全日本学生選手権の激闘からはや3週間。伝統ある2校にのみ与えられた大学ハンドボール最後の舞台・早慶定期戦が、今年新設の早稲田アリーナで行われた。連勝記録を伸ばしたい早大もさることながら、関東学生秋季リーグ入替戦で早大との対戦機会を失った慶…

 全日本学生選手権の激闘からはや3週間。伝統ある2校にのみ与えられた大学ハンドボール最後の舞台・早慶定期戦が、今年新設の早稲田アリーナで行われた。連勝記録を伸ばしたい早大もさることながら、関東学生秋季リーグ入替戦で早大との対戦機会を失った慶大の因縁も深い。両者ともに負けられない試合は、その意地がぶつかり合う接戦の様相を呈した。前半こそ早大が4点リードで折り返すが、後半オフェンスがあくせくする間に慶大が猛追。一時は同点とされ、嫌な雰囲気が会場に漂った。しかし試合終盤、早大が再びリードを奪うと、最後は髙橋幸太(法4=東京・早大学院)のポストシュート、そして主将・清原秀介(商4=東京・早実)のサイドシュートで試合を決め勝利。見事に慶大を下し、引退試合で有終の美を飾った。

 メンバ―紹介が終わりボルテージも高まる中、前半30分が開始。選手たちの一挙手一投足に会場中の視線が向けられた。両者最初の1点が遠い中、慶大が先制点を挙げる。しかしすぐに追いつくと、そこからは早大が一歩抜け出した。ゴールはもちろんのこと、好プレーが飛び出す度にベンチの選手たちは立ち上がり拳を突き上げる。このチームで戦う最後の試合を楽しむ姿勢が印象的だった。しかし、宿敵相手に少し躍起になったか、普段なら決まるパスやシュートがなかなか決まらない。リードは保っていたがロースコアのまま試合が進んだ。こうした展開でひときわ目立ったのが、GK羽諸大雅(スポ4=東京・市川)だ。羽諸が広げた腕や脚は、慶大選手が放つシュートの球筋とことごとく一致。会場を驚かせるようなスーパーセーブを連発した。攻撃が滞る時間帯も堅守がさえ渡り前半が終了。スコア11-7でハーフタイムを迎えた。


羽諸は好セーブを連発し会場を盛り上げた

 突き放しにかかりたい後半だったが、序盤慶大に主導権を握られてしまう。開始早々スカイプレーを決められると波に乗る相手に連続失点を許した。前半同様目まぐるしく攻守が入れ替わる中、10分すぎについに追いつかれる。敵陣は喜びを爆発させ、響き渡る『若き血』は徐々に声量を増した。しかし、早大は雰囲気に飲まれていなかった。15-15で迎えた20分、青沼健太(社2=千葉・市川)がミドルを決めると、7人攻撃をいなした前田理玖(スポ3=福井・高志)、清原がガラ空きのゴールマウスへ連続得点。直後に宮國義志(社4=沖縄・浦添)もゴールを挙げ、再び4点差を付けた。また、髙橋、山下翔平(人4=石川・金沢桜丘)、小林春慶(スポ4=長野・屋代)ら、途中出場した4年生も応戦。髙橋はポストシュートを決めるなど、チームに流れを呼び戻した。極めつけはわずか1点リードで迎えた残り15秒からオフェンスだ。タイムアウトから試合が再開するとボールはフリーで逆サイドの清原のもとへ。お馴染みの位置から放たれた渾身のシュートは見事ゴールネットに突き刺さった。直後にブザーがなり早大は最終スコア21-19で勝利。ベンチの選手たちは両手を上げて清原に飛びついた。一年間、部員たちをまとめ上げてきた主将は、自身のゴールでチームの集大成に花を添えたのだった。


最後の1点を決めた清原(中央)に抱き着くワセダセブン

 ハンドボールをもっとアツく――。両校の部が何週間も前から告知を行ったこの試合には、こうした意味も込められていた。実際会場には大勢の観客が集まり、選手たちはマンツーマンディフェンスや7人攻撃など、決死のプレーでまさに試合をアツくしてくれた。何より試合後に4年生たちが浮かべた晴れやかな表情が、このラストゲームの充実度を物語っているだろう。そして4年生の背中を見てきた後輩たちは、すでに次の目標へ走り出そうとしている。鍛錬の冬を超え、どのようなチームを作り上げるだろうか。来春、新制ワセダセブンが再び躍動する姿に期待したい。


集合写真

(記事 小松純也、写真 杉原優人、栗林真子)

早慶定期戦
早大2111-7
10-12
19慶大
GK 羽諸大雅(スポ4=千葉・市川)
LW 前田理玖(スポ3=福井・高志)
LB 青沼健太(社2=千葉・昭和学院)
PV 中村祐貴(スポ3=北海道・富岡)
CB 宮國義志(社4=沖縄・浦添)
RB 山本慶(スポ3=長野・屋代)
RW 清原秀介(商4=東京・早実)