J1リーグは、7日に行なわれる首位横浜F・マリノス対2位FC東京の直接対決の結果で優勝が決定する。とは言え両者の勝ち点差は3。得失点差には7ポイントもの開きがある。FC東京に4点差以上の差で敗れない限り、横浜FMの優勝は揺るがない。 横浜…

 J1リーグは、7日に行なわれる首位横浜F・マリノス対2位FC東京の直接対決の結果で優勝が決定する。とは言え両者の勝ち点差は3。得失点差には7ポイントもの開きがある。FC東京に4点差以上の差で敗れない限り、横浜FMの優勝は揺るがない。

 横浜FMは昨季12位。まさに大躍進になる。他国のリーグでは、まずお目にかかることができない話だ。一定のヒエラルキーが構築されていないJリーグの混沌とした実態を再認識させられる。

 横浜FMがなぜこれほど急浮上することができたのか。その要因を探ろうとした時、真っ先に挙げられるのは、その攻撃的サッカーになる。他のチームとは一線を画すアンジェ・ポステコグルー監督の采配に目が向く。

 しかし、それだけだろうか。先週の土曜日に行なわれた横浜FM対川崎フロンターレ戦で浮き彫りになったのが、ピッチに立った外国人選手の数だ。



横浜F・マリノスを最終ラインで支えてきたチアゴ・マルチンス

 川崎のスタメンの外国人選手はチョン・ソンリョンわずか1人。後半、投入されたレアンドロ・ダミアンを含めても2人だったのに対し、横浜FMは外国人枠としてチアゴ・マルチンス、マルコス・ジュニオール、マテウス、エリキの4人が先発。さらに提携国(※)枠でティーラトンが、在日枠で朴一圭が先発している。

※タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール

 J1リーグの外国人の出場枠は、昨季まで3人+アジア枠1人。それに提携国の選手が加わる規定だった。外国人選手の登録は5人可能だったが、試合にエントリーできるのは3人まで。それが今シーズンからは出場可能な外国人は5人(登録は無制限でアジア枠は廃止)に増加。それに提携国枠および在日枠の選手が加わるという規定に大きく変更された。

 川崎にも登録された外国人選手は5人いた。チョン・ソンリョン、ジェジウ、カイオ・セザール、マギーニョ、レアンドロ・ダミアンである。しかし連覇した過去2年の実績をチーム強化の拠り所にしたのか、あるいは獲得した外国人の質に問題があったのか、彼らが揃って先発を飾ることはなかった。常時、枠を余したまま1年間を戦った。

 新しい時代の流れに対応できなかった。川崎が3連覇を逃した一番の理由だろう。ただ、これは川崎に限った話ではない。記録に目を通せば、多くのチームが外国人枠の変更に対応できていなかった実態が浮き彫りになる。

 前節(第33節)にスタメンで先発出場した外国人選手(外国人枠、提携国枠及び在日枠)の多い順に並べてみた。

6人=横浜FM

5人=北海道コンサドーレ札幌

4人=鹿島アントラーズ、清水エスパルス、名古屋グランパス

3人=セレッソ大阪

2人=浦和レッズ、ヴィッセル神戸、ベガルタ仙台、サンフレッチェ広島、ジュビロ磐田

1人=FC東京、川崎、大分トリニータ 、サガン鳥栖、ガンバ大阪

0人=湘南ベルマーレ、松本山雅

 交代出場を含めると以下のようになる。

6人=横浜FM、札幌

5人=鹿島、清水

4人=名古屋

3人=FC東京、神戸、C大阪、広島、磐田、仙台、鳥栖

2人=川崎、浦和、松本

1人=大分、G大阪

0人=湘南

 出場した外国人の数と成績が必ずしも一致するわけではないが、クラブが優勝を狙おうと、どれほど熱を入れているかを示すバロメーターにはなる。

 横浜FMの場合、シーズン半ばにFWのエジガル・ジュニオが故障。するとエリキとマテウスを獲得した。この補強が結果的には奏功した。横浜は第24節、名古屋に5-1で大勝すると、そこから現在まで10戦で勝ち点を28ポイント積み上げている。2人の加入はそれとほぼシンクロする。

 とりわけ左利きの左ウイング、マテウスが4-2-3-1の左に収まると、横浜FMの攻撃にはいっそう深みが増す。仲川輝人(右)とマテウスのそれぞれ大外を突くサイドアタックにより、攻撃の破壊力は飛躍的に上昇。チームは10試合で28点(1試合あたり2.8点)を記録している。それ以前の23試合は37点(1試合あたり1.6点)だったので、その差は一目瞭然だ。

 このマテウス、エリキに限らず、横浜FMの外国人選手は期待に応えた。今季から加入したGK朴一圭とCBチアゴ・マルチンスは、チームが攻撃的サッカーを謳う中で、最後尾で能力の高さを発揮。MVPは欧州のチャンピオンズリーグ級クラブでも通用しそうなチアゴ・マルチンスで決まりではないだろうか。

 3連覇を狙った川崎は、得点力アップを狙って獲得したレアンドロ・ダミアンがチームの戦い方と合わず、先発はここまで10試合。交代を含めても22試合にとどまっている。エスパルスに放出したエウシーニョの代わりに獲得した右SBマギーニョは、それ以上に出場時間が短かった。

 そのことはシーズン前半に判明していた。その後、手を打つ時間があったにもかかわらず、手を打たなかったことが、横浜FMとの差に直結したといってもいいだろう。

 外国人枠をうまく活用できなかったFC東京が最後まで粘れた理由は、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)に出場していなかったことと、エースのディエゴ・オリヴェイラがシーズンを通して大車輪の活躍を見せたことにある。ACLに出場する来季は、スタメンを張れる、助っ人と呼ぶに相応しい外国人をもう何人か獲得できないと、苦戦するかもしれない。

 外国人選手の活躍は、代表志向の強い日本にあって大きな話題になりにくい。アンドレス・イニエスタ(神戸)など、ネームバリューの高いごく一部の選手を除けば、軽視されがちだ。だが、サッカーのレベルアップ、サッカーそのものの娯楽度を追求すれば、不可欠な存在となる。来季は良質な外国人選手がより多く、Jリーグにやってくることを期待したい。