試合中に意見を交わす上村、鎌形のハーフ団と栗原主将関東大学ジュニア選手権 入替戦 vs筑波大Jr.慶大41−5筑波大12月7日(土) 12:30K.O.@慶大日吉グラウンド関東大学対抗戦最終戦での、帝京大からの勝利から一週間。慶大蹴球部はジ…


試合中に意見を交わす上村、鎌形のハーフ団と栗原主将

関東大学ジュニア選手権 入替戦 vs筑波大Jr.

慶大41−5筑波大

12月7日(土) 12:30K.O.

@慶大日吉グラウンド

関東大学対抗戦最終戦での、帝京大からの勝利から一週間。慶大蹴球部はジュニア選手権の入れ替え戦に臨んだ。「慶應のプライド」をかけた大仕事。前半をリードして折り返すと、後半は攻守に筑波大を圧倒した。4年生が残したこの勝利は、黒黄の未来にとって大きな財産となるだろう。

慶大日吉グラウンド。降りしきる雨粒は冷たく、選手たちの吐く息は白かった。白を基調に黒と黄色のライン。ジュニア選手権用のジャージに身を包んだ選手たちが入場する。その中には主将の栗原由太(環4・桐蔭学園)や副将の川合秀和(総4・國學院久我山)をはじめ、長年黒黄ジャージになじんできたメンバーもいた。このメンバー選考の意図について、栗原主将は「チームに何かを残すため」と語る。その答えは、カテゴリー1残留、つまり勝利だ。

前半は一進一退の攻防となった。特に光ったのが、両チームのディフェンス。前半11分、筑波大がハーフウェイライン付近でボールに絡む。すると直後のディフェンスでCTB木村朝哉(商4・慶應志木)、WTB安西浩昭(政4・慶應)のタックルが刺さり、慶大がペナルティを奪い返した。

このプレーから少しずつ慶大に流れが傾き始める。15分にはWTB安西が抜け出し、ゴールに迫る。ノックオンがあり先制とはならなかったものの、この日初めて筑波大のディフェンスラインを崩すことに成功した。続く17分には、相手のキックが短くなったと見るやいなや、CTB栗原がボールを持つ。自慢のボールキャリーで一気に22mラインを越え、局面はゴール前の攻防戦へ。少しずつ前に出る慶大に対し、水色ジャージの塊も崩れない。長いフェーズの後、FL川合が決定打を打ちにいった。その瞬間、波のように押し寄せた筑波大守備陣に押し返され、ボールを喪失。慶大は攻め込みながらも得点できないシーンが続く。

そんな重い空気を打破したのは、この日14番に入った1年・WTB辻田拓史(法1・慶應)だった。24分、筑波大の展開を読み切り前に出ると、ボールをインターセプト。およそ40m、相手ディフェンスを寄せつけることなく走り切った。SO鎌形正汰(商3・慶應)のコンバージョンキックも決まり7-0。慶大が欲しかった先制点を挙げた。

この後は両チーム粘りのディフェンスで得点を許さない。特に筑波大は強固なディフェンスラインを敷き、幾度となくハーフウェイ付近で慶大を押し返した。対する慶大も攻撃に変化が生まれ始める。試合が進むにつれ、キックを織り交ぜながらの攻撃が目立つようになった。


セットプレーで優位に立った

7−0で試合は折り返した。そして迎えた後半、いきなり慶大が決定機を迎える。3分、相手のキックミスで敵陣内に侵入し、22m手前からのラインアウト。HO安田裕貴(政4・慶應)からのボールをしっかり収めると、がっちりモールを組んだ。じわり、前進。歓声が上がる。止まらない、止まらない。さらに大きな歓声とともに慶大のモールはゴールラインを突破し、レフリーの長い笛が鳴った。これで12-0。しかし、まだ油断はできない。

決定打は11分。筑波大のラックからFL川合が掻き出して、ボールはCTB栗原へ。ハーフタイムでは「判断を早くして蹴っていこう」(栗原)と話し合った慶大。主将がプレーで示した。

この試合の主役・辻田が待つスペースに蹴り出すと、若きスピードスターがそれに応えた。インゴール左端にしっかりグラウンディングを成功させ、17-0。


この日3トライを挙げた辻田

積極的なキックは慶大に勢いをもたらした。直後の14分、相手のハイパントを受けると、すぐさまSH上村龍舞(環4・國學院栃木)がスペースに蹴り返す。背走する相手に対してプレッシャーをかけ、有効なカウンターキックを許さない。そして、そのボールを受けたのは途中出場のSO田中優太郎(経4・慶應)。ハーフウェイからランを選択すると、待ち受ける筑波大ディフェンスを華麗にかわし、そのまま駆け抜けた。24-0にリードを広げたところで、ようやく選手たちからは安堵の表情が見られた。

その後は攻守に慶大が圧倒する。反撃に出る筑波大の攻撃に対しては「ライズ」と「指指しノミネート」を徹底。攻撃面では、それまで押され気味だった接点で前に出て、筑波大のペナルティを誘発。ペナルティからの敵陣侵入、そこからのラインアウトモールでさらに2つのトライを追加した。加えて、キックを多用する攻撃が機能し、辻田がこの試合3本目となるトライを挙げて勝負あり。試合終了間際に許したトライ1本のみで抑え、41-5の快勝を飾った。


トライを決め、タッチを交わすFW陣

「慶應のプライド」。悔しい敗戦を喫した11月10日(日)の明大戦を境に、選手たちからはこんな言葉が聞かれるようになった。チームの目標は「対抗戦優勝」と「日本一」。黒黄戦士たちは、掲げた理想と厳しい現実を前に、自らの誇りを問うた。SH上村はこの一戦について「慶應のプライドを見せつけることと、下級生に何かを残そうと思って試合に臨みました」と振り返る。CTB栗原は「下級生には対抗戦、選手権で勝つことの意義を考えてほしい」という言葉を残した。プライドを取り戻すためには、勝つしかない。そして勝つことの意義は、ルーツ校として「慶應のプライド」を世に示し続けることなのかもしれない。

残すは22日(日)に予定されている、帝京大との引退試合のみとなった。

対抗戦で見せつけた俺たちのプライドを、今一度ぶつけるだけだ。

(記事:野田快 写真:栗栖翔竜、竹内大志、堀内大生、萬代理人)

次戦 引退試合 vs帝京大

12月22日(日) 13:00K.O.

@帝京大百草グラウンド

以下、出場メンバー、試合後コメント

◇出場メンバー

Starter

1.PR(プロップ) 有賀光生(総4・國學院久我山)

2.HO(フッカー)  安田裕貴(政4・慶應)

3.PR(プロップ) 室星太郎(総4・静岡聖光学院)

4.LO(ロック) 川端隼人(理4・國學院久我山)

5.LO(ロック) 池田勇希(商3・熊谷)

6.FL(フランカー) 川合秀和(総4・國學院久我山)

7.FL(フランカー) 内田尚輝(経4・慶應)

8.No.8(ナンバーエイト) 濱野剛己(総3・桐蔭学園)

9.SH(スクラムハーフ) 上村龍舞(環4・國學院栃木)

10.SO(スタンドオフ) 鎌形正汰(商3・慶應)

11.WTB(ウィング) 辻田拓史(法1・慶應)

12.CTB(センター) 栗原由太(環4・桐蔭学園)

13.CTB(センター) 木村朝哉(商4・慶應志木)

14.WTB(ウィング) 安西浩昭(政4・慶應)

15.FB(フルバック) 小谷田尚紀(経3・慶應志木)

Booster

16. 山本英晴(商4・慶應)

17. 松岡勇樹(法1・慶應)

18. 後藤克徳(商1・國學院久我山)

19. 平野創(商4・慶應)

20. 大谷陸(政3・慶應)

21. 高野倉建生(商4・慶應志木)

22. 田中優太郎(経4・慶應)

23. 鬼木崇(法1・修猷館)

選手変更

40分 木村朝哉→22田中優太郎

66分 内田尚輝→20大谷 陸

66分 安西浩昭→23鬼木 崇

70分 室星太郎→18後藤克徳

70分 池田勇希→19平野 創

73分 上村龍舞→21高野倉健生

73分 安田裕貴→16山本英晴

73分 有賀光生→17松岡勇樹

◇試合後コメント

CTB栗原由太主将(環4・桐蔭学園)

――今日は4年生中心のメンバー構成となりました

今日に関しては、4年生が残せるものというところで、4年生中心のメンバーを栗原HC(ヘッドコーチ)が考えてくださいました。今年は対抗戦であまりうまくいかなくて、(4年生がチームに)なにか残せるものを、とずっと思っていました。そこで、入れ替え戦になってしまったジュニア選手権に関しては、来季レベルの高いところでBチームが力を磨けるように、と考えました。そういった経緯で、(Aチームの)試合に出ていた4年生も含め、AチームBチーム関係なく、4年生中心という編成になりました。

――前半は7−0というロースコアになりました。要因はどこにありましたか

まず攻撃面では、エリアマネジメントのところで、早く蹴って決断していれば、もっと楽な試合になったかなと思います。ハーフウェイ付近で(相手ディフェンスと)揉みすぎてしまいました。筑波さんもタックルとか、ディフェンスが全体的によかったので、自分たちで難しくしてしまったという印象です。

後半は簡単に、判断を早くして蹴っていこうということになりました。9番からのハイパントだったり、10番、12番、13番が仕掛けながら蹴るっていうのを意識してプレーするようになりました。僕たちはディフェンスが安定していたので、そこをつきつめてディフェンスでターンオーバーしたり、プレッシャーをかけたりして、トライをとることができました。

――そのディフェンスで、うまくいった部分というのは具体的にどこになりますか

まずは、ずっとやってきた「ライズ」です。立ち上がって次の動作に入って、役に立つところまで動く、といったものですね。次に「指指しノミネート」で、これは自分の前に立っている人間をしっかり指で指して、ノミネートして、その責務を果たすというものです。その二つを意識がけていて、結果的に(今日の試合では)よく機能してくれました。これらを愚直にやり続けたことで、結果いいディフェンスにつながったかなと思います。

――来年のチームに向けて

人それぞれの立場できついこととか、悔しいこととか、苦しいこととか、やっぱりあると思います。ただ、その先になにがあるのかっていうのを考えてほしいですね。勝つためにここ(慶應)にいて、日本一になるためにここ(慶應)にみんな入っていると思うので、その苦しみはただの苦しみじゃないと思います。対抗戦という公式戦で勝って、大学選手権で勝つ、ということの意義を考えて、その苦しみをうまく乗り越えて楽しんで、最後みんなで笑ってほしいなと思います。いくらつらくても、めげずにやり切ってほしいです

FL川合秀和副将(総4・國學院久我山)

――試合を振り返って

課題であった規律、4年生を中心に声をかけあって守れたところがよかったと思います。

――後半に大きく流れが変わりました

前半はミスなどもあり、お互い我慢くらべだったと思うんですけど、後半はしっかり修正して、自分たちにフォーカスして自分たちのアタックを出して、ディフェンスでも「ライズ」や「指さしノミネート」などを全員で出していけたところがよかったです。

――セットプレーの出来については

(スターターの)安田と有賀、室星を中心にフロントローがうまくやってくれました。

――日吉での最後の試合となりました

しっかり勝てたということ。入替戦なので、来年も後輩たちが上のレベルでジュニア選手権を戦えることはいいことだなと思います。

FL内田尚輝(経4・慶應)

――率直なお気持ちを

最後の公式戦勝ててよかったです。

――4年生が多く出場しましたが、試合前はどんな話をしましたか

自分たちのやってきたことをやりきって、例えばディフェンスはすぐに立ち上がるといったことやノミネートをしっかりするということを確認しました。

――そのようなテーマは試合の中で達成されましたか

そうですね、意識してやれたことが結果につながったのではないかなと思います。

――あとを引き継ぐ後輩たちに向けて

ジュニア選手権を戦ってきた中で感じたこととして、この選手権の流れが上のトップチームの試合にも影響してくることが多いので一戦一戦しっかり全力を出して欲しいです。

SH上村龍舞(環4・國學院栃木)

――今日の試合を振り返って

4年生主体で出られて良かったです。

――ゲームプランは

慶應のプライドを見せつけることと、4年生主体だったので下級生に何かを残そうと思って臨みました。

――キックが良かった印象がありますが

上手くいったところもありますが、まだ成長できる部分はあると思います。

――前半はチャンスを多く作りながらミスが多かったです。後半ではどういうところを修正しましたか

前半は我慢比べでした。後半も最初から我慢して自分たちの得意なディフェンスから流れを持って来られるようにしました。

――来年のチームに向けて一言

対抗戦を通して一番重要なのは慶應のプライドというのが分かりました。しっかり下級生にそれを伝えたいです。帝京大との引退試合もあるのでそこでも何かを残せばいいなと思います。

SO鎌形正汰(商3・慶應)

――今日の試合を振り返って

まずは入替戦ということで結果が重要な試合でした。しっかりと勝つことができて良かったと思います。

――SOとしての出場が久々となった際、心がけたこと

天候のことなどもあるので、できる限りエリアマネジメントを意識していましたが、うまくエリアを取れない場面が多かったのでそこが反省点です。

――後半にトライを量産できた要因は

後半になるにつれてエリアマネジメントができたことと、FW(フォワード)陣がモールでしっかり取りきってくれたことが要因だと思います。前半からやっておけば良かったと思いました。

――今年を振り返って

今年はかなり多くの試合に出場させていただきましたし、自分自身も成長できたシーズンだと思います。来年はラストシーズンとなるので、結果が残せるよう頑張りたいと思います。

SO田中優太郎(経4・慶應)

――試合を振り返って

前半はエリアマネジメントに苦労していて、そこを変えようということで僕が入ったので、そこでしっかり修正できてよかったです。

――後半で試合の流れが変わりました。試合で目立ったキックに関していかがですか

2点(コンバージョンキック)の方はあんまりでしたが、フィールド上でのキックはよかったかなと思います。そこそこの手応えですね。

――その他のプレーについての手応えは

FWの1対1のところでいい勝負をしていたので、動かしてゲインを取れたのはよかったです。(試合の途中から)戦い方を変えられたのがよかったと思います。

――日吉での最後の試合となりました

10年間もいて、最後の試合で、トライもとれたので本当によかったです。22日の帝京との試合に向けてまた調整していきたいです。