第41回皇后杯全日本女子選手権早大31-12-01吉備国際大Charme岡山高梁【得点】(早大)31’高橋雛、59’松本茉奈加、90+3’蔵田あかり(吉備国際大)17’鵜木瑠南 女子サッカー真の日本一を決める皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)…

第41回皇后杯全日本女子選手権
早大1-1
2-0
吉備国際大Charme岡山高梁
【得点】
(早大)31’高橋雛、59’松本茉奈加、90+3’蔵田あかり
(吉備国際大)17’鵜木瑠南

 女子サッカー真の日本一を決める皇后杯全日本女子選手権(皇后杯)がついに開幕。今大会『ベスト8』を目標に掲げるア式蹴球部女子(ア女)は吉備国際大Charme岡山高梁(吉備国際大)と対戦した。前半ミスから先制されるも、FW高橋雛(社1=兵庫・日ノ本学園)のゴールで同点に。後半に入りシステムを変更したア女は徐々に主導権を握ると、トップにポジションを移したMF松本茉奈加(スポ3=東京・十文字)が勝ち越しゴールを決める。さらに終了間際にはMF蔵田あかり(スポ2=東京・十文字)がダメ押し弾。結果3-1で吉備国際大を下し、ア女は2回戦進出を決めた。

 ア女は開始早々、ゴールキックのセカンドボールを拾ったFW土居明日香(スポ4=ちふれASエルフェン埼玉)がファーストシュートを放つもゴール左へ外れる。5分にはMF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)のサイドチェンジから松本が仕掛けるなど、積極的にゴールを狙う。しかしその後は吉備国際大に裏抜けからシュートを許す場面が続くと、17分DF鵜木瑠南(1年)にMF村上真帆(スポ3=東京・十文字)のパスをカットされ、そのままミドルシュートをゴール左下に決められ先制点を献上してしまった。それでも「あまりスムーズにビルドアップができていなかったので、ボールの回し方と相手の狙いどころについて話した」(高瀬)と、ア女は失点後スタメン全員で戦術を確認。すると26分、村上のボール奪取からDF中田有紀(スポ4=兵庫・日ノ本学園)が右足で狙う。これは惜しくもクロスバーに嫌われたものの、31分、最終ラインからの縦パスを受けた松本が中央突破し、右サイドMF阪本未周(スポ3=大阪・大商学園)へ展開。阪本はダイレクトでエリア内へクロスを入れると、走り込んだ高橋が「みちさん(阪本)からのボールもタイミングもすごくよかったので、あとは決めるだけでした」と冷静にネットを揺らした。同点に追いついた直後、再び高橋がシュートを放つなど攻勢を強めるア女。しかしなかなか決定機をつくれないでいると、吉備国際大の反撃に遭う。40分、FKからエリア内でボールをキープされフリーでシュートを許したが、これは大きく枠外に。44分にはゴール前に縦パスを入れられるも、GK川端涼朱(スポ3=東京・十文字)が素早く飛び出しセーブ。難を逃れたものの、ア女はやや押され気味に前半を終えた。


勝ち越しゴールを決めた松本。後半からはトップとして躍動した

 流れを変えたいア女は後半、土居に代えて蔵田を投入。さらに松本をトップの位置に上げ、スピードのある選手を生かしながら吉備国際大の守備陣のバランスを崩しにかかる。しかしリズムをつかめないでいると52分、吉備国際大にCKを与える。ファーサイドからの折り返しを川端が弾き、松本がラインギリギリのところでクリアするも、そのこぼれ球を拾われMF阿部楓子(2年)にフリーでシュートを許す。万事休すかと思われたが、これはわずかにゴール左へと外れ、なんとかピンチを脱した。ア女は57分、村上のロブパスに反応した蔵田がミドルシュートを放ち反撃ののろしを上げると、ついにスコアが動く。59分、DF小林菜々子(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)の縦パスを高橋がうまく収め、松本に預ける。「決めるという気持ちでドリブルを開始した」と松本は相手DFを振り切りエリア内に侵入すると、左足でグラウンダー性のシュートをゴール右下に決めてみせた。勝ち越しに成功したア女は、その後も両サイドをうまく使いながら主導権を握る。残り時間が少なくなっても、「リーグ戦とは違って、必ず勝ち切らなければいけなかったので、普段よりもさらに点を取りにいく意欲はみんな強く持っていた」(高瀬)と最後まで攻撃の手を緩めない。するとアディショナルタイム、小林のロブパスを受けた松本が右サイドからエリア内へクロスを供給。これに高橋が飛び込み、こぼれたところを蔵田が押し込みリードを広げた。終盤は吉備国際大に思うような攻撃をさせず結果3-1で快勝。ア女は逆転勝ちで、なでしこリーグ1部に所属する日体大FIELDS横浜の待つ2回戦へと駒を進めた。


シュートを狙う蔵田。アディショナルタイムには貴重なダメ押しゴールを奪った

 ミスから先制を許したものの、見事な修正力で逆転勝ちを収めたア女。関東大学女子リーグ戦(関カレ)第8節同様、FW山田仁衣奈(スポ4=大阪・大商学園)、FW廣澤真穂(スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)、DF船木和夏(スポ1=日テレ・メニーナ)を欠いたものの、地力の強さを見せつけた。特に1、2点目はいずれも後方からの縦パスから生まれたゴール。チーム発足時から重視しているビルドアップからのゴールは、選手たちにとって自信となったはずだ。しかし、リーグ戦含めこれで4試合連続クリーンシートを逃したア女。トーナメント戦ではミスから失点は命取りとなるだけに、まずはチームの課題である無駄な失点を無くしていきたいところだ。そして今月24日に行われる2回戦の前に、4年ぶりの優勝が懸かる関カレ2試合と11連覇が懸かる関東女子リーグ戦1試合を控えているア女。なおさら守備面の修正は必須だ。「目の前の一戦に集中して、確実に勝ち点を積み上げていくだけ」と高瀬。リーグ戦で連勝を収め、万全の状態で24日に行われる強豪との一戦に挑みたい。

(記事 永池隼人、写真 石井尚紀、初見香菜子)


スターティングイレブン

早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属
GK16川端 涼朱スポ3東京・十文字
DF源関 清花スポ4ちふれASエルフェン埼玉
DF小林 菜々子スポ4ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF中條 結衣スポ4JFAアカデミー福島
DF中田 有紀スポ4兵庫・日ノ本学園
MF17阪本 未周スポ3大阪・大商学園
→89分12並木 千夏スポ2静岡・藤枝順心
MF10村上 真帆スポ3東京・十文字
MF◎8高瀬 はなスポ4ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
→80分19桝田 花蓮スポ2ちふれASエルフェン埼玉マリ
MF11松本 茉奈加スポ3東京・十文字
FW32高橋 雛社1兵庫・日ノ本学園
FW30土居 明日香スポ4ちふれASエルフェン埼玉
→HT13蔵田 あかりスポ2東京・十文字
リザーブ:GK33近澤澪菜(スポ1)、DF27黒柳美裕(スポ2)、DF31井上萌(スポ1)、DF36ブラフシャーン(スポ1)
◎=ゲームキャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)

コメント

MF高瀬はな主将(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)

――きょうの試合を振り返って

早い時間で失点してしまったこともあって、全体を通して自分たちの良さを出していくことが難しい試合にはなりました。

――きょうのゲームプランは

ボールを前から奪いに行って、常にコンパクトな状態で守備をしようと話していました。逆に攻撃では広く、サイドチェンジを有効に使いたいと考えていました。

――前半は中盤でのボールロストなど、かみ合わない場面が目立ちました

自分も含めて多くの選手が東伏見の人工芝に慣れてしまっていた分、天然芝への順応が遅かった気がします。技術的なミスが多かったです。

――失点後に選手間で集まっていましたが、何について話していたのですか

あまりスムーズにビルドアップができていなかったので、ボールの回し方と相手の狙いどころについて話しました。

――同点ゴールの場面を振り返って

マツ(MF松本茉奈加、スポ3=東京・十文字)がいい場所で仕掛けてくれて、相手を引きつけてくれました。未周(MF阪本、スポ3=大阪・大商学園)も雛(MF高橋、社1=兵庫・日ノ本学園)もゴールまですごく落ち着いていて、よかったと思います。

――前半は相手のカウンター、裏抜けに苦しんでいた印象です

相手の強みがそこなのはわかっていたので、もう少しうまく対応したかったなと思います。

――ハーフタイムで話し合ったことはありますか

攻撃時に相手の守備陣のバランスを崩せていなかったので、裏への抜け出しや連動で崩していくことなどを話しました。

――後半はMF蔵田あかり(スポ2=東京・十文字)選手を投入し、松本選手を1列上げました。この意図は裏抜けを増やすことでしょうか

二人ともスピードがあるので、裏への飛び出しなどでブロックを崩す狙いでした。

――後半は徐々にペースを握っていた印象です

ペースはつかめてきていましたが、全体的に相手が大きく蹴ってきたので、体力的にも苦しい時間が続きました。

――勝ち越しの場面を振り返って

マツ(松本)はゴール前での迫力が持ち味なので、FWに入ってそれを生かすことができました。なかなか得点が入らない時間帯でもあったので、みんなそこでまた元気を取り戻せました。

――1、2点目はディフェンスラインからの縦パスから生まれました。これは狙っていたところですか

特にこの試合でそれを狙おうという話ではなかったですが、ディフェンスラインからの縦パスがいいところに出るとチャンスになることが多いので、今後も増やしていけるといいと思います。

――1点リードの展開で、きょうは攻撃の意識が強かった印象です

リーグ戦とは違って、必ず勝ち切らなければいけなかったので、普段よりもさらに点を取りにいく意欲はみんな強く持っていたと思います。

――守備面を総括していかがですか

まだまだ修正しなければいけない部分はあったと思いますが、組織で守る意識はかなり高まってきたと思います。もっと質を上げていきたいです。

――皇后杯の初戦を逆転勝ちでものにしました

失点しても取り返せるメンタルがついてきていることは自信にもつながりますが、もっと無失点にもこだわっていきたいです。

――来週のリーグ戦に向けて意気込みをお願いします

連戦になりますが、まずは目の前の一戦に集中して、確実に勝ち点を積み上げていくだけだと思うので、神奈川大戦に向けていい準備をしていきたいと思います。

MF松本茉奈加(スポ3=東京・十文字)

――きょうの結果をどのように受け止めていますか

失点はあったのですが、初戦を勝ち切れたことで次に進めるのでよかったです。

――前半は後方からのロングボールが合っていない印象を受けました

練習はしていたのですが、完成はしていない状態だったので不安が残る中で試合を迎えました。しょうがないと言ってしまえば言い訳になってしまいますが、チームの中で合わせていかなければいけない部分が明確になったので、次の試合までに改善できればと思います。

――後半は松本選手がトップの位置に入っていい流れができていました。どのような意図がありましたか

練習の時からトップもやっていたのですが、自分は前を向いてドリブルをすることができますし、ボールを収めようと思えば収めることができるので、起点になるためにトップに入ったというのがあります。あとはサイドをもっと有効活用するためにあかり(蔵田)を入れたのかなと思います。

――逆転ゴールを振り返っていかがですか

決めるという気持ちでドリブルを開始したので、入るだろうという感じでした。

――1点目と2点目は後方からパスがつながってゴールになりました。チームとして取り組んでいることが発揮できたシーンでしたか

そうですね。ビルドアップはこのチームが始まってから重要視していて、センターバックの2人がロングキックが得意なこともあるのですが、ビルドアップができればチームが強くなると思うので、意識してコミュニケーションを取ってやっている部分です。

――FW山田仁衣奈選手(スポ4=大阪・大商学園)とFW廣澤真穂選手(スポ1=ノジマステラ神奈川相模原ドゥーエ)の不在を感じることはありますか

長い間試合で組んでいたので、少し違う部分はあるのですが、代わった人もそれぞれいい部分があって、それを生かそうとしているのが分かりますし、それを生かす自分の技術だったりが必要だなと感じました。

FW高橋雛(社1=兵庫・日ノ本学園)

――きょうの試合を振り返って

最初は先制されたのですが、結果的に3-1で勝利することができ、次につなげることができたのでよかったです。

――初めての皇后杯だったと思いますが、試合を終えていかがですか

会場の大きさや、普段戦うことのないチームとの対戦で少し緊張しましたが、やるべきことをやるだけということを意識して試合に溶け込めたのでよかったかなと思います。

――同点ゴールを振り返って

時間帯的にもう少し早く取りたかったのですが、前半のうちに同点にできてよかったです。みちさん(阪本)からのボールもタイミングもすごくよかったので、あとは決めるだけでした。

――前半はチームとして攻撃がかみ合っていなかった印象です

確かに前半の最初は、距離感が遠かったです。相手のラインを変化させるためには、FW同士の逆の動きだったり距離感が大事になってくると思うので、それを試合の中で徐々に修正できたと思います。

――後半は松本選手とのツートップとなりましたが、意識していたことはありますか

マツさん(松本)は裏を抜けるタイプなので、マツさんが相手を引きつけたところに自分が入ることを意識していました。

――後半自ら仕掛けるシーンが多かった印象です

相手の嫌なことをしようと思っていましたし、やっぱりチャレンジはしてみたかったので、仕掛ける判断が多かったと思います。自分で行くところと味方を使うのとの使い分けをできるようになるのが自分の課題の一つでもあると思います。

――2回戦目への意気込みをお願いします

2回戦目は、なでしこ1部リーグの日体大FIELDS横浜と対戦ですが、またチーム全員で良い準備をして勝ちに行きたいと思います。