文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦3ポイントシュート攻勢からすべてが好循環に水曜ナイトゲームで行われた川崎ブレイブサンダースと横浜ビー・コルセアーズの神奈川ダービー。今シーズンになってタフな戦いができるようになった横浜だが、絶好調の川崎の勢いに…

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

3ポイントシュート攻勢からすべてが好循環に

水曜ナイトゲームで行われた川崎ブレイブサンダースと横浜ビー・コルセアーズの神奈川ダービー。今シーズンになってタフな戦いができるようになった横浜だが、絶好調の川崎の勢いに飲み込まれ、一方的に押しまくられる展開となった。

ティップオフからの攻めでニック・ファジーカスが3ポイントシュートを沈め、ジョーダン・ヒースも続いたのが、川崎の怒涛の3ポイントシュート攻勢のスタートとなった。第1クォーターで7本中5本、第2クォーターには6本中6本と3ポイントシュートを高確率で決めて、前半で大量63得点を奪い、横浜を圧倒した。

川崎のシュートタッチが良かったのは間違いない。ただ、良いシュートチャンスを何度も作り出したことが、この爆発力の引き金になった。横浜のディフェンスは、マティアス・カルファニも含めてアウトサイドでパスを受けるビッグマンへのチェックが足りず、ワイドオープンの形を易々と許した。「序盤のディフェンスが機能せず、ペネトレイトからキックアウトで簡単に打たせてしまった」と、横浜の指揮官トーマス・ウィスマンは敗因を語る。

横浜にも良い時間帯がなかったわけではない。4-12と突き放されて早々にタイムアウトを取った後、3ポイントシュートのこぼれ球をレジナルド・ベクトンがダンクで押し込み、藤井祐眞がシュートを放った際に倒れて戻れない数的優位を逃さず田渡凌が速攻を決め、さらにはアキ・チェンバースが3ポイントシュートを沈めて11-12まで追い上げた。川崎のミスとも言えないようなわずかな綻びをきっかけに一気に押し戻す強さは、今シーズンの横浜は一味違うと感じさせるに十分なもの。それでも川崎は、大塚裕土、ヒース、カルファニと3ポイントシュートを立て続けに決めて突き放した。

鎌田裕也のハッスル「無我夢中でした」

そして鎌田裕也のハッスルが、川崎に決定的な流れを呼び込む。第1クォーター残り1分、リバウンドに飛びついた鎌田がベクトンとエドワード・モリスに負けずにボールに食らい付き、24秒バイオレーションをもぎ取る。佐藤賢次ヘッドコーチが「鎌田がダイブしてルーズボールを取ってくれた。ベンチから出た選手のハードワークが強みになっている」と、また篠山竜青も「あそこでマイボールにしたのが今日のポイント。あそこから勢いが出た」と称えた。

当の鎌田本人は、「流れが良くないところで投入されたので、身体を張ってプレーしようと思っていました。無我夢中でしたが、そういう球際の粘りはチーム全体でやっていることなので、しっかりできて良かった」と、泥臭くもチームを助ける値千金のプレーを振り返る。

そんな鎌田のハッスルから第2クォータの38-16という猛攻が生まれた。3ポイントシュートが当たりに当たったこともあるが、横浜が必死になって外のシュートを止めにくれば、その動きを冷静に見てインサイドを狙い、ゴール下のイージーシュートでも得点を重ねた。

相手のディフェンスを見切り、常に先手を打つ攻めが機能した。例えば篠山は得点わずか2に終わっているが、速いテンポを作り出して、ボールをシェアしてどの選手にも快適にプレーさせることでオフェンスを活性化させた。辻直人も2得点だが、相手がとにかく3ポイントシュートを警戒する状況、打つ素振りで相手を引き付けてはパスをさばいて攻撃にアクセントを加えた。

横浜から17のターンオーバーを誘発するなど、ディフェンスも試合を通じて締まっていた。第3クォーターは3ポイントシュート成功なしだったが、ロースコアの展開になってもディフェンスが機能することで16-15とこのクォーターを上回り、横浜に付け入る隙を与えなかった。

篠山竜青「成長している実感を楽しんでいます」

横浜も意地を見せようと奮闘したが、得点でもリバウンドでも存在感を見せていたベクトンが第4クォーター開始早々に足を痛めたことで万事休す。最終スコア97-70と大差が付いたが、スコア以上に内容には差があった。

この『神奈川ダービー』は、昨シーズンは川崎が6戦全勝。今シーズンも3試合すべてを川崎が勝っている。横浜のウィスマンヘッドコーチは「川崎とウチとを比べると差がある」と力の差を素直に認めながらも、「あと3回戦う中でこの差を埋めていきたい」と闘争心は消えていない。

一方、連勝を8に伸ばした川崎の勢いは、簡単には止まりそうにない。篠山は言う。「天皇杯に向けての12月だと賢次さんからは言われています。天皇杯の3試合を勝つために、この12月に少しでもステップアップする。課題であるターンオーバーであったりオフェンスリバウンドを取らせないことであったり、試合はもちろん練習から突き詰めてやっています。成長できる部分はまだまだたくさんあります。試合や練習で成長している実感があって、それを楽しんでいます」

12月11日のB1 9試合の結果
千葉84-47北海道
A東京74-72SR渋谷
川崎97-70横浜
新潟72-82富山
三遠61-66三河
名古屋D78-70島根
滋賀67-57大阪
宇都宮81-63秋田
琉球80-60京都