箱根駅伝2020 有力校はココだ!
戦力分析 駒澤大学 編



1年生ながら、チームを引っ張る走りをしている田澤簾

 2018年の箱根駅伝で駒澤大は、5区から8区まで連続ブレーキがかかる走りになって、まさかの12位でシード権を落とした。

 だが、2019年は予選上がりから3強(東海大・青学大・東洋大)に続く4位になって底力をみせた。この”4位”が持つ大きな意味を大八木弘明監督はこう話す。

「以前はよく3位以内と言っていましたが、常に優勝を狙える位置にいるということが大切。そこから落ちてしまうと、もう一回3位以内に入れるチームを作るのが大変なので、3位から落ちないチーム作りが大切だと思ってやってきました。その点で前回は、3強の一角を崩せる位置にいるということを確認できた。だからこそ、今年も三大駅伝すべて3位以内という目標を持てたし、出雲駅伝も全日本大学駅伝も2位、3位という結果を出せたのだと思う」

 10月の出雲駅伝では3区で1年生の田澤簾が、追ってきた東洋大の相澤晃(4年)や国学院大の浦野雄平(4年)という学生トップランナーと競り合い、区間記録では2位だったものの、最後はその2人を突き放してタスキを1位で渡す殊勲の走りを見せた。

 そして、4区の小林歩(3年)が区間3位ながらも区間新記録の走りで1位を堅持し、5区終了時点で駒大は、2位の東洋大に13秒差をつけて中継。最終6区で中村大聖(4年)が国学院大の土方英和(4年)に抜かれて2位になったが、予想以上に健闘したレースだった。大八木監督は「1区の山下一貴(4年)と6区の中村を入れ替えていれば勝てたレース。僕の作戦ミスです」と振り返る。

 さらに11月の全日本大学駅伝は2区まで2位という滑り出だったものの、3区は区間16位のタイムで順位を10位に下げると、次の4区も順位を上げられずブレーキになった。それでも5区、6区と徐々に順位を上げて、7区から長距離区間に入ると、田澤が区間賞獲得の走りで順位を4位に上げ、最終8区では山下が区間3位の走りで順位に上げて3位でゴールした。

 箱根駅伝のチームエントリーは、4年生4人、3年生5人と上級生が多い反面、1年生も5人という顔ぶれだ。大八木監督も「1年生で本番で使えるのは1~2名だと思いますが、夏合宿ではみんなよくやってくれて、30kmもしっかり走って上級生を刺激していた。その突き上げがチーム力を上げた」と笑顔で話す。

 エントリーメンバーのハーフマラソンの持ちタイムを見れば、ユニバーシアードで銀メダルを獲得した中村大聖の1時間01分51秒を筆頭に、1時間2分台が7人、1時間3分0秒台もふたりいるという充実ぶりだ。

 今回のチーム目標は3位以内。大八木監督は「とにかく往路優勝を狙っていかないと厳しい戦いになる。悪くても3番以内では行けるメンバーを往路に使い、あとは我慢して走らなければいけない」とも言う。

 ただ、1年生の田澤が急成長したことで、その可能性は高くなってきている。

「夏合宿では、3週すべてをAチームでやれたことが自信になった」という田澤の2区起用があるか注目されるところだが、大八木監督は「時期エースになっていかなければいけない存在だし、2区を走れるようにならなければいけない選手。今回も2区を走れるような態勢にしておけば3区や4区はいつでも走れる。2~4区のいずれかに入れられるような準備をしたい」と期待する。だが本人は「来年以降は2区を走りたいけど、今年は山下さんの方が経験も多いし、適応していると思うので、自分は3区か4区を走りたい」と話す。

 その田澤が言う山下は、出雲では1区2位、全日本は最長19.7kmの8区を3位と安定した走りを見せている。前回の箱根も2区を走って、1時間08分09秒で区間9位と大きなブレはない。

「田澤が2区を走りたいと言わなかったので、それなら自分が2区かなと。今年は、1万mの28分40秒や5000mの13分台も余裕を持って走れているし、出雲でもラスト1kmが思ったより(体が)動いて、ラストスパートもマシになっているので、全体的な地力は上がっていると思う。

 自分の場合は(東洋大の)相澤と戦ったとしても勝つことを求められていないですが、2区を走るなら村山謙太さんの駒大記録(1時間7分46秒)を目標にして1時間7分30秒台で走って、相澤とのタイム差を1分以内に抑えたい。出雲と全日本で安定した走りができたので、改めて『自分は外さないな』と自信を持った」と笑顔を見せる。

 区間配置を見れば、全日本の1区で区間2位だった中村大聖が1区を希望しているが、1区には他の選手を起用して、山下、田澤とともに2~4区というのが、大八木監督が往路優勝を狙える配置と考えているところだ。「田澤を相澤にぶつけたい気持ちもあるが、エースとして育っていくためにも、(区間賞を狙える区間を走って)1年から区間賞を獲得して欲しい」という思いもある。

 順当にいくなら、2区と3区は前回も経験している山下と中村大聖を並べ、今では主要区間になっている4区に田澤を起用して勝負させ、今年3月の日本学生ハーフでは1時間02分47秒の自己新を出し、5000mも自己記録を更新している伊東颯汰(3年)を5区で起用するという形になるだろう。

 1区は箱根初出場になる小林も希望している。彼も今年は5000mの自己記録を14分02秒21に伸ばし、出雲は4区を区間3位で全日本は2区で区間5位と結果を出し、さらにその後の上尾ハーフでも、1時間02分25秒の自己ベストと力を伸ばしている。本人も「ラストスパートに自信はないですが、粘るのは得意だし、途中の小刻みなペース変化に対応するのは得意。粘り切って先頭と10秒差以内でつなぎます」と自信を持っている。

 大八木監督も「1区は重要になるが、ハーフを1時間2分台そこそこで行ける選手なら、たぶん行けるんじゃないかなという気持ちはある」と言うように、小林は条件を満たしている。最初がうまく流れれば、4区の田澤勝負で往路3位以内というのも射程圏内に入りそうだ。

 一方、復路は「6~7区くらいまではしっかり往路の流れを落とさないようにして、9区と10区は耐えるレースをするしかないという感じです」(大八木監督)と言うが、6区には前回区間6位の59分04秒で走った中村大成(4年)がいて、7区も前回区間4位の1時間03分57秒で走っている小島海斗(3年)という経験者が残っている。

 8区には勢いのある1、2年生を起用できれば、ハーフで1時間02分17秒を持つ大坪桂一郎(4年)や1時間02分56秒の神戸駿介(3年)。彼らに加え1時間03分04秒のタイムを持ち、全日本も6区を区間4位で走っている加藤淳(3年)がいるだけに、復路もいい勝負ができそうだ。

「東洋大や国学院大、青学大など、どこも往路優勝を狙ってくるだろうから厳しい戦いになると思います。層の厚さや総合力を見れば東海大が抜けていて、往路3位くらいで行って復路で逆転というのを考えているだろうから、どの大学も勝つためには往路で東海大に2~3分差を付けたいと考えていると思います」

 今回は確実に3位以内に入り、来年、再来年は優勝を目指して勝負に行きたいと大八木監督は言う。そのためにも、往路でいい流れを作ることが駒大の絶対条件。中でも大きな可能性を持っている田澤を、どこで起用して機能させるかが大きなカギになりそうだ。