これが、J1昇格のプレッシャーなのだろう。 J2第41節、大宮アルディージャはアルビレックス新潟に1-1で引き分けた。 前節終了時点で3位の大宮は、2位の横浜FCと勝ち点では73で並んでいた。順位を分けていたのは、わずかに得失点差1の違い…
これが、J1昇格のプレッシャーなのだろう。
J2第41節、大宮アルディージャはアルビレックス新潟に1-1で引き分けた。
前節終了時点で3位の大宮は、2位の横浜FCと勝ち点では73で並んでいた。順位を分けていたのは、わずかに得失点差1の違いだけだった。
しかし今節、大宮が引き分けに終わった一方で、横浜FCはファジアーノ岡山に1-0と勝利し、勝ち点3を加算。両者の順位は変わらぬまま、その差は勝ち点2に開いた。
つまりは、次の最終節で横浜FCが勝利すれば、大宮の結果に関係なく、J1自動昇格が決まる状況になったということだ。大宮にとっては、痛恨の引き分けと言っていいだろう。
大事な一戦で引き分けた大宮アルディージャ
大宮の高木琢也監督は、「昇格を狙うなかでのゲーム。言葉ひとつで言うと、残念」と語り、こう続けた。
「(勝てなかった)要因はふたつ。精神的な面と、そこから起こるプレーの硬さを見ていて感じた」
立ち上がりの内容は、それほど悪いものではなかった。相手DFラインと中盤との間に、クサビの縦パスが面白いように入り、そこから何度もペナルティーエリア周辺に攻め込んだ。
ところが、大宮の攻撃は、その先の思い切りに欠けた。高木監督の言葉を借りれば、「(新潟に)スキがあるなと見ていたが、そこを突けなかった」。せっかくチャンスになりかけても、「(自分たちで)局面での流れを壊すシーンが多かった」のである。
ゲームキャプテンを務めたMF三門雄大も、「高木さんは『ミスしてもいい』と言っているのに、(ミスが出るのを)気にし過ぎている」と言い、こう語る。
「(新潟は)カウンターがうまいチームなので、先に(得点を)取られたくない、(攻撃に)出ていって(局面を)ひっくり返されたくない、という意識が強くなった。おっかなびっくりやっていた」
それでも、いくつかあったチャンスのうち、どれかひとつでも得点につながっていれば、硬さもほぐれ、前半で一気に試合を決めることもできたかもしれない。
だが、0-0のままハーフタイムを迎えると、後半はカウンター狙いの新潟に、大宮もつき合ってしまう形でオープンな展開に。行ったり来たりの落ち着かない状況が繰り返されるなか、62分、先に失点したのは大宮だった。
結局その後、大宮はFWロビン・シモヴィッチを投入するなど反撃を試み、同じく途中出場のFW大前元紀がPKを決めたものの、逆転には至らなかった。
終盤、シモヴィッチの高さとパワーを生かした攻撃は、迫力があった。シンプルに攻め切ることで、相手に圧力をかけることができていた。これが初めからできていれば、試合は違った展開で進んだはずだが、相手のパンチを食らい、一度ダウンしてから目が覚めたのでは、同点に追いつくまでが精いっぱいだった。
「絶対に勝たなければいけない試合だった。悔しい」とはチームキャプテンの大前だが、昇格争いが佳境を迎えるなか、0-0に終わった前節の栃木SC戦に続く、痛恨の2戦連続ドローである。
高木監督は、栃木戦について「後手に回ることが多かった」と振り返り、「それが今日に響いているわけではないが……」としながらも、苦しむチームをこう評する。
「勝負がかかったところでの(精神的な)弱さは、このチームのウイーク(弱点)としてあった。それが、ここで出たのは残念。改善できていた感覚はあったが……、何とか次の試合では、そういうことがないようにしたい」
大宮は最終節、ツエーゲン金沢と敵地で対戦する。J1自動昇格のためには、まずは勝利が必須。そのうえで、横浜FCの結果を待つことになる。横浜FCが勝ってしまえば、成す術はない。
とはいえ、現時点で、すでに大宮の3位以内は確定している。仮に2位になれず、自動昇格を逃したとしても、J1参入プレーオフに昇格の可能性を残すことは決まっているということだ。
しかも、プレーオフに進出するJ2の4クラブのなかで最上位となる大宮は、J1の16位と対戦する最終決戦を除けば、残る2試合はホームで戦えるうえ、引き分けでも勝ち上がれるアドバンテージも手にできる。今季、ホームゲームで2敗しかしていない大宮にとっては、決して悲観的になる状況ではない。
「最終戦は絶対に勝ちたいが、それでプレーオフなら仕方がない。そうなったら、プレーオフを勝ち抜くだけ」
三門がそう語るとおりだ。
思えば、大宮は昨季のJ1参入プレーオフでも、東京ヴェルディに0-1で敗れている。ひとつの負けも許されないギリギリの戦いにおいて、大宮が精神面の不安を抱えているのは確かだろう。
しかし、だからこそ、最終節の戦いがより一層重要になる。
もちろん、わずか1週間で、根本からメンタリティを変えることは難しい。指揮官も「(1週間で)修正できるかは、正直わからない。修正するのか、あるいは精神面が求められるなら、そういう(精神面が強い)選手を多くピッチに立たせないといけないかもしれない」と、頭を悩ませる。
だが、そこで下手な試合をしてしまえば、その痛手はプレーオフにまで影響しかねない。それだけに、自動昇格の成否はともかく、ひとまず最終節で有終の美を飾ることが、J1昇格への絶対条件になるだろう。三門も「情けないゲーム、見ている人が何も感じないゲームはしたくない」と、語気を強める。
全42節の長丁場で争われるJ2も、最終節を残すのみ。大宮は今、技術や戦術だけでなく、精神面においても、J1昇格に足るだけの力を備えているかが問われている。