東海大・駅伝戦記 第75回

 明日、いよいよ箱根駅伝である。それに先立ち、12月29日に区間エントリーが発表された。東海大は以下のエントリーメンバーになった。

1区:鬼塚翔太(4年)
2区:塩澤稀夕(3年)
3区:西川雄一朗(4年)
4区:鈴木雄太(3年)
5区:西田壮志(3年)
6区:羽田智哉(4年)
7区:松崎咲人(1年)
8区:小松陽平(4年)
9区:米田智哉(3年)
10区:郡司陽大(4年)

 補欠メンバーは、キャプテンの館澤亨次(4年)、阪口竜平(4年)、松尾淳之介(4年)、名取燎太(3年)、市村朋樹(2年)、竹村拓真(1年)の6人である。



補欠に回った名取燎太だが、当日変更でのエントリーが有力視されている

 この区間エントリーでまず目を引いたのが、2区の塩澤だった。両角速監督は、名取が札幌マラソン(ハーフ)で優勝してから2区候補に挙げていたが、最終合宿などでの調子を見て、「塩澤の調子がいい」と2区に決めたという。

 この選択は、東海大にとって戦術的な幅を広げる意味で非常にプラスになる。つまり、全日本大学駅伝で優勝した時のアンカーであり、ハーフを62分台で走る名取を他区間で起用できるのだ。

 この”名取隠し”は、他大学にとっては脅威になる。仮に、名取が6区以降の区間に入ると、復路は前回以上の爆発力を持つ強力な布陣になる。現在、9区には米田が入っているが、メンバー変更の可能性が高い。

 この名取をはじめ、館澤、阪口、松尾も入る可能性があり、出雲駅伝、全日本大学駅伝で結果を出した市村も控えている。

 両角監督は復路を走る選手の要素として、「16キロ以降で粘れること」を挙げており、出雲、全日本でタフな走りを見せた市村も構想に入っているはず。いずれにせよ、9区にはエース級が入るのは間違いない。

 また、両角監督が重要区間に挙げ、「もっとも信頼できる選手を置く」と語った4区も、当日のメンバー変更になる見通しだ。補欠に回った主力メンバーなら誰もが候補になるが、ここは黄金世代の4年生が担うことになりそうな気配だ。

 今回、中島怜利(4年)が不在となって注目の6区だが、誰が担うのか。中島の一昨年の上尾ハーフのタイムが62分28秒なので、このタイムが目安になる。

 今回、6区にエントリーされた羽田は上尾ハーフで63分34秒(部内6位)、その前の高島平ロードレース(20キロ)で60分56秒(全体2位/部内1位)の記録を出している。タイプ的にも中島に似ており、そのままいく可能性はある。

 その一方で、「経験がプラスになることを期待している」と両角監督が言うように、山の経験も重要になる。補欠メンバーのなかで山を知るのは、館澤と松尾だ。ともに山上りの5区を走り、苦い経験を持つふたりだが、松尾は下りのタイプではない。だが、館澤は可能性がゼロではない。

 前回の箱根で、故障上がりの中島が走れたのは、下りだったからだ。平地を走ると痛みが出るが、下りでは走行フォームが異なるのでそれほど痛みは出ない場合がある。館澤は今シーズン、故障で長期離脱しており、駅伝を走っていない。平地に不安があるなら、あえて下りの6区で起用する可能性は十分に考えられる。

 そしてもうひとり、”秘密兵器”になり得る存在が竹村だ。西田のあとを継ぐ山上り候補だが、下りにも耐えられる強い脚力を持つ。この6区は復路の明暗を分ける重要区間だけに、誰を起用してくるのか非常に楽しみだ。

 今回の補欠メンバーは、他大学なら主要区間を走れる実力者ばかり。このなかから誰をどこに置くのか、周囲をあっと驚かせるような「大胆かつ緻密な区間配置」が見られそうだ。

 東海大の必勝プランは、往路で3位以内に入り、復路で逆転である。区間エントリーのメンバーを見ると、その狙いどおりのメンバーになっている。両角監督は言う。

「1区から3区でうまく流れに乗っていきたいなと思います。そこから少しずつ全体の動きが少なくなってくるので、それでしっかりと上位をうかがえる位置で初日を終えたいなと思っています」

 5区を終えた時点でトップと何秒差なら逆転可能かと聞くと、両角監督は落ち着いた表情で「70秒以内ですね」と即答した。

 前回の箱根で初優勝した時、5区終了時点でトップの東洋大とは1分14秒差だった。今回もほぼ同じぐらいのタイム差ならいけるという考えだが、単純に前回のタイム差は比較できない。

 今年は個の力が上がり、シューズの影響もあって、全体的に前回のタイムを大きく上回る可能性がある。両角監督は2区において、前回は湯澤舜(現SGホールディングスグループ)が68分05秒だったが、今回は「67分40秒ぐらいでいかないと置いていかれてしまう」と語った。両角監督の言う「70秒差」はスピードが上がっている分、前回の74秒差よりも厳しいが、それでも逆転できるということは、復路に対して絶対的な自信があるということだ。

 他大学の区間エントリーを見て、もちろん分析はしているだろう。だが、あまり気にしている様子はない。前回もそうだったが、それは東海大の選手たちが力をつけ、「自分たち次第」というところまでチームが仕上がっているからだ。両角監督は言う。

「他大学について、学生たちは気にしているかもしれませんが、自分たちのベストを尽くすことが大事」

 箱根駅伝は1年間の成果をぶつける場所だ。そして今回、これまで4年間チームを支えてきた黄金世代のラストステージになる。はたして、連覇の自信は──。

「あります。2連覇をしたら3連覇もあるんじゃないかと思っています。おそらく来年も、今年に匹敵するぐらいの戦力を整えられる自信がありますので、3連覇を目指せるように頑張りたいですね」

 そう語る両角監督の表情は、威風堂々としていて自信に満ちていた。おそらく大きなミスが起こらない限り、両角監督が思い描くストーリーどおりの展開になるだろう。

 ちなみに、理想のラストシーンについて聞くと、笑顔でこんな答えが返ってきた。

「10区で逆転。ドラマティックじゃないですか。視聴率に貢献したいですね」

 連覇のシナリオは、すでに完成している。