文・写真=鈴木栄一後半で50得点とオフェンスの立て直しに成功川崎ブレイブサンダースが12月29日、ホームで滋賀レイクスターズと対戦。オーバータイムとなった前日に続き、この試合も終盤までもつれる激闘となったが、ここ一番の決定力で上回った川崎が…

文・写真=鈴木栄一

後半で50得点とオフェンスの立て直しに成功

川崎ブレイブサンダースが12月29日、ホームで滋賀レイクスターズと対戦。オーバータイムとなった前日に続き、この試合も終盤までもつれる激闘となったが、ここ一番の決定力で上回った川崎が80-71で勝利。連勝を15に伸ばして2019年を締めくくった。

しかし篠山竜青が、第3クォーター途中にレイアップシュートを決めた後、体勢を崩してフロアに倒れ込んで肘を負傷。詳細は不明だが、そのまま退場するアクシデントに見舞われた。1週間前、右膝靭帯を損傷したマティアス・カルファニに続く、主力の負傷は気になるところだ。

試合は、序盤から両チームともに、粘りのディフェンスを遂行しロースコアの展開に。その中でも3ポイントシュート13本中7本成功と、精度で上回った滋賀が36-30と先行して前半を終える。

しかし第3クォーターの出だし、川崎は辻直人の連続3ポイントシュート成功ですぐに追いつくと、ここから接戦が続いていく。第4クォーター残り6分半、川崎は2点を追う場面から藤井祐眞のレイアップによるバスケット・カウント、ニック・ファジーカスの3ポイントシュート、さらにファジーカスの速攻など、堅守からのトランジションによる一気加勢で連続12得点。これで残り4分で10点リードと一気に抜け出す。

滋賀もジェフ・エアーズの奮闘など、ゴール下からの得点でなんとか食い下がるが、残り2分、この試合3ポイントシュート6本中4本成功の熊谷尚也が駄目押しの3ポイントシュート成功。

「J(ジョーダン・ヒース)が当たっていて、ディフェンスが彼によっていました。そしてJは周りが見えていてパスをさばいてくれたので、ただ打ち切ることだけを考えていました」と振り返る熊谷の一撃で、再びリードを2桁に広げた川崎が競り勝った。

「チームとして一つずつ前に進むしかない」

川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは、後半50得点とオフェンスを立て直しての勝因をこう語る。「前半、点数をとるのに苦労していた。昨日の試合から相手が戦術を変えてきた部分にアジャストして、自分たちの流れを作ることができました」

そして、第1戦で28得点を許した滋賀のヘンリー・ウォーカーを、フィールドゴール18本中5本成功の12得点と押さえ込めたキーマンとして鎌田裕也に言及。ウォーカーは機動力があり、積極的に3ポイントシュートを打ってくる3番タイプの選手。前日は日本人フォワードをマークにつけていたが、ウォーカーに力負けしてインサイドへの侵入を容易に許す場面も目についた。この反省を生かし、今回はコンタクトで負けない鎌田をウォーカー対策に起用。

「前半、ウォーカー選手に鎌田をマッチアップさせて守るのがプランでした。そこでしっかり仕事をしてくれて、後半のシュート確率を抑え込むのにつながった。鎌田は大きくて足も動くので、彼のフィジカルなプレーで、ウォーカー選手をメンタル的にも消耗させてくれました」と指揮官の大満足のプレーだった。

攻守に渡って絶大な存在感を見せていたカルファニがいなくても連勝を伸ばしている川崎だが、佐藤ヘッドコーチは「マティアスの欠場1試合となった25日の富山戦は選手もそうですし、コーチ陣もマティアスがいないとはこういうことか、と前半にすごく感じていました」とチーム全体に戸惑いがあったと振り返る。

だが、ここでファジーカスの喝でチームは気持ちを切り替えることができたと続ける。「途中、ニックがベンチにいるメンバーを全員集めて『もうマティアスはいない、俺たちが彼のためにやるしかない』と話しをしました。そこから雰囲気が変わり、一人ひとりがより自覚をもってやるようになったと思います」

篠山の負傷も起き、開幕から盤石の体制で連勝街道を突き進んでいる川崎だが、この勢いを維持できるのか、2019年は早々に今シーズン最初の踏ん張りどころ。

ここを乗り越えられるのか、そこは「チームとして一つずつ前に進むしかないと思っています。今のスタイルを、気持ちとしては何も変えたくない。しかし、ニックとJのプレータイムが増えてきてしまっている。その負担をコーチとして考えないといけない」と語る指揮官の手腕により注目が集まる。

「今はよいケミストリーで戦うことができています」

一方、リーグ最高勝率の川崎相手に2試合続けて惜敗となった滋賀の指揮官ショーン・デニスは、「敗因はシュートを決め切れるか、どうか。今日も川崎さんが大事なところで決めきったのに対し、自分たちはミスが多かった」とここ一番での決定力不足を挙げる。実際、第4クォーターの滋賀はフィールドゴール20本中7本成功のみにとどまった。

悔いの残る結果で2019年を終える滋賀だが、試合を重ねるごとに力をつけている現状を指揮官はこう言う。「スタートはよい形でできなかったが、選手を入れ替え、今はよいケミストリーで戦うことができています。現在10勝16敗ですが、接戦の要所でシュートを決めて勝てる試合はいくつかあった。それができれば16勝10敗にすることもできた」

また、「12月の目標は6勝4敗でしたが、5勝5敗で終わりまし。ただ、勝てる試合をものにできれば9勝1敗で終わることもできた。そこは、しっかり振り返ってやっていきたい」と続ける。

この「シーズン全体で16勝10敗、12月を9勝1敗にすることもできた」は、客観的に見ても過大評価というわけでもない。事実、12月の滋賀は敗れた5試合の内、2試合が1点差負け。5試合すべてが1桁の点差での敗北と、完全な力負けはない。

デニスヘッドコーチが言及する『ここ一番の決定力の差』を改善するのは簡単なことではないが、同時に今の滋賀がどんなチーム相手にも終盤まで競り合いを展開する力をつけつつあることも確かだ。

持ち味の3ポイントシュート攻勢がはまれば、年明け早々の天皇杯で滋賀が快進撃を続けても驚きではない。連敗で終えたとはいえ、そんな期待を抱かせてくれる2019年の締めくくりだった。