3位決定戦でコートを躍動する日本代表・池透暢選手

「日本は金メダルを失った

20日の試合後、車いすラグビー日本代表・主将を務める池透暢選手は厳しい表情で言葉を残す。

3位決定戦でイギリスを相手に54−49で勝利し、銅メダル確定となった瞬間、少しだけ重圧から解放されたのかもしれない。アスリートならではのこみ上げる悔しさは次第に安堵の表情へと変わっていった。

汗だくの笑顔で最後にメッセージを贈ったのは、東京体育館に集ったオーディエンス。トータル3万人超えの観客が東京体育館に集い、日本代表選手たちを応援の力で後押しした功績は大きい。

大会5日間を通して、約35700名の来場者数を記録。この数字は、日本国内で実施されたパラ団体競技の来場者数としては、過去最高なのだという。

「今大会でこんなにも応援の力に支えてもらったと感じた。東京パラリンピック2020では金メダルで恩返しして(車いすラグビーファンを)泣かせたい(池透暢選手)」

「池崎〜!って名前を呼んで応援してくれるのは、恥ずかしいけど嬉しい(池崎大輔選手)」

ハイポインターの池崎大輔選手 日本代表・不動のエースは開幕初戦から激しいタックルに立ち向かう

世界大会の金メダルは逃したものの、2020年へと確実に繋がる大会だった。

東京パラリンピック・車いすラグビー決勝の舞台は、代々木体育館だ。2020年8月30日(日)18時から金メダルを射止める戦いが繰り広げられる。

2020年の舞台で、最高の泣き笑いを約束してくれた池選手。この言葉を信じて、私たちスポーツファンは応援の力をもっともっと高め、TOKYO2020へ向けさらなるムーブメントを起こしたい。

応援の力は2020年へと繋がっていく

「ダブルワールドラグビー」「もうひとつのラグビー」

今秋、こんな言葉を耳にした人も多いだろう。

昨今のラグビーブームにピッタリの世界大会「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が10月16日から20日の五日間、東京体育館で開催された。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットと多くのメディアも様々な情報が発信され、話題を集めた。

ラグビー日本代表の快進撃が続くなか、車いすラグビーの世界ランキングトップ10以内の強豪8チームが集う「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は、アメリカが優勝を収めTOKYOでの激闘は幕を閉じ、車いすラグビーファンも一気に増加。

トータル3万人超えのオーディエンスが東京体育館を埋め尽くした

今大会で話題を集めたのは、応援の力や日本代表の安定した強さだけではない。日本代表選手の新旧交えた個の力と若き可能性に着目したい。

車いすラグビー日本代表最年少パラアスリート・17歳の高校生、橋本勝也選手。今大会では、様々な経験を味わった。

「自分の実力だと思う」

最終戦を終えた後、17歳とは思えない落ち着いた口調で自身のプレーを振り返る姿は、強靭なメンタルの持ち主だと確信させた。オーストラリア戦後の悔し涙は、出場機会を得られなかった自身への悔しさなのか、それとも金メダル獲得が途切れた悔しさだったのか。

開幕初戦、ブラジルを相手に果敢なタックルを仕掛けていた橋本勝也選手

開幕初戦、世界ランク10位ブラジルとの戦いに挑んだ若き侍、KATSUYA HASHIMOTOは、コートの内外で脚光を浴びる。

2017年4月に誕生したクラブ「TOHOKU STORMERS」の一員でもある17歳は、福島県を拠点に活動を続けるパラアスリートだ。

普段は、テクニカルトレーニングを担当する野村トレーナーのもとで、車いす操作などの練習を積み、中学3年生で高校受験を控えていた時期も丁寧に時間をかけて車いすラグビーと向き合った。

彼の所属するクラブ「TOHOKU STORMERS」代表を務め、日本代表のアシスタントコーチも兼任する三阪洋行氏の存在も大きい。

日本代表アシスタントコーチを務める三阪洋行氏

そんな橋本に運命の出逢いが訪れたのは、2017年5月。

千葉で行われていた世界3強が争う「2017ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会」で、ケビン・オアー日本代表HCと初対面を果たす。

オアーHCの期待に応えるかのように2018年、日本代表入りを果たす。当初は、2024年のパリ大会代表候補として頭角を現していたようだが、スピードのあるハイポインター(障がいの軽い選手)として、東京パラリンピック2020へ名乗りをあげる。

ケビン・オアーHCはコートの内外で選手たちを鼓舞する存在だ

現在も福島県立田村高等学校に通いながら、東京パラリンピック2020を目指す高校生パラアスリート・橋本勝也選手。

世界ナンバー3のメンバーになった彼を世界という大舞台に押し上げたのは、東京体育館に集結した応援の力だ。そして地元・福島からの応援の力も大きかった。

福島では、車いすラグビーを応援する環境が整っており、東北をまたがるクラブチームの練習、そして日本代表の強化合宿を福島に招致したことで、“未来の若きエース”が鍛錬する環境を作り上げたという。

憧れの選手は、同じハイポインターの池崎大輔選手(TOKYO SUNS)。コートの内外でも影響を与え続ける存在だ。

「自分はまだまだ未熟。もっと経験を積まなければ先輩たちのようにはなれない(橋本選手)」

謙虚なコメントと勇敢なプレーは、もはやエースの風格さえも予感させる。

世界の壁へ挑む勇敢な17歳橋本勝也選手

今大会の出場8チームは、東京パラリンピックと同じ。まさに東京パラの前哨戦になる大会だった。会見に臨んだ池透暢主将(フリーダム)は、世界のトップを相手に今までやってきたことがどれだけ出せるか、警戒を強めていた。

日本代表チームの指揮官として3年目を迎えるケビン・オアーHCは大会前、チームの底上げを図る考えを明かしていた。

「池、池崎だけではなく、若い選手も使ってさまざまなライン(選手の組み合わせ)を試したい」

島川慎二選手の激しいタックルからも日本代表の勇敢なプレーが体感できる

大会は8チームが2組に分かれて1次リーグを戦い、各組上位2チームが19日の準決勝に進み、20日に決勝、3位決定戦が行われた。

日本の最大のライバル、別組に入ったパラリンピック2連覇中の世界1位オーストラリアとの戦いに敗れ、今大会は銅メダルで幕を閉じる。

銅メダルを獲得した日本代表メンバーとコーチ・スタッフ 彼らはコート内外で一心同体だ

先月のアジア・オセアニア選手権決勝で敗れた宿敵を倒し、2020年の東京へとつながる優勝こそはならなかったものの、昨年8月の世界選手権を制し、世界ランキング2位日本のプライドはここで終わらない。

2020年の東京パラリンピックで金メダル獲得へ向け、強化を進める車いすラグビー日本代表から目が離せない。

取材・文/スポーツブル編集部

写真協力/スタジオアウパ

試合後の観客席では貴重なファンサービスも行われたようだ

「第21回 日本選手権大会大会」開催決定

車いすラグビー日本一を決める大会が「千葉ポートアリーナ」で、2019年12月20日(金)〜22日(日)の3日間で開催される。

年に一度のクラブチーム日本一決定戦。「Okinawa Hurricanes」の4連覇なるか?2020年の東京パラリンピックを前に、車いすラグビーの迫力を一人でも多くの方に目撃して欲しい。

車いすラグビーとは?

バスケットボールと同じサイズのコートを舞台に、4対4のプレイヤーがぶつかり合う「車いすラグビー(ウィルチェアーラグビー)」。車いす競技の中で唯一、タックルが認められている男女混合の競技で、激しいぶつかり合いと緻密な戦術が醍醐味だ。専用の丸いボールを運び、車いすの前後4輪のうち、2輪がトライラインを通過するとトライとなる。四肢に障がいのある選手を対象とし、選手ごとに、障がいの程度の重い方から順に0.5点から3.5点まで0.5点刻みで「持ち点」が与えられている。1チームの持ち点の合計は8点以内で編成しなければならず、それぞれの持ち点で攻撃と守備の役割分担が明確になっているため、チームの戦術が見どころである。

車いすラグビーのわかりやすい競技情報はこちら(←三井不動産BE THE CHANGEページにジャンプします)

「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」結果&順位表

1位 / アメリカ(金)
2位 / オーストラリア(銀)
3位 / 日本(銅)

4位 / イギリス
5位 / カナダ
6位 / フランス
7位 / ニュージーランド
8位 / ブラジル

金メダルを獲得したアメリカ 日本が東京五輪で警戒しなければならないライバル国の一つだ