J2最終節が24日全国各地のスタジアムで開催された24日、J2第42節が各地で行われ、2019シーズン最終順位が確定した…

24日、J2第42節が各地で行われ、2019シーズン最終順位が確定した。千葉県千葉市のフクダ電子アリーナでは、特別な想いで第42節を終えた二人のフットボーラーがいることを記憶しておきたい。
「どんな個人プレーもチームプレーにはかなわない。勇人がみんなのお手本になることで、ここまで発展した。本当にありがとう(イビチャ・オシム氏)」
かつての指揮官、イビチャ・オシム氏から贈られたビデオメッセージ。大型ビジョンに向かって、深々と一礼したフットボーラー・佐藤勇人。千葉のユニフォーム姿は、これで見納めだ。
そして、ジェフユナイテッド市原千葉の指揮官・江尻篤彦氏もシーズンを終えた。
「江尻監督、今日で最後ですからね」
黄色いジェフグッズを身に纏った習志野市のチイ子さん(64歳)は、スタジアムまでへの道のりで感慨深げに言葉を残していた。チイ子さんは、千葉のサッカーを応援し続けて、およそ3年。千葉のJ1での時代やナビスコカップ連覇の快挙(現/ルヴァン杯)は、詳しく解らないという。
千葉対栃木の一戦が行われたフクダ電子アリーナ。スタジアムへの最寄駅となるJR蘇我駅では、応援フラッグにメッセージを書き込むファン・サポーターの姿やボランティアを交えた運営スタッフの姿があった。彼らは大きな声を張り上げ、慌ただしく、それぞれの役割を担っている。

JR蘇我駅の電光掲示板に表示された佐藤勇人選手のメッセージを見ながら「もう泣きそうになる」と話してくれたのは、葛飾区からやってきたミナさん。「まずはお疲れさまです、と言いたいですね」というメッセージに続いては、思わず本音も。
「40歳までは現役でいてくれたら。佐藤ツインズ、もうちょっと観たかったです」
この想いはミナさんだけでなく、多くのファン・サポーターが抱いたはずだ。

「本当に幸せでした」
試合後の引退セレモニーでは、晴れやかな表情をみせた佐藤勇人だったが自身が育った千葉のユース世代へ向けエールも忘れなかった。
「次は、君たちの番です」
2020シーズンの7番は、千葉のユース選手に託したいという想いもクラブに告げてあるようだ。試合後のミックスゾーンでは、クラブへの想いを語り尽くした。
17位でフィニッシュした2019シーズンを臨海時代からジェフを背負ってきた二人のフットボーラーは、静かに節目を迎えたことになる。栃木戦のハーフタイム、ロッカールームで江尻監督は選手たちにあるメッセージを投げかけていた。
「もっと楽しんでボールを動かしていこう」
ピッチの主役は選手である、この考えを最後の最後まで貫いた指揮官の言葉は深い。
「僕の持論は強制的に選手に何かをはめる、ではなく。選手自身がピッチでアイディアを出すと思ってるので。心も含めて」
同じ方向に向かって1年間戦う、チームのために。プロとして当たり前の想いも試合後の会見で改めて口にした。

J2残留をかけた21位の栃木をホームに迎えた千葉は、0-1でシーズンを終えた。一方の栃木は他会場の結果を受け、数年前の千葉のようにフクアリで奇跡の残留を決めている。
リーグ戦では、4勝9分2敗と相性がいい相手だったものの、あと一歩届かなかった。試合スタッツやデータからも、シーズンを通じて厳しい結果がも残った。厳しい現実、これが今の千葉である。
しかし、黄色く染まったホーム・フクアリに集まったファン・サポーター1万3358人は、90分を最後まで戦い続け、佐藤勇人選手、江尻篤彦監督の立つ、最後のピッチをいつものように見守った。
クラブ名が「ジェフ市原」だった頃のサポーターも多く訪れ、90分を噛み締めるように、スタジアムで同じ時間を過ごす。
全ては、地元クラブ・ジェフユナイテッド市原千葉のため、そして、千葉のチームスローガン「WIN BY ALL」に込められた「勝利」をもぎ取るため。朝から晩まで蘇我の街がサッカーで繋がったのだ。

千葉は、ジェフ市原時代に市原市五井(ごい)の臨海競技場がホームスタジアムだった。当時のクラブは、観客動員数が3千人を下回ったこともあり、大学生との練習試合に敗北するような苦しい時代も経験している。
後半22分、キャプテンマークをつけピッチに立った佐藤勇人は、過去の臨海時代よりもさらに過酷な環境とピッチに身を置き、現役生活を終えようとしていた。
その4分後となる後半26分、栃木・田代に先制ゴールを決められてしまう。残酷な風景とひやっとした空気が一瞬、スタジアムに立ち込めたが数秒後、黄色いサポーターたちは一斉に大きな声を出し続けた。自身も走り続け、双子の兄弟・佐藤寿人もピッチに登場し、走り続けた。
試合後に行われたセレモニーで、今伝えるべきことを伝えたフットボーラーとしての意地。
「力を貸してください。しっかりとクラブが進むべき道を作っていきたい。どんどんぶつかって魅力あるクラブにしていきたいと思ってます。本当に12歳からありがとうございました」
千葉での仕事は、まだまだ続きそうだと試合後のミックスゾーンで話していた姿も印象的だった。

雨の日も風の日も、雪が降っても、快晴のサッカー日和でも、どんな時も。蘇我のフクダ電子アリーナには、黄色いファン・サポーターの姿とジェフサッカーがある。きょう24日も、同じ応援の力とサッカーがあった。

けれど、ピッチ上で選手たちが楽しんでボールを動かしていた時間は、少なかったかもしれない。試合終了間際に背番号7番が振り抜いたシュートは、アタッキングサードで臨海魂をみせた。
その光景は、少なくとも筆者にとって楽しかった時間だ。臨海時代のジェフはピッチの内外で、勝っても負けても楽しい時間が沢山あったと記憶する。

臨海魂を継承するフットボーラーたちは、節目を迎え新たな道を歩み始める。かつてオシム氏が発言した言葉「休みから学ぶものは何も無い」、これぞまさに臨海魂だ。
様々な感情が入り混じり、勝負という厳しい世界に身を置いた人間にしかわからない経験や想いが痛いほど伝わってくる。優勝争いでもなく、昇格争いでもなく、逃れた降格危機がズシンとのしかかる、2019シーズンの終幕。
常に、個人の想いではなく、最後の最後までクラブを考え、自分自身を犠牲に、まっすぐに休まず走り続けたフットボーラーたちの花道は、決して華やかではない。
J53クラブがひしめく、Jリーグ。千葉にとっての最終節は、プロサッカーの厳しさと、現実に向き合う時間になった。だからこそ、2020シーズンになったら、このフクダ電子アリーナで沢山の人達の笑顔がみたい。
一つでも多く、勝利を。一つでも多くゴールを、そして一つでも多くのセーブを。スタジアムやテレビ、スマホやPCから、どこでもいつでもでもいい。一つでも多く、応援のチカラが必要だ。
ジェフ市原時代には、臨海不敗神話を成し遂げた。
当時の臨海魂を継承するフットボーラーは、まだまだ沢山いるはずだ。ファン・サポーターは、まだジェフの臨海魂を信じているし、フクアリ新時代の千葉魂がJリーグを席巻する日を、心から待ち望んでいる。彼らの合言葉は、一つ。
ジェフユナイテッド市原千葉スピリッツ WIN BY ALL!
取材・文 / スポーツブル編集部
画像協力 / ジェフユナイテッド千葉