またしても、決勝トーナメント1回戦の壁を破ることはできなかった。

 日本はアジア予選で敗退した2015年大会を除き、2013年、2017年、そして今年と、出場したU-17ワールドカップで3大会連続となるベスト16敗退。FW中島翔哉、南野拓実らを擁し、2011年大会で過去最高タイのベスト8に進出して以降、その成績に届かずにいる。

 今大会でも、グループリーグを2勝1分けの無敗で首位通過し、久しぶりのベスト8進出、さらには日本がまだ成し遂げたことのないベスト4進出へ、いよいよチャンス到来かに思われた。

 しかし、決勝トーナメント1回戦で北中米カリブ海王者のメキシコに0-2と敗れ、結局は”定位置”にとどまった。グループリーグ初戦では、優勝候補のオランダを3-0と一蹴し、センセーショナルなスタートを切っていたことを思えば、尻すぼみの感が強くなる。



メキシコに敗れ、がっくりと肩を落とすU-17日本代表の面々

 とはいえ、全4試合を観戦した印象は、決してネガティブなものではなかった。むしろ、日本の育成・強化は、確実に成果を上げている。そんなことを感じられた大会ではなかったかと思う。

 たとえば、パススピード。オランダ戦での日本の2点目は、FW西川潤からFW若月大和へのピンポイントパスが決め手となったが、このパスがスゴかった。

 西川は中盤でボールを受けると前を向き、ドリブルで前進。若月がふたりの相手DFの間に入った瞬間を見逃さず、若月に合わせる、というより、”若月の足にぶつける”ような強いパスを出した。

 受け手がコントロールしやすいパスを、”優しいパス”と表現することがあるが、このパスは明らかに優しくなかった。

 ところが、若月はこれを難なくコントロールしてDFの裏へ抜け出すと、冷静にGKの動きを見て、ゴール左へシュートを流し込んだ。

 西川の強くて正確なパスと、若月の完璧なボールコントロール。オランダDFを無力化した一連のプレーは、間違いなくワールドクラスだった。実際、現地で会ったイングランドのエージェントは、彼らふたりを絶賛していたが、こんなゴールを見せられれば、当然のことだろう。

 また、選手の大型化も、着実に進んでいると感じられた要素のひとつである。

 たしかに日本の登録メンバー21名を見ると、身長160cm台の選手が5名、150cm台が1名と、全体的に見れば、小柄な選手は多い。

 だが、できればサイズがほしいポジション、すなわち、センターバックには180cm台で、しかも、足元の技術にも長けた選手が並んでいた。

 全4試合に先発フル出場したDF鈴木海音は、身長182cmでありながら、俊敏でスピード対応にも優れているうえ、攻撃の組み立て時には自らボールを持ち出し、正確なフィードを武器にする。高い位置にポジションを取ったサイドバックへ出す、角度のついたパスは、Jリーグでもそうはお目にかかれないほど難易度の高いものだった。

 身長183cmのDF村上陽介にしても、このチームでは”空中戦のスペシャリスト”といった位置づけの選手だったが、そんな選手でも、このレベルで見ても鈍重な印象は受けなかった。

 かつては、この年代でセンターバックを選ぶとなると、どうしても170cm台の選手に頼らざるを得なかった。日本人選手、まして身体的に成長途上の選手では、180cmを超えると、どうしても俊敏性やボール扱いの技術に欠ける場合が多かったからだ。

 しかし、鈴木海や村上を見ていると、間違いなく状況は変わってきている。そんなことを感じることができた。

 ただし、いかに大型化が進もうとも、日本が世界で戦っていくためには、やはり日本の特長を武器にした戦いは不可欠だ。

「相手と同じ土俵で(戦って)負けるな、という気持ちを持ちつつも、同じ土俵に上がったらやられる、というのは、ここに来て体験しないとわからない」

 U-17日本代表を率いる森山佳郎監督は大会中、そんな表現をしていたが、まさにそのとおりだろう。パワーやスピードという部分で、できるだけ負けたくはないが、そこで勝負してもかなわない。「フィジカルが敗因という試合をしなくていいように」(森山監督)、やはりチーム、あるいはグループで組織的に戦うことが求められる。

 その点においても、日本はかなりの手応えを得られたのではないだろうか。森山監督の言葉を借りれば、「距離感よくボールを動かしながら、連動してゴールへ向かっていく」という点において、日本は今大会でも際立っていた。

 ある程度時間をかけてチーム作りをしているとはいえ、日常的に活動しているクラブや高校のチームと比べれば、代表チームは所詮、”寄せ集め”。それでいて、攻守両面において、これだけ規律を持って組織的に戦えるのは、戦術理解という点で全体のベースが上がってきているからだろう。

 しかし、こうしてあらためて振り返ってみても、決して小さくはない手応えが感じられた大会だったからこそ、やはり最後のメキシコ戦だけが悔やまれる。

 日本は、試合直前の突然の豪雨の影響があったのか、立ち上がりに集中を欠いた。MF藤田譲瑠チマが「最初の20分で、ちょっと緩く(試合に)入っちゃった」と振り返るとおりだ。

 それでもその後は、「ボールを持てて、何回かいい形、いいリズムで攻撃できた」と藤田。後半なかば以降は、決定機と呼べるチャンスも何度か作っている。

 それだけに、CKから失った1点目はともかく、2点目を奪われたのが痛かった。GK鈴木彩艶も、「0-1だったら全然チャンスがあったと思うが、2点目を食らって、難しいゲームになってしまった」と認める。

 その2点目というのは、メキシコの背番号9、FWサンチアゴ・ムニョスに単独でペナルティーエリア付近まで持ち込まれて決められたものだが、鈴木海曰く、「(ムニョスへの)1本目の相手のパスで潰せたと思う。あそこで簡単に前を向かれてしまった」のが、要因となっている。森山監督が語る。

「その前に(ムニョスにパスが通ったところで)3人で囲みながら、球際のところで取れなかった。(相手ひとりに対し)ふたりいたら取り切ってしまいたいのに、3人いたにもかかわらず、それが漏れてしまった」

 日本は数的有利の状況を作っていたにもかかわらず、誰がボールを奪いにいくのか、誰がカバーするのかがはっきりせず、ズルズルと相手の前進を許した結果が、試合を決定づける2失点目につながったのである。

 今回のチームは、率直に言って、いいチームだったが、パンチには欠けた。西川、若月の2トップはかなりのインパクトを残したが、裏を返せば、彼らを欠くと、得点の可能性はかなり薄れたということでもある。

 前述したように、チーム全体としていいポジションを取り、角度をつけたパスをつないで相手ゴールへ向かうことはできていたが、最後の決め手を生み出す選手は限られた。西川、若月以外では、テクニックのあるMF成岡輝瑠、強烈な左足のキックを持つMF中野桂太くらいだろうか。

 別に、ケチをつけようというのではない。優れたタレントがズラリとそろう世代など、そうそうあるものではないし、むしろ、そうでない世代こそ、日本が進むべき道を示す絶好の機会を得ているとも言える。そして実際、このチームの魅力は、グループリーグ首位通過という結果で、存分に発揮された。

 しかしだからこそ、組織で対抗する準備ができていながらの失点で敗れたことを、もったいなく思うのだ。

 大会全体を振り返れば、相応の成果が感じられた分だけ、その思いはより一層強くなる。