「ずっと笑ってましたよね」 試合が終わってから、応援に駆けつけてくれた後輩に会った時にそう声をかけられた。帰ってから見た配信のアーカイブでも「楽しんでそう」といったコメントがちらほらあった。 −−実際、1日中ずっと楽しかった。 1…
「ずっと笑ってましたよね」
試合が終わってから、応援に駆けつけてくれた後輩に会った時にそう声をかけられた。帰ってから見た配信のアーカイブでも「楽しんでそう」といったコメントがちらほらあった。
−−実際、1日中ずっと楽しかった。
11月3日に開幕したeBASEBALLプロリーグ。有料席は完売、立ち見の方も多く、昨年以上の盛り上がりを見せていた。試合前には各チームの紹介VTRが流れ、試合中の画面はリアルタイムで選手の打率やナイスピッチ率などが表示されていたり、応援などのツイートが画面下に表示されたりと演出面もかなりパワーアップしていた。
昨年は羨ましいと思いながら見ていることしかできなかったプロリーグの舞台。ようやくその舞台に立つことができるということもあって、会場に着いてから何かスイッチが入ったのだと思う。自分で抑えられないくらいに気分が高揚していた。
アーカイブで自分の試合を見返しても、ずっと楽しそうにしていたのが分かった。試合中の選手にはピンマイクが付けられているので、配信で選手の声が聞こえるようになっているのだが、まるで友達と一緒に楽しんでゲームをしているように映った。
自分で配信を見返していて思わず笑ってしまったのが、代打でスイッチヒッターのアルモンテ選手を起用したところだ。パワプロでスイッチヒッターの場合、タイムをかけた時にLボタンとRボタンを押すことで打席を左と右に変えることができる。対戦相手の渡邉(プレイヤーネーム:tell)選手が投手交代の際にとったタイムの時にRボタンに指が触れて打席が変わったのを見て、初めて相手のタイム中に打席を変えられることに気づき、それを後ろにいた脇(みぞれん)選手に楽しげに話しかけていたのが可笑しかった。
その時の状況は1試合5イニング内の4回裏、0-0の2死1,2塁で先制のチャンスの場面。緊迫した状況であれだけ楽しげな表情を浮かべられる選手は他にいないと思う。もちろん緊張していなかったわけではなかったが、それを楽しいという感情が上回ったのが勝利につながったのかもしれない。
そして、チームメイトの存在もとても心強かった。特に先制した4回裏、先頭の藤井選手がセンター前ヒットで出塁したところで、脇(みぞれん)選手が「代走」と一声かけてくれた。藤井選手のゲーム内能力で走力はBと高めの能力に設定されている。そのため、出塁した時は代走を出すということは頭になかった。しかしベンチには走力Aと藤井選手を上回る能力が設定されている伊藤選手が控えていた。加えて伊藤選手にはベースランニングが通常の選手よりも速くなる特殊能力が設定されている。そうか、代走か…。声をかけてくれた脇(みぞれん)選手に「ナイスアイディア!」と返して伊藤選手を代走に送った。
これが功を奏して、アルモンテ選手のセンター前ヒットでの先制点につながった。ホームはギリギリのタイミングだったが、おそらくランナーが伊藤選手以外ならアウトだったと思う。チームでもぎ取った決勝点といっても過言ではないだろう。
チーム全体で見れば1勝2敗の負け越し。残念ながら敗れてしまった脇(みぞれん)選手と岡久(デジうち)選手も昨年の優勝チーム相手に善戦できていたし、チーム全体での戦い方も見えてきたので必ず巻き返せると信じている。今回は出番のなかった新井(みかん)選手もこれからの戦いぶりが楽しみだ。第2節以降の戦いにも注目してもらいたい。
文・菅原翔太(eBASEBALLプロリーグ2019シーズン中日ドラゴンズ代表選手)