また1人、早大から栄光の歴史に名を刻む者が現れた。インカレ3日目は男子エペ、女子サーブル個人戦と男女フルーレの団体戦。男子エペ個人戦は金髙大乘(社1=香川・高松北)が初出場でのインカレ制覇を成し遂げた。早大勢としては実に38年ぶりの栄冠だ…

 また1人、早大から栄光の歴史に名を刻む者が現れた。インカレ3日目は男子エペ、女子サーブル個人戦と男女フルーレの団体戦。男子エペ個人戦は金髙大乘(社1=香川・高松北)が初出場でのインカレ制覇を成し遂げた。早大勢としては実に38年ぶりの栄冠だった。男子エペと同時に行われた女子サーブルは、村上万里亜(スポ2=愛媛・三島)が5位入賞と大健闘。一方でフルーレ団体は苦戦。男子フルーレは準々決勝で法大と対戦し、あと一歩及ばず。6位という結果に。女子は準決勝で敗戦し、インカレ4日目に行われる三位決定戦に臨むことになった。

★思い切りと周りの支えでつかんだ栄冠(男子エペ個人)

 プール戦を全勝で乗り越えた金髙は、トーナメント1回戦から苦戦を強いられた。ファイナルセットで3点のリードを追い上げられ、一本勝負に。ここを何とか取り切り、窮地を脱する。続く2回戦もセカンドセット終了時点で相手にリードを許し、苦しむも、「先輩の応援と気持ちで」(金髙)そこから4連取と逆転勝利を演じた。勝ち上がるにつれ調子を上げていった金髙。3回戦以降は苦戦していた流れから一転、持ち味のスピードと、思い切りの良さを武器に優位に試合を進めていく。ハイライトは準決勝。「中途半端では駄目だと思った」(金髙)と、思い切ったアタック、さらには豊富な運動量と剣さばきで相手を翻弄(ほんろう)。ファーストセットを9-5で勝ち越すと、セカンドセットは相手に思うような攻撃を許さず、15-8で勝利をつかんだ。そして決勝。相手は準決勝で一本勝負を制して勝ち上がってきた平野裕也(慶大4年)。金髙は相手の動きが止まったところに突きを決めていき、主導権を握る。思わぬ方向に試合が動いたのは、スコア4-0となったところ。点を奪われた平野が膝から崩れ落ちたのだ。決勝の大舞台にたどり着くまでに使い続けた足はもう限界だった。必死の治療もむなしく平野は棄権。金髙の不戦勝が決まり、学生の頂にたどり着いた。


決勝で攻撃を仕掛ける金髙(右)

 「後味は悪いんですけど、優勝できて嬉しい」。試合後に今大会を振り返った金髙。順当に行けば、準々決勝で関東学生選手権(関カレ)を制した、安雅人(スポ4=茨城・水戸一)との同士討ちに挑む予定だった。その安は力を出し切れないままに3回戦で姿を消し、平野との決勝戦も15点を取り切らずに勝利と、幸運にも恵まれた中でつかんだ優勝だった。もちろん優勝できた要因は運だけではない。金髙は思い切りの良さに代表される「1年生の若さ」、そしてベンチコーチに入った川村京太(スポ1=東京・東亜学園)のアドバイス、1回戦から金髙を鼓舞し続けた仲間の声援といった、周りの支えが優勝への原動力になったと振り返る。ルーキーイヤー最後の個人戦を優勝で締めくくった金髙。金メダルを首にかけた早大フェンサーは、今後どこまで実力を、成績を伸ばしていけるのか。今から楽しみだ。

★冷静さ失わず、つかんだ5位(女子サーブル個人)

 昨年はプール戦での敗退と、トーナメントの舞台にも立てなかった村上万。「勝とう勝とうと思っていなかったのが逆に良かった」(村上万)と割り切って臨んだ今年のプール戦は、4勝1敗と実力を出し切った。続くトーナメント戦。1回戦、2回戦ともに「苦手意識がある」(村上万)と語る左利きの選手との対戦に挑むことに。だが冷静にプレーを分析できる余裕が、この日の村上万にはあった。1回戦は前半にリードを作ると、途中で6連続ポイントを献上しながらも、切り替えて試合を決めきった。2回戦は序盤から一進一退の攻防を繰り広げるも、終盤にはフットワークを生かし、立ち合いを制する。一気に得点を取り切った村上万はトーナメント2勝の目標を達成した。その後行われた準々決勝は、自分のペースで攻撃をすることができないまま、敗戦。だが、これまでの個人戦の結果を鑑みれば、大躍進といえる結果を残した。


準々決勝での村上万(右)

 昨年のプール戦敗退から一気に飛躍を遂げた村上万。好成績の要因は「焦らずに後は自分がやるだけ」(村上万)といったメンタルの成長だ。試合の中で冷静さを失わない強さを身に着けた。来年には女子サーブルを率いる立場になる村上万。今年最後の個人戦で、来年へのいい収穫を得ることができた。インカレ最終日には控える団体戦では「盛り上げることが大事」と語る。ベンチワークから、団体戦も上位進出を目指す。

★あと一歩届かず…。悔しさ残る準々決勝(男子フルーレ団体)

 男子フルーレは初戦で関学大との対戦に挑んだ。2周り目の竹田陸人(社5=神奈川・法政二)がアタックを次々に決め逆転する。序盤で試合の流れをつかんだ早大は、その後も順調に得点を重ねていき、10点以上の差をつけ白星を収めた。迎えた準々決勝は法大と対峙(たいじ)。関カレを優勝した強豪だが、この日は日本代表メンバーが不在だった。試合は竹田、ジェット・ン(国1=シンガポール・メリディアンジュニアカレッジ)が、相手の攻撃に阻まれ、ビハインドを背負ってのスタート。その後も5点差以内で追いかける展開が続くが、なかなか追い付くことができない。迎えた8周り目。ピストに登場した川村は「点を欲しがりすぎないように我慢してプレーした」と、相手の動きを見ながら揺さぶっていく。焦ることなく試合を進め、1点差まで詰め寄り、竹田に勝負の行方を託すことに。竹田は気持ちの入ったプレーで、すぐさま同点に追いつくと、そこからは点の取り合い。竹田が決めれば、相手選手もすぐさま取り返す。一点ごとに歓声を上げる両ベンチ。そしてスコアは44―44と一本勝負に。しかし、最後は竹田のペースで攻めきれないまま、相手選手に決められた。白星まであと1点。「チャンスだったからこそ悔しい気持ちが大きい」(川村)結果だった。


一本勝負を落とし、悔しい表情を見せる竹田

 竹田と中埜匡貴(創理4=東京・早大学院)にとっては最後のインカレとなったが、物足りない結果に終わってしまった。一日を通じて安定感のあるプレーを披露した川村は「力不足を痛感した」と語る。粘りをみせたが、体感した実力の差。来年に向けて、早大フルーレの現在地を思い知ったインカレだった。このチームで挑む試合も来週の早慶戦、そして全日本選手権(全日本)と残り少ない。最後まで悔いのない戦いをすることはできるだろうか。

(記事 小原央、写真 青柳香穂、本野日向子)

※フェンシングの団体戦は3人、または4人の選手が交代で出場し、1試合当たり3分という持ち時間内で争う。あるいは3分以内にどちらかが先に5得点先取すると、そこで次の選手に交替となる。最終的には9試合戦い、45点を先取、または持ち時間が終了した場合は得点が高い方が勝ちとなる。

※フルーレ:頭・両足・両腕を除いた胴体部への突きのみが得点となる。 両者がほぼ同時に突いた場合は、どちらの攻撃が有効だったかを主審が判定する。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は攻撃を防御してから攻撃しなければならない。

※エペ:全身が有効面となる上に、両選手が同時突きをすると両者にポイントが与えられる。より慎重な攻め方が求められるため、時として両者が睨み合ったまま時間が過ぎることは稀な話ではない。

※サーブル:両腕も含む上半身への突きと切り(剣先ではなく剣の胴部分で相手の体に触れること)が得点となる。また、先に攻撃をした方が「攻撃権」を持ち、防御側は相手の攻撃を防御してから攻撃しなければならない。この攻撃権の奪い合いにより、両選手はピスト上を常に前後に往復し合うため、サーブルは3種目の中で最も全身運動が激しい種目だと言える。

結果

▽男子エペ個人

金髙大乘(社1=香川・高松北) 優勝

1回戦:◯11-10 荒金泰成(明大)

2回戦:◯15-12 甘粕稔大(日大)

3回戦:◯15-7 二ノ宮浩輔(同大)

準々決勝:◯15-7 菊池正太郎(専大)

準決勝:◯15-6 ウェディシンハ・ジュン(立命大)

決勝:◯4-0(棄権) 平野裕也(慶大)

安雅人(スポ4=茨城・水戸一) 29位

1回戦:◯15-7 野口舞人(朝日大)

2回戦:●13-15 菊池正太郎(専大)

十河昌也(スポ4=香川・三本松) 32位

1回戦:◯15-7 濱中雅也(愛知工大)

2回戦:●6-15 清水雄大(慶大)

伊藤悠貴(スポ2=三重・津) 42位

1回戦:●7-15 平松良規(日大)

▽女子サーブル個人

村上万里亜(スポ2=愛媛・三島) 5位

2回戦:◯15-11 尾里雪葉(日体大)

3回戦:◯15-11 佐野佑衣(朝日大)

準々決勝:●9-15 月野敬子(法大)

木村結(社4=山口・柳井) 11位

2回戦:◯15-9 浅川由里(中京大)

3回戦:●7-15 林秋香(日大)

齊藤里羅子(スポ4=山形東) 22位

2回戦:●6-15 山村直緒(朝日大)

黒田ほのか(スポ1=香川・三本松) 27位

2回戦:●14-15 雨田由香(中大)

▽男子フルーレ団体

早大[竹田陸人(社5=神奈川・法政二)、中埜匡貴(創理4=東京・早大学院)、川村京太(スポ1=東京・東亜学園)、ジェット・ン(国1=シンガポール・メリディアンジュニアカレッジ)] 6位

2回戦:◯45-29 関学大
準々決勝:●44-45 法大




コメント

村上万里亜(スポ2=愛媛・三島)

――5位となりましたが今のお気持ちは

正直にすごく嬉しいです。目標はトーナメント戦で2回勝つことだったので、目標が達成出来たということがすごく嬉しいです。

――対談時に、プール戦を突破したいと語っていたが、今日のプール戦を突破してからのトーナメント戦への流れはいかがでしたか

とりあえずヘマをしないことが目標だったんですけど、落ち着いてプール戦を戦うことができて、焦るというよりか落ち着いてできていました。勝とう勝とうと思っていなかったのが逆に良かったのかもしれないと思っています。自分ができること、この人にはこの技が通用しそうだなーとかを考えながら冷静に試合ができました。

――気持ちがコントロールできていたのですか

勝たなきゃ勝たなきゃというのではなくて、良くないかもしれないんですが、別に勝とうと思わずに、とりあえずできたらいいやって思っちゃって、そしたら体の力が抜けて、上手にできました。

――トーナメント戦の初戦では、相手に追い上げられる場面もありましたが振り返っていかがですか

左利きがあまり得意ではなくて、苦手意識があるというか、追い上げられた時に焦ったてしまったんですけど、一回マスクをとって考えた時に、先輩やベンチについてくださってる方に、全然負けていないから、焦らずに後は自分がやるだけみたいなことを言ってもらえたので、ベンチがいたから落ち着いてまた立て直せたと思います。

――2回戦はいかがでししたか

2回戦の相手も左利きだったんですけど、動きでは負けない自信がありました。途中で焦っちゃった時もあったのですが、自分の取れていた点数をどうやって取って行ったのかを思い出したら、結構最後は楽に取れたかなと思います。

――左利き選手の対策をしたりとかはしますか

全然です。大学でも右利きばかりで、コーチに弘瀬智子(平26スポ卒=高知・追手前)先輩が唯一左利きで、週1、2くらいでファイティングを一緒にやっています。特に対策とかはしてないです。

――準々決勝で勝ち切れなかった要因は

最初は結構決めていて、自分から動けてアクションを起こしたりとか、相手の弱点なんだろうなというのを結構つかめていました。でも、後半に入ってからリアクションになってしまったので、出遅れてしまったりとか、自分の強みの立会いのところを潰されてしまうと、結構わーってなって、最後パパパーって取られてしまった感じでした。

――団体戦への意気込みをお願いします。

とりあえず盛り上げることが大事であると思ったので、ベンチについてくださる方が盛り上げてくださってるから自分が盛り上げて試合ができたので、盛り上げることが一番です。目標は低い方が、自分にとってやりやすくて、上を目指して自分が焦らないようにするのが一番です。

金髙大乘(社1=香川・高松北)

――今日の優勝という結果をどう捉えていますか

正直最初は優勝を狙っていたわけではないので、予選を全勝で勝てて、後味は悪いんですけど、優勝できて嬉しい感じですかね。

――喜びと安堵のどちらの気持ちが強いですか

大学のインターハイ(高校総体)みたいな感じじゃないですか。インターハイの時すごいプレッシャー感じて、優勝できてうれしかったんですよ、狙っていたので。今回は安(雅人、スポ3=茨城・水戸一)先輩とか当たる予定だったんですけど、途中で負けちゃって、最後も不戦勝と本当に後味が悪いんですけど、嬉しいっちゃ、嬉しいです。

――トーナメント初戦は一本勝負だったと思うのですが、振り返って

その子とは予選で当たっていて、その時に歯を欠けられて。絶対に倒すと思っていて、やってたんですけど、3セット目で3点差ついていたのですが、追い付かれちゃって。最後の一本はベンチにいた同期だったり、応援してくれた人たちおかげで突けました。気持ちで突けたという感じでしたね。

――2回戦も途中まで劣勢だったと思うのですが、逆転できた要因は

そこも気持ちですね。1年生の若さというかベンチの同期も1年でアドバイスは的確だし、先輩方の応援もあったので、応援と気持ちで乗り切りましたね。

――3回戦、準々決勝は一転して主導権を握りつづけました。それができたのはなぜですか

3回戦の相手はもともと知っている二ノ宮(浩輔、同大3年)さんという方で。身長の高い相手で、中途半端な距離だとやられるので行くなら行くって思い切って行けたのは勝因かなと思いますね。思い切りが良かったのかなと思います。準々決勝の菊池(正太郎、専大1年)選手も一緒に普段からやっていて、安先輩を倒していたので、侮れないなと思っていました。菊池は守るのが得意なので、僕は攻めずに守り守りでやっていったらいつの間にか点差が開いていたという感じでしたね。

――準決勝を振り返って

ウェディシンハ・ジュン(立命大3年)さんもフレンチ(やや長いリーチを持った剣)で、ちょっとリーチが長めの人なので、中途半端では駄目だと思ったので、行くところはいくという思い切りの良さが、また光ったかなと思います

――大会全体を通して、徐々に調子を上げていったということでしょうか

そうだと思います。

――団体戦に向けて意気込みをお願いします

正直、優勝しか狙っていないので、先輩と協力しつつ、優勝目指して頑張ります。

川村京太(スポ1=東京・東亜学園)

――準々決勝敗退となりましたが今のお気持ちは

ナショナルチームのメンバーの2人がいない法大に対して、チャンスだったからこそ悔しい気持ちが大きいです。

――法大戦に臨むに当たって、意識していたことはありましたか

自分のプレーで意識していたことは、大量得点できる相手ではないと思ったので、少しでも一点でもプラスにして次に回せるように心がけました。点を欲しがりすぎないように我慢してプレーしました。

――法大戦は振り返っていかがですか

我慢して少しでもプラスにして回すということはできたのですが、それ以前に圧倒的な技術力の差がありました。能力があれば自分が逆転して次に回すことができたと思っていて、力不足を痛感しています。

――ベンチでは積極的に選手に声かけしている姿が見られましたが

最後の方に、せってくるとベンチワークが大事になってくるので、とりあえずなんでもいいから、後悔のないように声を出そうと思いました。

――全日本選手権団体に向けての意気込みをお願いします。

今年最後の団体戦になるので、悔いのないようにしたいです。来年は自分がまとめなければならない立ち場になるので、上を目指して頑張りたいです。