12月29日に発表された、第96回箱根駅伝区間エントリーを受けて、狙いと走りを予想していく。

 主力を控えメンバーに入れることなく、正面から往路勝負を挑んできたのは東洋大だ。学生最強と称され注目されている相澤晃(4年)は、前回驚異的な区間新記録で走った4区ではなく、2区にエントリーしてきた。さらに1区は2年連続区間賞を獲得している西山和弥(3年)と順当な布陣にしてきた。



2年連続で1区を1位で走っている西山和弥(写真左)

 これは酒井俊幸監督が話していたように、往路を縦長の展開にしたいという意図を実現しようというものだ。秋シーズンは、故障があった影響でまだ本調子にはなっておらず、出雲駅伝は1区区間10位で、全日本大学駅伝は5区で区間11位と不本意な走りをしていた西山だったが、現在は復調してきて、区間1位で走ってこられるという確信を持てたうえでの配置となったのだろう。さらに相澤が、目標にしている1時間06分30秒前後の日本人最高タイムで走るという自信もあるはず。ただ、東洋大が避けたいのは、相澤が他のライバル校を引っ張ってしまう状況になることだ。

 西山が2018年と同じように2位に14~15秒差をつけてくれば、相澤は最初から突っ込んで突き放す走りができる。さらに2位以下が集団になってけん制し合う展開になれば、大きなアドバンテージを得ることができるという発想だろう。

 そこで得た差を、前回も3区を走って区間4位の吉川洋次(3年)と、長い間故障で苦しみながらも今季は全日本大学駅伝で1区を区間6位と復調してきている渡邊奏太(4年)で4区をつなぎ、うまく活かしていきたい。そして、5区には2年連続で走っている田中龍誠(34年)ではなく、未経験の宮下隼人(2年)を起用した。これは、1時間11分台で走って欲しいという監督の思いから勝負をかけていると思われる。そこまでうまくつなぐことができれば、復路の6区今西駿介(4年)で先頭に立つ構想のはずだ。

 7区以降のエントリーは、9区の定方駿(4年)以外は1年生をエントリーしているが、出雲と全日本を走り、前回10区を走っている大沢駿(3年)と、関東インカレのハーフマラソンで4位になっている蝦夷森章太(2年)を控えに回しており、往路の状況を見て優勝を狙うか、3位以内を確実に確保するかの目標を決めて、当日変更で2人をいずれかの区間で入れてくるとみられる。

 また駒澤大も、ユニバーシアードのハーフマラソンで2位になっている中村大聖(4年)を1区にエントリーしたのは、往路を確実に行きたいからだろう。1区が1位と秒差でつなぎ、2区の山下一貴(4年)が淡々とした走りで目標通りに1時間07分30秒くらいで走れば、もし東洋大の相澤が、1時間6分台で走っても1分ほどのアドバンテージを与えるだけで乗り切れる。

 3区には大坪桂一郎(4年)がエントリーしているが、控えの小林歩(3年)か、小島海斗(3年)が起用される可能性が高い。小林は11月の上尾ハーフで1時間02分25秒の自己新を出していて、小島も前回7区を走り、区間4位の成績を残している。4区は注目の選手である田澤廉(1年)を入れて勝負区間にし、ジャンプアップを狙ってくるだろう。5区と6区には、前回も区間5位と6位で走っている伊東颯汰(3年)と中村大成(4年)をエントリーしている。

 復路も小林か小島のどちらかと、今季は5000mと1万mで自己新を出し、11月の上尾ハーフでも1時間03分07秒の自己新を出している石川拓慎(2年)がいる。このメンバーを、今は1年生がエントリーされている7区と10区に使えるだけに、往路がうまく流れれば、上位争いができる布陣になっている。

 青学大は1区に宮坂大器、2区に岸本大紀の1年生2名をエントリーして、主軸の吉田圭太(3年)と吉田祐也(4年)を控えに回している。ただ、その中でも2区の岸本は出雲駅伝で、2区を区間1位で走り、全日本も2区を区間5位と好調で、11月には1万mで28分23秒33の自己新を出しているだけに、信頼の起用だろう。5区は前回8区で区間2位の飯田貴之(2年)で、6区は1500mで実績を出している初出場の谷野航平(4年)だが、原晋監督はしっかり準備をさせてきた上での自信を持った起用のはずだ。

 様子見のエントリーだった1区は、出雲、全日本で1区を走っている湯原慶吾(2年)の起用が順当で、4区には吉田圭太を起用し、ともにハーフマラソンで1時間1分台の記録を持っている3区の鈴木塁人(4年)とふたりで上位進出をもくろんでいる。優勝争いを睨めば、終盤の9区と10区をどうしてくるかが見どころだ。

 それに対して優勝候補筆頭の東海大は、主力の阪口竜平(4年)と館澤亨次(4年)、さらには全日本では最長区間の8区で区間2位の走りをして優勝テープを切った名取燎太(3年)を控えに回す余裕のエントリーできた。

 その中でも1区の鬼塚翔太(4年)と5区の西田壮志(3年)は、前回も区間6位と区間2位の結果を出しているだけに、信頼してのエントリーだ。また6区の羽田智哉(4年)も、しっかり準備させてきたからこそのエントリーと思える。さらに8区には前回区間新で優勝を決めた小松陽平(4年)を置き、7区も1年生ながら上尾ハーフではU20日本歴代5位の1時間02分11秒を出している松崎咲人。また10区も前回の経験者で全日本でも6区区間1位の郡司陽大(4年)を配置する、信頼のエントリーになっている。

 名前や実績にとらわれずとも、調子のいい選手を使えば優勝できるという両角速監督の余裕がえるエントリーだが、4区は当日変更で前回区間2位の館澤を起用してくる可能性が高い。2区には11月の1万mで28分16秒17を出している塩澤稀夕(3年)をエントリーしているが、そこを全日本で力をみせた名取か、前回は7区を走った阪坂口を入れてくるかも注目だ。

 もし塩澤をそのまま使えば、そのふたりのどちらかを9区に起用してもひとりが余る。3区にエントリーしている西川雄一朗(4年)は全日本ではチームで唯一の区間二桁順位の10位だったが、そこを当日変更で変えれば前回区間7位で走っている選手を外すという贅沢な選手層の厚さだ。

 どちらにしても、往路をそこそこのタイムでしのげれば、総合優勝は確実と思える戦力を持っているだけに、東海大の注目ポイントは、どのように当日変更をしてくるかということになりそうだ。

 他には往路優勝を狙う国学院大も、2区には土方英和(4年)で3区は青木祐人(4年)、5区には浦野雄平(4年)と前回の経験者を並べるオーソドックスな布陣で挑んできた。当日変更がありそうなのは、様子見をした1区と4区だが、控えに回している主力の藤木宏太(2年)を1区で使って流れに乗せるか、4区に起用して5区の浦野に勢いをつけるかが悩みどころだ。出雲では2区で区間3位、全日本は4区で区間4位の中西大翔(1年)が4区で他大学のエース級と勝負をできそうなら、藤木の1区で勝負に出る可能性がそうだ。

 東海大の選手層の厚さは圧倒的だが、他校も戦い方によっては勝利が見えてくる。