箱根駅伝2020 有力校はココだ!  戦力分析 國學院大学編 箱根駅伝13回目の出場にして、”5強”の一角に挙げられるようになった國學院大。総合14位に終わった前々回大会が、急上昇の転機になった。出雲駅伝で三大駅伝の初タイトルを獲得した國學…

箱根駅伝2020 有力校はココだ!  
戦力分析 國學院大学編

 箱根駅伝13回目の出場にして、”5強”の一角に挙げられるようになった國學院大。総合14位に終わった前々回大会が、急上昇の転機になった。




出雲駅伝で三大駅伝の初タイトルを獲得した國學院大

 現在4年生となった3人、浦野雄平が1区で区間2位、青木祐人が3区で区間5位、土方英和が4区で区間3位と好走。当時の”2年生トリオ”の活躍を見て、國學院大を「箱根常連校」に押し上げた前田康弘監督が思い切った強化策を打ち出す。翌年、土方を3年生にして主将に指名するなど、「2年計画」で強化を推し進めてきたのだ。そして昨季は、全日本6位、箱根7位と両駅伝で過去最高成績を残した。

 今季はチームスローガンである「歴史を変える挑戦」に果敢に挑んでいる。5月の関東インカレ2部で、浦野が5000mと1万mで日本人トップを飾ると、土方がハーフマラソンで優勝。9月の日本インカレでは5000mで浦野が5位(日本人2位)、1万mでは土方と藤木宏太(2年)が3位と4位に入り、日本人ワン・ツーを飾るなど長距離種目を沸かせた。

 そして10月の出雲駅伝で快挙を果たす。1区:藤木が5位で好発進すると、2区:中西大翔(1年)で3位に浮上。エースが集まった3区で浦野が区間新(区間3位)の快走でトップ争いに加わった。4区:青木と5区:茂原大悟(4年)は粘りの走りを見せて、トップ駒澤大と37秒差の4位で最終6区へ。最後は主将・土方が10.2kmを日本人最高の29分05秒で走破して、駒大を大逆転。三大駅伝で初タイトルを獲得した。出雲は過去最高10位から、三大駅伝では過去最高6位からのジャンプアップだった。

 しかし、期待を集めた全日本は苦戦する。プランどおり、2区:浦野で12位から4位に急上昇するも、3区:藤木で9位に転落。7区:茂原も区間17位に沈み、7位でゴールした。大学初となる2年連続でのシード権獲得となったが、「3位以内」という目標を果たすことはできなかった。直前に2区と3区の区間を入れ替えたことが裏目に出て、アンカー土方も終盤は腹痛に苦しみ、伸びなかった。

 それでも全日本では、故障の影響で出雲を外れた島﨑慎愛(2年)が1区を走り、学生三大駅伝を経験。中西大翔は出雲に続き、全日本も4区4位と好走した。その双子の兄・唯翔(1年)も6区を区間5位で走るなど、箱根未経験者が本番に向けてステップを踏んでいる。

 箱根駅伝は前回の往路3位メンバー全員が残っており、「往路V」と「総合3位以内」がターゲットだ。前回も好走した1区:藤木、2区:土方、3区:青木、5区:浦野のオーダーが濃厚。前田監督は、「1区の藤木で区間賞争いに加わり、2区の浦野で好位置につけて、3区の青木と5区の浦野で攻め込みたい」と、往路Vに向けての戦略は固まっている。

 1区候補の藤木は、甲佐10マイルロードレースの男子一般で9位(46分26秒)に食い込んでおり、高速レースになっても十分に勝負できる。トップ争いで2区につないで、土方はゆったりと入り、後続から上がってきた有力ランナーについていく展開に持ち込みたい。

 3区候補の青木は単独走が得意で前田監督も「駅伝力が高い」と評価する選手。前々回は3区で区間5位、前回も3区で区間6位と活躍している。今季は全日本大学駅伝の5区で区間賞。11月23日の1万m記録挑戦競技会でも自己ベスト(28分44秒01)をマークしており、3区でも攻撃できる。

 4区は前回の経験者である茂原か、出雲と全日本で好走した中西大翔のどちらかが入ることになるだろう。ライバル校と比べて戦力的には劣るが、5区には絶対エースが控えている。

 浦野は前回5区で1時間10分54秒の区間新記録を打ち立てたが、昨季は夏に故障があり、走り込みが十分ではなかった。加えて、上りの練習もほとんどしていなかったという。今季は故障もなく順調にトレーニングを消化。走力がアップしただけでなく、起伏のあるコースを意欲的に走り込むなど、上りを走った距離は大幅に増えた。

「5区は往路のアンカーなので、当然ゴールテープを最初に切ることを考えています。僕のところで2分~3分くらいの差は何とかしないといけない。1時間8分台を出せれば、(先頭から)3分~4分差(のスタート)でも逆転できる計算です」と、浦野は区間記録の大幅更新を狙っている。

 復路の戦力も前回以上だ。6区は1万m28分台の島﨑が準備しており、好スタートを切ることができるだろう。上尾ハーフで藤村遼河(3年)と河東寛大(3年)が1時間3分台20秒台をマークするなど、選手層は厚くなっている。

 エース浦野でトップに立って、往路でどれぐらいの貯金をもたらすことができるのか。初日のリードを生かして、ライバル校のミスを誘発できると、初優勝のチャンスが巡ってくるかもしれない。令和最初の箱根駅伝で、國學院大が歴史を動かす。