カンプノウで行なわれたスペインリーグ第16節、バルセロナ対マジョルカは、5-2でバルサの勝利に終わったが、内容にはスコア以上の開きがあった。相手が弱いのでなんとも言えないが、バルサのサッカーは徐々によくなっていることは確かなようだ。チャンピオンズリーグ(CL)でも優勝を狙えそうな上昇ムードが出てきた。

 アヤックスから加入したフレンキー・デ・ヨング、ようやくスタメン復帰を果たしたイヴァン・ラキティッチ、そしてセルヒオ・ブスケツの3人で組む中盤がなによりよかった。立ち上がりから、前線の3人(左からアントワーヌ・グリーズマン、ルイス・スアレス、リオネル・メッシ)の活躍を促すようなリズム感あるパス回しでゲームをコントロール。ボールロストが多いマジョルカの中盤と格の違いを見せつけた。

 先制点は前半7分。GKマルク・アンドレ・テア・シュテーゲンのキックを、巧みなランニングで抜けだしたグリーズマンが受けると、GKと1対1になり、鮮やかなチップキックで枠内に転がした。



バルセロナ戦にフル出場した久保建英(マジョルカ)

 久保建英がこの日初めて光ったのは、その前のプレーだった。右サイドでボールを受けると、少しカットインするようなアクションから、ゴール前へ切れ味鋭いクロスを送球。バルサの守備陣を慌てさせていた。マジョルカはその再スタートとなるゴールキックから失点を喫してしまったわけだ。その後もマジョルカで光るプレーを見せる選手は久保に限られただけに、皮肉な結果となった。

 ピッチに立つ選手は両軍合わせて22人。その中で目を惹く選手は12人いた。バルサの11人とマジョルカの1人(久保)だ。2ゴールをマークしたアンテ・ブディミールを加えても、マジョルカ側にはその場に相応しい選手は2人しかいなかった(左サイドハーフのダニ・ロドリゲス、そして後半交代で入ったクチョ・エルナンデスと、好セーブを見せたGKマノロ・レイナにもギリギリ合格点をつけられるが)。

 言い方を換えれば、久保はバルサのメンバーに入っても、やっていけそうな選手に見えた。一番よかった点は何かと言えば、相手と1対1で対峙したとき、必ずと言っていいほど勝負に出ようとしたことだ。

 データには173cm68kgとあるが、パッと見には、少年の面影を残した華奢な18歳にしか見えない。カンプノウという場の雰囲気も輪をかける。小ささはより強調されるのだ。普通なら後退を余儀なくされる局面に立たされても、久保は怯むどころか、逆に対峙する相手を睨めつけ、果敢にドリブルで突っかけた。周囲のサポートがまるで期待できない中で、である。

 そこに逞しさというか、可能性を見る気がした。相手がファウルでしか止められないシーンもしばしばで、その姿は痛快ですらあった。終盤までその勢いは維持された。後半41分には左サイドからドリブルで仕掛け、深い位置まで進入。対応に出たクレマン・ラングレを簡単に縦に外している。その右足の折り返しこそやや不正確で、GKテア・シュテーゲンに止められたが、最終盤でもチャレンジし、決定的に近いチャンスを作り出すドリブルは高評価に値した。

 繰り返すが、マジョルカには、ほかにこうした個人の力で突破できる選手はいない。久保がひとり抜けた技術を備えた頼りになる選手、相手に名前負けしていない選手であることは、このプレーからも一目瞭然になる。

 マジョルカにとって最大の問題は、必ずしもその久保にボールが集まるわけではないことだ。

 後半、右SBフラン・ゴメスにボールが渡ると、久保は右の高い位置で的確なポジションを取っていた。彼のところにボールが収まれば、明らかにチャンスが拡大すると思われるシーンがあった。ところが、ゴメスはそのボールを真ん中に返してしまった。久保の様子に目を凝らせば、明らかに不満げな様子で、両手を広げ、なぜパスを寄こさないんだと天を仰いだ。

 久保は違った。後半19分、右サイドでボールを受けると、ドリブルで突っかける素振りを見せながら、外を走ったそのフラン・ゴメスを使った。タイミングのいいショートパスを送り、フラン・ゴメスにクロスを上げさせている。それをブディミールが頭で決め、マジョルカの2点目を生んでいるのだが、マジョルカではその逆のケースは拝みにくい状況にある。

 この久保に対する排他的とも言える態度は、シーズン当初はもっと顕著だった。久保がたびたび日本代表に招集され、チームを離れていたこともその理由のひとつかもしれないが、あまりうまくない選手が、明らかにうまい選手を使おうとしない、チーム内に漂うその嫌らしい感じこそが、マジョルカが低迷する理由のひとつに映った。

 バルサ戦はまだマシな方だったが、このダメなマジョルカからいち早く抜け出すべきだと言いたくなる。とはいえ、レンタル元であるレアル・マドリードに戻ったところで、そのトップチームで多くの出場機会は望めそうもない。悩ましい問題である。

 マジョルカのビセンテ・モレーノ監督はこの現状をどう見ているのか。そして日本代表の森保一監督にもひと言、言いたくなる。毎度、毎度、久保を招集するな、と。10月の代表戦(モンゴル戦、タジキスタン戦)では、10日以上拘束して、試合に使ったのはわずか5分だった。こうした愚を2度と繰り返してはいけない。

 このバルサ戦は、久保が「日本の宝」であることがあらためて証明された一戦だった。バルサの一員に入っても十分やっていけそうな可能性を感じさせた。レアル・マドリードより、やはり古巣のバルサの方がプレースタイル的にマッチしているのではないか、とも思った。グリーズマンのポジションに入ってもやれるのではないか、と。

 カンプノウを埋めたファンは、バルサではなくレアル・マドリードを選択した久保に、最後までブーイングを浴びせ続けた。しかし、もし筆者がバルサファンだったら、憎しみと言うより、「ウチでやればよかったのに」という残念な思いを、そのブーイングに込めていたに違いない。この日の久保はそれほどよかった。可能性を示すことができた。日本代表、U-22の選手として活躍する姿より、スペインで活躍する姿にいっそう期待を寄せたくなった。日本の宝として順調に育ってほしいものである。