「パラバドミントン」って、どんなスポーツ?

簡単に言うと・・・

2020年の東京パラリンピックから正式競技として新たに採用されたパラバドミントン。その歴史は意外に浅く、国際的な競技大会が開催されるようになったのは1990年代からと言われている。これまでは世界パラバドミントン連盟が1998年から開催している『パラバドミントン世界選手権』と『アジアパラ競技大会』が最高峰の大会だったが、東京2020パラリンピックの新競技として新たな大舞台を得たことで、注目度も高まっている。

ルールや使用する道具は一般的なバドミントンとほぼ同じであるため、強靭なフィジカルや一瞬の判断能力、何手も先を読む力が求められる。選手の圧倒的な運動量や、比較的障がいが軽い選手によるスピーディーなラリーの応酬、義足や車いすを使用する選手たちの身体能力を限界まで駆使した動きは観ていて息をのむほど。「初速スピードが最速のラケットスポーツ」と呼ばれるバドミントンの魅力をそのまま楽しむことができる。

また、現在(2019年時点)日本にはメダル候補の女子選手が多数存在しており、注目度も急上昇中だ。男女ともに最強と言われる中国をはじめ、タイなど強豪国のトップ選手たちとの"熱い"戦いからも目が離せない。

ココに注目!観戦が面白くなるポイントは?
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒX-1
① 予備知識なしでも楽しめる

パラバドミントンの基本的なルールは、一般的なバドミントンと同様に1ゲーム21点方式で3ゲームを行い、2ゲームを先取したものが勝利となる。使用するネットの高さも155cmと通常のバドミントンと同じであるため、車いすを使用した選手にとっては、座った状態から見上げるため、高めのネットとなる。

一般のバドミントンとの唯一の違いは、クラス分けに応じてエリアが限定されているという点だ。パラバドミントンでは障がいの程度に応じて、車いすのクラスが2つ、立位のクラスが4つの計6つにクラス分けがされていて、車いすWH1~立位SL3までのクラスのシングルスではコートの半面、それ以外のクラスではコートを全面使用し競技を行うというルールになっている。

学校やレジャーなど、幼い頃にバドミントンという競技に触れたことのある人も多いはず。誰にでも親しみやすく事前の知識も必要としないパラバドミントンは、初めての観戦でも楽しめる"熱い"競技なのだ。

② 瞬間的に相手を欺く心理戦

パラバドミントンには強靭なフィジカルが必要。しかし、それ以上に頭脳プレーが勝敗を左右する知的な競技でもある。選手の身体的特徴にもよるが、一般通常のバドミントンに比べて選手は反応や移動に時間がかかるため、ラリー中の「どこにシャトルを落とすか」、「相手の応戦に対して自分はどう打つか」といった駆け引きや、車いすの場合は前後の揺さぶりが重要になってくるのだ。

圧倒的なスピードで打ち出されるシャトルの応酬と一瞬の狭間で組み立てられる戦略。激しい撃ち合いの裏で静かな知的ゲームが繰り広げられるのだ。

③ クラスごとに見どころがある

クラスに応じて選手たちの戦い方が変わってくるのも観戦の大きな見どころだ。6つのクラスは以下の通り、クラスの詳細とそれぞれの見どころをみていこう。

WH1(車いす)コート半面WH2(車いす)コート半面SL3(下肢)コート半面SL4(下肢)コート全面SU5(上肢)コート全面SH6(低身長)コート全面俊敏なチェアワークと正確なラケットワークは必見 【車いす(WH1、WH2)】
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒX-1

車いすのカテゴリーはWH1とWH2のクラスに分かれている。WH1とWH2の違いは腹筋がきくかどうか。腹筋がきくWH2は前後に身体を大きく動かし広い範囲でラケットを動かすことができる。

ちなみに、パラバドミントンで使用される車いすは素早い動きに対応できるように、アルミなど軽い素材で作られており、タイヤは八の字型になっている。さらに、前後の身体の動きに対応するため、後輪にも転倒防止のキャスターが取り付けられている。

このWH1、WH2クラスでは、俊敏かつ正確なチェアワークが要求されるため、片手ではなくラケットを扱う方の手も使って車いすを操作しなければならないが、ラケットワークも重要となる。車いすとラケットを同時に操作するという非常に高度な動作を選手たちは行っているのだ。さらに、車いす競技では珍しい、シャトルを打ち返す際の車いすを後退させる動きや、WH2クラスの車いすで動きながら上体を大きく反らすクリアーは圧巻。

選手の身体の動きや粘り強いラリーでの駆け引きなどにぜひ注目してほしい。

最新ギアの使いこなしにも注目 【下肢(SL3、SL4)】
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒX-1

下肢障がいのカテゴリーでは程度の重いSL3と程度の軽いSL4に分けられている。SL3ではコートの半面、SL4ではコートの全面を使用し、立位で競技を行う。

義足を使用する選手もおり、選手によっては素早く動くために短い義足を装着している選手もいる。この、選手たちが装着している最新の技術が駆使された”ギア”の使いこなしも見どころのひとつだが、頭脳を使った戦術も、SL3、SL4クラスの醍醐味と言えるだろう。

縦横無尽にコートを飛び回る、オリンピック顔負けのプレーから目が離せない 【上肢、低身長(SU5、SH6)】
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒHaruo Wanibe

上肢障がい、低身長のクラスではコートの広さに制限がないため、コート全面を使ったアグレッシブなプレーが楽しめる。

低身長のSH6クラスでは遠心力を使ったショットの出しにくさをカバーするため、コートの広さを感じさせない俊敏なフットワークを武器にする選手が多い。コート全面を文字通り"飛び回り"、ラリーをつないでいくプレースタイルはエキサイティングだ。

また、上肢障がいのSU5クラスでは、オリンピックに負けないダイナミックなプレーに圧倒されるだろう。

ダブルスの醍醐味は、お互いの長所を活かしたプレー
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒX-1

ダブルスでは、2選手の組み合わせにルールがある。各クラス名についた数字がポイントとなり、ペアを決める際に、2選手それぞれのポイントの合計に上限が定められているのだ。例えば、車いすクラスの上限ポイントは3点。WH1 の選手 + WH1 の選手 = 2点 はOKだが、WH2 の選手 + WH2 の選手 = 4点は、点数オーバーとなり、ペアを組むことができない。

決められた合計ポイントの中で組んだペアが、一心同体となってお互いの長所を活かし、そして時には弱点を補い合いながら戦うチームワークに注目してもらいたい。

車いす男女、ミックス(WH1、WH2)・・・上限合算数 「3」

下肢男子(SL3、SL4)・・・上限合算数 「7」

上肢男子(SU5)・・・制限なし

下肢上肢女子、ミックス(SL3、SL4、SU5)・・・上限合算数 「8」

低身長男女、ミックス(SH6)・・・SH6同士

このように、それぞれのクラスごとに面白さがあり見どころ満載のパラバドミントン。いろいろな角度から興味のあるクラスを見つけるのも良いだろう。きっとお気に入りの選手が見つかるはずだ。

パラバドミントンを観戦しに行こう!
(写真は 2018 Asian Para Games)ⓒHaruo Wanibe

パラバドミントンの強豪として名高い地域であるアジアの中にあってなお、金メダル候補もいる日本。日本には経験値の高いベテランから現在メキメキと頭角を表している若手に至るまで、選手層がかなり厚く、誰が日本代表となっておかしくない状況だ。

ダブルスで世界ランキング1位のWH1の里見紗李奈(WH1)、山崎悠麻(WH2)ペア、世界ランキング1位の鈴木亜弥子(SUS5)、2015年世界選手権シングルス3位の小倉理恵(WH2)、女子ではパラリンピックのヒロイン候補・2013年世界選手権シングルス優勝の豊田まみ子(SUS5)など世界クラスの選手がひしめき合う。

男子では2017年世界選手権3位の今井大湧(SU5)、2019年世界選手権ベスト8の藤原大輔(SL3)、そして期待のホープ・梶原大暉(WH2)などメダル候補が多数。

中国の女王ヤン・チウシャ(SU5)と鈴木とのライバル争いや、強豪アジア諸国との戦いにも注目が集まっている。

東京パラリンピックはパラバドミントンに絶対注目! ぜひ会場に足を運び、クラスごとに異なるスピーディで白熱した選手の動きや、その裏で行われる心理戦を実際の目で確かめてほしい。

https://www.parasapo.tokyo/schedule

text by Shuhei Kaneko(Parasapo Lab)

photo by x-1, Haruo Wanibe