「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、…

「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、ステファノス・チチパス(ギリシャ)ら若手の初トップ10入りなど、群雄割拠の様相を呈した今シーズン。ATP(男子プロテニス協会)の公式YouTubeでは、そんなトップ選手たちの2019年ベストショット集を動画公開している。

そのなかで今回は世界ランキング1位に返り咲いた、「赤土の王者」ナダルの名プレーを紹介する。

鍛え上げられたナダルの強靭な肉体。そこから繰り出されるフォアハンドはあまりのスイングスピードの速さに腕が止まり切らず、打球後に頭の上でラケットをくるんと回すような独特のフォロースルーを見せる。そして驚異的なスピン量で、別次元とも思えるようなショットの軌道を描く。

やはりベストショット集の動画でも、そのフォアハンドによるウィナーが多く紹介されている。また、8月「ATP1000 モントリオール」でのギド・ペラ(アルゼンチン)とのラリーでは、高い軌道からストンと落ちるトップスピンロブもある。

さらにナダルが王者たる凄さは、どんなにピンチの場面でも最後の1ポイントが決まるまで決して諦めない、不屈の闘志にあるのではないだろうか。4月の地元クレーコート大会「ATP500 バルセロナ」準決勝、ドミニク・ティーム(オーストリア)との試合で見られるのもそのひとつ。

そのシーンは、ナダルの4-6、4-5。しかも相手ティームのサービング・フォー・ザ・マッチという苦しい場面だった。ナダルが意地をみせ0-30と先行した次のポイント。会場は、大歓声で彼を後押しするような雰囲気に。

相手ティームがワイドに厳しいサービスを放ち、ナダルは体勢を崩されながら返球をした。しっかりと構えて再びコースを突いてくる相手だったが、それでもナダルはカウンター気味の鋭いバックハンドショートクロスを放つ。ところが、前に詰めてきていたティームにそれを短く返すようにボレーされ、自身はまだコートのかなり後方に。

しかしナダルは、先程のショートクロスを振り抜いた直後すかさず前に走り込んだ。相手ティームのボレーが浮いてやや甘くなった間に、どんどん落下点に近づいてゆく。ナダルがボールに追いつきそうだとなると、地元観衆は興奮を抑えきれず声をあげ始めた。

そして最後は、ナダルがフォアのランニングショットで相手の横を抜き去り、その瞬間スタンドのボルテージは最高潮に。観衆はみな両手を高く上げてガッツポーズ、満員の会場に地鳴りのような大歓声が響いた。その最高な雰囲気の中、ナダルは2度ほど跳び上がって派手なガッツポーズを見せた。

今シーズンの年末世界ランキング1位に輝いたナダル。今年も赤土のグランドスラム「全仏オープン」で優勝し、自己が持つ前人未踏の同大会優勝記録を12に更新した。その後「全米オープン」でも優勝を飾り、2019年は計4つのタイトルを獲得している。

今回紹介したティーム戦では結果的に敗れたが、ツアー最終戦「Nitto ATPファイナルズ」のダニール・メドベージェフ(ロシア)戦では最終セット1-5・相手のマッチポイントから大逆転勝利を収め、再び諦めない姿勢で世界中のファンを感動させた。

来シーズンも、「次世代のクレーキング」と目されるティームとのクレーでの戦いや、長年続くフェデラーとのライバル関係から目が離せない。

なお、ナダルのベストショット集の動画では他にも、ロングラリーで追い込まれたように見えたあとの矢のようなカウンターや、ジャンプしながらの華麗な股抜きショットなどが紹介されている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP500 バルセロナ」でのナダル

(Photo by Quality Sport Images/Getty Images)