアにも優勝の可能性があると思います。これまでの五輪レースを20年間見てきましたが、レースの中での優勝回数が多いペアが強い印象を受けています。19年は3大会優勝していますけど、金メダルの可能性をもっと高めるためには、あと2回優勝が欲しいです」と課題を提示した。
--4月末までレースが続いていく中で話しにくいかもしれませんが、日本勢で同国からの出場最大2枠を争う状況は、日本にとって誇らしいことでもあり、悩ましいところでもあります。共に世界の頂点を目指す仲間であり、ライバルでもある2組--先輩である高橋礼華/松友美佐紀ペア(日本ユニシス)、後輩である永原和可那/松本麻佑ペア(北都銀行)は、2人にとって、どんな存在ですか?
福島「日本の女子ダブルスは、昔から強かったと思いますけど、『タカマツ』(高橋/松友)さんが16年のリオ五輪で金メダルを取ったから、今の周りのレベルアップがあると思っています。『オグシオ』(小椋久美子/潮田玲子)さんたちから『フジカキ』(藤井瑞希/垣岩令佳)と来て、継いできているすごいペア。永原/松本は、年下のペアというよりも、急成長しているペアという印象のほうが強いです。スキルも気持ちもあって、パワーもある。トータル的にしっかりしているペアですね」
廣田「永原/松本ペアは、私たちが(A代表に入ったばかりの17、18年頃に)先輩たちに向かっていった時期の姿と重なるというか、あの時の自分たちと似た気持ちで今やっているんじゃないかなと思います。『タカマツ』先輩は、やっぱり五輪の金メダリストですし、いろいろな経験を試合の中で生かせているペアなんじゃないかと思います」
金メダルを自分たちにとってリアルな目標にしてくれたのが、高橋/松友だ。そして、次は自分たちの番だと思っていたところへ、永原/松本が下から急に突き上げてきた。世界選手権の決勝で2度敗れた相手でもあり、福島/廣田にとっては、唯一と言っていい苦手な相手となっている。かつてないし烈なレースが終わるまで、五輪本番のことはなかなかイメージできないのが本音だろう。それでも、最後に五輪に向けた気持ちを聞いた。
--最後に、残りのレース、東京五輪本番に向けての意気込みを聞かせて下さい。
福島「2020年は、まずレースを乗り切って出場権を獲得すること。目標である五輪では、金メダルを目標にしていますが、そこでも一戦一戦の気持ちは忘れないようにしたいです。正直、五輪に出場できたとして、その場でどういうプレーができるんだろうという気持ちもあるので、そこを楽しみながら、見てくださるたくさんの方に、恩返しできるプレーをできるように頑張りたいです」
廣田「2人での大きな目標は、東京五輪での金メダルです。2人でケガなく乗り切って出場権を獲得して、その舞台に立てたらうれしいですし、2人で楽しんでやっていけたらいいなと思います。五輪で金メダルを取ったら自信を持てるかですか? うーん……、そうですね(笑)」
(おわり)