昨年のウインターカップ、東山は2回戦で福岡第一と対戦し、54-83の大敗を喫した。結局、福岡第一は圧倒的な強さで大会を制するのだが、東山の慰めにはならない。無力さを痛感させられる完敗からスタートしたのが現在のチームであり、同じ京都のライバル…

昨年のウインターカップ、東山は2回戦で福岡第一と対戦し、54-83の大敗を喫した。結局、福岡第一は圧倒的な強さで大会を制するのだが、東山の慰めにはならない。無力さを痛感させられる完敗からスタートしたのが現在のチームであり、同じ京都のライバルである洛南ではなく、福岡第一だけを見据えて準備を進めてきた。その集大成となる今回のウインターカップで、東山はどんな戦いを見せてくれるのだろうか。目論見通りに進めば、準決勝で東山と福岡第一の対戦は実現する。

「福岡第一だけを見てやっていこうと決めました」

──まずはキャプテンから自己紹介をお願いします。

脇阪 広島の井口中学校出身の脇阪凪人です。中学では県大会に勝って中国大会は出たのですが、予選リーグで今は福岡第一にいる山田真史くんのチームに負けました。ジュニアオールスターにも入りましたが、予選で負けたので特に成績は残していません。

──地元を離れて東山に入ることを決めた理由は?

脇阪 もともとは僕の先輩がいた洛南に行きたいと思って、練習を見学に行ったんです。そのついでに東山もという感じで、土曜に洛南、日曜に東山に行きました。そこでピックをすごく使うバスケを見て、自分には能力がない分、コンビネーションでやっていくバスケに魅力を感じました。大澤(徹也)コーチもすごく良い方で、この人のところでやりたいと思いました。1年の新人戦でスタメンだったのですが、米須が来てベンチに落ちて、今年からまたスタメンです。

──米須選手、脇阪選手はどんなキャプテンですか?

米須 誰よりも真面目でしっかりしていますし、いろんなことに気を利かせられます。練習でも一番声を出しているし、声を出していない時がない。良い意味でうるさくて盛り上げてくれます。プレーの面では3ポイントシュート。流れが悪い時に決めてくれます。ウインターカップ予選の洛南戦でも7本決めてくれました。あとはみんなを笑いでも盛り上げてくれます。

──笑いと言えば、米須選手は去年に取材した時に、当時のキャプテンから「ボケが面白くない」とバッサリ切られていました。笑いの面で上達はありましたか?

脇阪 そこは全然成長してないっす。

米須 ボケること自体、意味分からないです。そこは関西と全然ちゃうんで。

──でも、去年はなかった関西弁が出ましたね。

脇阪 長崎の言葉が出るたびに、その瞬間に僕らが「やめてそれ」って言うんですよ。「何それ」みたいな感じで(笑)。

米須 イントネーションの違いでツッコまれるんですけど、それは仕方ないやろって……。僕としては長崎弁で貫きたいんですけど、関西弁がどんどん入ってくるんで負けてしまいます。イントネーションは変わらないんですけど。

──では笑いの面での成長は来年に持ち越すとして……。

米須 いや、もう無理です(笑)。

──では、プレーヤーとしての成長について教えてください。去年の米須選手はセンスはあるけど身体が細かったですよね。この1年間の彼の成長を、キャプテンはどう見てきましたか?

脇阪 背中を向けることが少なくなりました。以前はフィジカルの問題があって、ずっと相手に背中を向けてプレーする感じでした。去年のウインターカップでも河村(勇輝)選手を相手にするとずっと背中を向けていたので。それがインターハイと胎内カップでは前を向いて勝負できるようになっています。そこは成長ですね。

米須 去年のウインターカップでは河村選手に何もできませんでした。あそこでやられて、パスをさばこうとしてもやらせてもらえなくて。福岡第一に負けた日はさすがに落ち込みましたね。まず3年生に申し訳ない思いがあって、「何やってるんだろう」と眠れませんでした。

「今年は5人全員が攻めることができます」

──去年のウインターカップ、2回戦で福岡第一に完敗したところから今のチームはスタートしました。脇阪選手のキャプテンの仕事は、まずチームを立ち直らせるところからでしたね。

脇阪 ウインターカップで負けて、そのまま新チームでの遠征がありました。負けたチームが集まって試合をしたんです。その時に選手だけでミーティングをして、今年の目標を決めました。福岡第一に負けた経験を無駄にしたくなくて、全国のトップレベルの実力を知ることができたから、そこを目標にしていこうと。僕たちは今まで洛南を見ていたんですけど、そんなことじゃダメだなって。みんなで福岡第一だけを見てやっていこうと決めました。一番上の福岡第一を見てやってきたことで、自分たちの実力も上がったと思います。

──具体的に、練習メニューをこう変えたとか、新たな取り組みはありましたか。

脇阪 福岡第一を相手に去年のウインターカップでできなかったことを分解して、それを一つひとつ練習してきました。ドライブした後にどう止まるか、ピックからセンターに出すのを狙って、そこにカバーが言った時にどう先を読んでパスを出すかだったり。

──去年のチームと比べて強みと言えるのはどこですか?

米須 今年は5人全員が攻めることができます。誰に出してもアタックできるので、僕としてはパスの選択肢が増えました。

脇阪 今年は全員が個人の力があって、それは相手のディフェンスを2人寄せる力だと思います。ディフェンスがハードについてくるから、裏を突くプレー、トリッキーなパスが出ます。

米須 個人的にはチェストパスだけじゃなくオーバーヘッドパスを出せるようになって、パスの幅が広がったと感じています。

脇阪 そこは正直、もともとすごいんであまり分からない(笑)。パスのスピード、判断のスピードが上がって、フリーになったら絶対パスが来るようになりました。フィジカルの課題がなくなったことで、パスの判断にも余裕ができたんじゃないかと思います。

米須 自分でも去年に比べたら力がついたと思います。45度から逆サイドのコーナーまでオーバーヘッドパスで飛ばせる力がついてきました。ストレートパスが出せるようになって、ディフェンスに追い付かれないように、どれだけ速いパスを正確に出して、味方にドフリーで打たせるかを意識しています。逆に、自分では3ポイントシュートを全然打たなくなりました。シューターがいるので打つ必要がないとも言えるんですけど、なんかパスが面白いんです。5人とも攻めることができるので、司令塔としてパスをさばけば良い。今はパスが一番好きです。

「僕たちのプレーを実際に見てくれよって思います」

──チームとしては福岡第一を強く意識していますが、それぞれ個人としてはどうですか?

脇阪 個人的には河村くんに負けたくないです。僕は広島出身で、河村くんは山口で、ミニバスからずっと練習試合をやっていたんですが、その時は一回も勝てませんでした。中学のカップ戦で勝ったことはあるんですが、中国大会では勝てなかったし、50何点取られて負けたり、ずっと負けているイメージなので、高校で倒しておきたいです。

米須 僕も河村さんです。去年のウインターカップと今年のインターハイで2敗しているので。10月に新潟でやった胎内カップでは勝ったんですが、あっちも本気じゃない感じがあって、僕たちにも勝った感覚がありません。やっぱりウインターカップで勝たなければ本当の勝ちじゃないです。河村さんを意識しつつ、チームとして福岡第一を倒して優勝したいです。

──やはり福岡第一への意識は強いですね。それ以外に注目しているチーム、選手はいますか?

脇阪 広島皆実の三谷桂司朗です。同じ中学なので頑張ってほしいです。

米須 地元の長崎のチームのことは気になります。長崎西は身長が大きいチームじゃないですけど、九州大会では福岡第一を一番苦しめたと聞いているので、上まで上がって来てほしいです。

──脇阪選手にとっては高校バスケ最後の大会です。将来のことはどう考えていますか?

脇阪 プロ選手になりたいです。Bリーグだともともと並里成選手が好きで、NBAだと今はケンバ・ウォーカー選手ですね。横の動きからのチェンジ・オブ・ペースがキレッキレなんですよ。ワールドカップで日本代表と対戦したのを見て、全然違うなって。それからすごく見ています。プロ選手を目指して、その後はバスケットボールのコーチになりたいと思います。日本で一番のチームで、選手に慕われる先生、監督になりたいです。中学校でも高校でもいいですけど、良い選手をいっぱい育ててプロに、NBAにガンガン輩出したいです。

──去年も同じことを思ったのですが、東山は上下関係がないですね。

米須 ないです(笑)。

脇阪 3年生が全然怖くないですよね。だから2年生もナメてる(笑)。でも、それで全然良いと思います。僕も先輩を先輩だと思ってない部分があったし。上下関係があったら面白くないです。締めるべきところだけちゃんと締めれば、あとは面白くやれたほうが良いです。

──では最後に、今回のウインターカップで東山のどんな部分を見てもらいたいですか?

米須 個人としてはパスがどこに行くかを見てもらいたいです。ピック&ロールから自分で攻めるのか周りを使うのか、そこからどれだけパスをさばけるか。ムトンボ・ジャン・ピエールとのアリウープも出すし、パスでウインターカップの会場を沸かせたいので注目してください。

脇阪 世間の声には「東山は留学生だけ」みたいなのがあると思います。でも僕はそこに「違うぞ!」と言いたい。実際、そう思われていたら悔しいし、僕たちのプレーを実際に見てくれよって思います。