天皇杯3日目。初戦を迎えたのは、フリースタイル57キロ級の岩澤侃(スポ4=秋田商)、65キロ級の安楽龍馬(スポ2=山梨・韮崎工)、グレコローマンスタイル67キロ級の宇井大和(スポ4=和歌山・新宮)、そして女子フリースタイルの須﨑優衣(スポ2=東京・安部学院)の4人。また、前日予選を勝ち進んだ小玉彩天奈(社2=高知東)は62キロ級の決勝に臨んだ。梅林太朗(スポ3=東京・帝京)は79キロ級の3位決定戦へ進んだが、相手の棄権により3位入賞となった。

 須﨑は明治杯全日本選抜選手権(明治杯)を優勝しているため、今大会優勝するとアジア五輪選手権の代表選手に内定する。並々ならぬ気合いが須﨑にはあった。しかし、準々決勝では結果は13ー2と圧倒的なものであったが、「1試合目はあまり上手くいかなくて」と振り返ったように、先制点をとられたり第1Pでテクニカルポイントをあまりとれなかったりと思い通りにいかない展開が続いた。その流れで迎えた準決勝は明治杯の決勝で戦った元リオ五輪金メダリストの登坂絵莉(東新住建)。「怖さや不安もあった」と話したが、テークダウンや場外ポイントを確実に決め点数を重ねると登坂の素早い攻撃を完全に封じ無失点に抑えた。6ー0と須﨑の勝負強さと高い攻撃力が発揮された準決勝となった。試合後ガッツポーズを見せたが、すぐ先の決勝へと目を向けているようであった。65キロ級の安楽は初戦を快調に勝利すると、準々決勝と準決勝は死闘となった。第1Pでは足へのタックルを受ける展開が続き3点のビハインドを抱える。第2Pでもテークダウンを決められさらに離された。しかし、安楽が起死回生の5点の投げ技を決め勝負をひっくり返した。互いに譲らない展開で結果8ー8で終了。大技を決めた安楽のビックポイント差で大きな白星を手にした。準決勝で迎えたのは今年の世界選手権5位の乙黒拓斗(山梨学院大)。対談で優勝への強い気持ちをあらわにしていた安楽にとって負けられない闘い。それぞれ相手に攻めいる隙を与えず、勝負は均衡状態が長く続いた。しかし、残り2分で足をとられ4点の投げを決められるとローリングも重ねられ一気に点差が開いてしまった。死にものぐるいで安楽は組み手からタックルを狙うも乙黒の守りは堅く敗北。試合後悔しさをあらわにした。


起死回生の投げ技を決めた安楽

 今年学生最後である岩澤と宇井。岩澤は初戦をきっちり勝利したが、準々決勝の第2Pで失点を重ねテクニカルフォール負けに喫した。「あまり自分のかたちに持っていけなかった。悔しいです」と試合後語った。宇井は第1Pで得意のパッシブからの投げ技を決め点差を離したものの、第2Pで相手に投げを2度決められてしまい9ー9のビックポイント差負け。「バテちゃいました」と省みた宇井。表彰台にのぼることが目標と言っていただけに無念の敗退となった。決勝に臨んだ小玉は先にパッシブを2度献上してしまいなかなか得点できない時間が続いたが、残り1分半で相手の右足を狙いテークダウンを決め優勢に。このままいけば優勝、耐える時間が続いたが残り10秒で相手にバックをとられ逆転。悲願の全日本優勝を成し遂げることはできなかった。小玉は予選の右腕の怪我によって本来のパフォーマンスをすることはできなかったが、全日本優勝への気持ちを強く語っておりその悔しさは計り知れるものではなかった。


優勝まであと一歩であった小玉

 4年生の岩澤と宇井は学生最後で準決勝にたどり着けなかったが、悔いなく終われたとスッキリとした表情だった。一方梅林は「納得のいかない部分はあります」と悔しさをあらわにするとともに「なにをやらなければいけないかということも明確になった」とすでに前を向いていた。4年生となった梅林がどこまでさらに成長するか期待したい。そして、須﨑は順当に決勝へ駒を進め、宿敵入江ゆき(自衛隊体育学校)との決戦をいよいよ迎える。今まで東京五輪出場への熱い想いを様々な場面で語ってきた。プレーオフでの雪辱を果たし明治杯に続き今年の全日本を制覇できるか。

(記事 北﨑麗、写真 林大貴)


3位入賞の梅林

結果

男子フリースタイル

▽57キロ級

岩澤 準々決勝敗退

▽65キロ級

安楽 準決勝敗退 3位決定戦へ

▽79キロ級

梅林 3位入賞

男子グレコローマンスタイル

▽67キロ級

宇井 1回戦敗退

女子フリースタイル

▽50キロ級

須﨑 決勝進出

▽62キロ級

小玉 準優勝




コメント

宇井大和(スポ4=和歌山・新宮

――組み合わせを見た時はいかがでしたか

組み合わせについては、一番いい位置でした。他のところを見ても強い選手ばっかりで、その中でも上位を狙えるところなのかなという印象でした。でも結果負けてしまって。組み合わせ的にはいいところに入れたかなという感じです。

――第1ピリオドではパッシブを取ってうまく点数を取って折り返せた印象ですが、実際は

1ピリは最初にパッシブ取ってグラウンドで返すっていう自分の狙っていた通りにいけたのは良かったんですけど、グラウンドの2回目の返しとかはリフトが2点で入っちゃったので、あそこをしっかりと4点とりきってテクニカルで終わらせないといけなかったと思います。そこは悔やまれますね。

――2ピリ目でうまくいかなかった点は

バテちゃいましたね。1ピリのそのグラウンドで力使っちゃって、下半身がふわふわするというか、あまり動かなくなってしまいました。動かなかったのが、減量がちょっときつかったというのもあるんですけど、本当に10月のグレコ戦あたりから落ちているのかなと思います。

――対談では「悔いがないようにやり切りたい」とおっしゃっていましたが

悔いは残るんですけど、こういう終わり方もあると思って受け入れて。ないと言ったら嘘になるんですけど、悔いなく終われたかなと思います。

――大学四年間を振り返って、チームメイトはどのような存在でしたか

少ない人数の中でも1人1人がすごく個性が強くて。1人1人と密接に関われて、いい影響を受けられたのは早稲田のいいところだと思います。自分も後輩たちにそうやって影響を与えて、その後輩たちも下にどんどんつないでいって、それが早稲田のレスリング部なのかなと思います。

――早稲田は他大と比べてどこがいいですか

やっぱりチーム早稲田としてまとまりがあったり、選手自身が早稲田のレスリング部であることに誇りを持ってやっていると思います。そこは他大と比べて強いと思います。

――ご自身が早稲田で良かったと思う瞬間はありましたか

えーなんだろう。松本(直毅、スポ4=神奈川・横浜清陵総合)が書いてるの見たんだよな。応援するところ。被るかもしれないけど、人数が少ない分、1人1人が応援しないとなので。みんなでまとまって応援しようっていうのは積極的にやっていて。やっぱ自分がプレーしていてパッと見ると、みんな応援してくれているので力になりました。

――後輩へのメッセージや期待したいことは

自分と松本はチームのグレコとして不甲斐ない結果だったんですけど、来年は新入生にグレコの選手も入ってくる予定なので、その人たちを含めて、今いる選手がチーム早稲田のチームグレコで盛り上げていってくれたらと思います。

岩澤侃(スポ4=秋田商)

――トーナメントを見た時はどう思われましたか

一番チャンスのあるところだと思いました。まず左下に自分がいて、左上が第1シードの選手で、右のブロックは勝ったことがない選手とか樋口選手とかいて。自分がいたそのブロックは、勝つチャンスがあるなと思ったからです。

――1試合目は順調に点数を重ねた印象ですが振り返って

最初は結構調子良くて、グラウンドも連続で決められていい流れでいけました。でも、内閣後(内閣総理大臣杯全日本大学選手権)でけがして、けがもまだ完治していなくて、練習不足なところがちょっとあったので、スタミナの面で息が上がってしまいました。それで追い上げられるというところがあったので。でもトータルで見ると、そんなに悪い試合ではなかったように思いました。

――2試合目を振り返ると

2試合目はですね、もう勝って、準決勝にいって、あすにつなげるという風に臨んでいました。中身としては、先制点だけ勢いでいけたんですけど、そこからは終始ペースを握られたというか、あまり自分のかたちに持っていけなかったです。失点を重ねてしまって、スタミナも削られちゃって、悔しかったです。

――敗因はどこにあると思われますか

相手の選手が手足が長かったりして、懐が深い選手だったんですけど、その距離でやったところが良くなかったところです。もうちょっと刺して近づくとか、左右の動きを増やしてちょっとずつ距離を詰めるのをやっていくべきだったと思いました。

――対談では「自分がやってきたことを出し切りたい」とおっしゃっていましたが

負けた試合では得点にはつなげられなかったんですけど、何回も刺してからの展開にもっていこうとはしていて。取りきれなかったけど、そういう攻める姿勢は出せたので、ある意味自分らしくやれたというのはあります。

――大学四年間で出会った人たちはどのような存在ですか

一番思うのは、すごく時間の有効性、時間はすごく限られているんだなと思いました。けがで1年近くブランクがあって、人よりも練習できていない時期があって、その時に他の人が練習できているのを見ると、自分ももっとやらなきゃと思うし、復帰しても力の差が広がっていきますし。そのけがしている時間に自分で考えてどれだけトレーニングできるとか、あと復帰してからどれだけ考えてできるかとかを深く考えるようになりました。時間の使い方とかすごく大事なんだなと思うようになりました。

――そのことを教えてくれたということでしょうか

はい。そうですね。

――早稲田の他大と比べて良い点は

早稲田はみんな言うと思うんですけど、人数が少ない中で、それぞれのレスリングがあって。レスリングのスタイルもそれぞれの生活もあるんですけど、個が強いです。色鮮やかで。まさに十人十色という感じです。個を尊重しているような部活だと思っています。

――そう思う瞬間はありましたか

マットで試合して、終わった後観客席に戻ってきたときにみんなが声を掛けてくれるところが、雰囲気があったかいなと思います。すごく良かったと思います。

――後輩たちにメッセージや言いたいことは

本当にみんな強いし、頼もしい面もあって。まだまだ足りないところもあると思うんですけど、それぞれ個がある早稲田の中でお互い協力しあって、高めていってくれたらもっとチームとして強くなると思うので、縦横のつながりを大切にしていってほしいですね。あとは、高校生に負けちゃったので、剛光(坂井、社3=福岡・小倉)と侃(島谷、スポ1=秋田商)に倒してほしいです。俺が負けたやつに勝ってほしいです。

須﨑優衣(スポ2=東京・安部学院)※囲み取材より抜粋

――今日の試合を終えて今のお気持ちを聞かせてください

ようやくスタートラインに立てたというか、プレーオフのときのリベンジを必ずして絶対に天皇杯優勝して東京五輪に行けるように、まずは明日の1試合必ず勝つことだけを考えて準備したいと思います。

――今日ここまでの勝ち上がりはかなりの激闘であったと思いますが、振り返っていかがでしたか

今の登坂選手との試合はなにがなんでも勝ちたいという気持ちがあったので、1試合目があまり上手くいかなくてこのままじゃダメだなという思いがあって、勝ちたい一心で試合に臨みました。

――準決勝終盤の闘いというのはご自身で振り返っていかがでしたか

やっぱり怖さや不安もあったんですけど、最後攻めにいけたのは勝ちたいという気持ちがあったから怖さや不安を打ち消すことができたのだと思います。

――登坂選手は憧れの選手だと以前おっしゃっていましたが、その選手を下してなおどのような存在でありましたか

本当に自分の憧れの選手です。例えば新聞に載っていたらその記事を読んで、自分が苦しんでいるとき登坂選手だったらこう考えるだろうなだから私もこうしようとか、本当に憧れていて。ただ、リオ五輪で登坂が表彰台に上った瞬間に、この憧れのままじゃ倒せないから倒したい選手に変わって、憧れの選手でありながら一番倒したい選手でした。

――明日の決戦に向けてのお気持ちを聞かせてください

明日は1試合なので、自分のレスリング人生全てをかけて、泥くさくても最後は自分が勝っていられるように明日も頑張りたいと思います。

梅林太朗(スポ3=東京・帝京)

――3位入賞という結果については

1年前にケガしてから79キロ級で優勝するという目標を立てて、1年間かけて準備してきたので、納得のいかない部分はあります。もっとやるべきことはあったと思います。ただ準備してきたことは無駄ではなかったと思いますし、なにをやらなければいけないかということも明確になったので、リベンジするまでこの階級でチャレンジしていきたいという気持ちですね。

――きのうの準決勝を振り返って。思うように攻撃が入らなかったり、ケガをしていた部分を狙われた印象がありました

油断をしていたわけではないんですけど、自分の得意なパターンでポイントが取れなかったのと、本来足を触らせないことが自分のスタイルなのに、足を触らせてしまった時点で自分が劣っていた部分ですね。そのあと失点を重ねてしまったことも余計な点でしたし、ポイントが取れなかったという2つの課題が出ました。攻撃も後半単発になって、攻め切れなかったのも事実なので、もう一つ武器をつくって、次対戦するときは勝てるようにしたいと思います。

――組み合わせを見たときの心境は

正直どこでもよかったので。誰と当たっても勝つという自信はあったし、そのつもりで準備してきたのでどこでもよかったんですけど、初戦から余裕がある試合ができて順調だったので、くじ運は良かった方だと思います。

――完治はしていないということですが、ケガの不安はありましたか

ただ、ここで100パーセントを出せる準備はしてきたので、今回は関係ないと自分の中では思っていました。単純にマットから長期間離れていたということが、大きな差が生まれてしまった一つの原因だと思うので、練習不足だったかなと思います。

――今の100パーセントは出せた

出せたと思います。あとは今やっていることの強度を上げていくだけだと思うので、悔しかったんですけど、超えられないカベではないと思うので。次やるときまでにしっかり準備したいです。

――明確になった課題というのは

具体的には自分の得意な低いタックルともう一つ逆の足を狙う攻撃を身につけないと、自分の攻撃も防がれてしまうとそこまでになってしまうし。もう一点はディフェンスの部分で、前の足を取られる分にはディフェンスができるけど、後ろの足を取られた時におろそかになってしまうので。それはケガをしていたからではなくて根本的に左足のディフェンスが弱いので、そこはリハビリとともにその部分の技術が今後課題かなと思います。

――「準備してきたことは無駄ではなかった」とおっしゃっていましたが、ケガをしていた期間で得たものはありましたか

正直、自分が出ていない試合に来ることも辛かったし、頑張っている仲間を見て自分も頑張らないとと思いながら、結局マットに上がれない自分がいて。だからといってレスリングから距離を置くこともできなかったので、レスリングと並行して自分の苦手な部分だったり、新しい視点でトレーニングしたりはしていましたレスリングができない分、新しいことにも挑戦できたので、自分の視野を広げるという意味で自分を見つめ直すきっかけになったと思います。

――復帰に向けて、支えになったものはありますか

やっぱり家族の支えだったり、チームがすごくいい状態だったということも大きかったです。自分が戻った時にそれ以上に活躍したい、出られなかった分も含めて。最終学年にもなるので、早稲田というチームだったからこそ戻りたい、頑張りたいと思えたのかなと思います。

――完全復活が目標とおっしゃっていましたが、その点に対しての手応えは

準決勝の後半、リスクを冒してでも点を取りに行く場面で踏ん張りが効かなかったり、練習でもあと一個詰めていたら点が取れるところを踏み込めていなかったというのも事実なので。不安がなかったわけじゃないんですけど、今できる100パーセントは出せたので。まだここから強くなれる自信はあるので、これからかなと思っています。

――最終学年へ向けての抱負はありますか

全部勝ちにいって、その中でも一個一個目の前の試合を全力で勝ちにいく。全部勝つという漠然とした目標ではなくて、まず目の前のことから一生懸命に取り組んでいきます。