ラグビーワールドカップも10月13日(日)にプール戦最終日を迎えた。岩手・釜石鵜住居復興スタジアムで行われるはずだったナミビア対カナダの一戦は台風の影響で中止となってしまったが、大阪・東大阪市花園ラグビー場では、プールCのアメリカ(世界ラン…

ラグビーワールドカップも10月13日(日)にプール戦最終日を迎えた。岩手・釜石鵜住居復興スタジアムで行われるはずだったナミビア対カナダの一戦は台風の影響で中止となってしまったが、大阪・東大阪市花園ラグビー場では、プールCのアメリカ(世界ランク17位)とトンガ(同13位)が対戦した。

イングランド、フランス、アルゼンチンが入った「死のプール」と呼ばれたプールCで、アメリカもトンガもすでに3連敗で敗退が決定しているが、互いに最後は白星で終わりたいところだった。両者の実力は拮抗していると言えるが、9日にアルゼンチンと戦って中3日のアメリカはやや疲れが心配された。試合に先立ち、今回の台風で犠牲になった方々への黙祷が捧げられ、両チームの国歌斉唱、気合の入ったトンガのシピタウに続き、試合は14時45分にキックオフされた。

序盤から勢いよく攻めてくるトンガに対して、アメリカはディフェンスでプレッシャーをかけると、トンガにもミスが出てなかなか得点できなかった。しかし、16分、均衡を破ったのはやはりトンガだった。WTBヴィリアミ・ロロヘアの突破からFWが力で押し込み、最後はPRシーグフリード・フィシホイがトライし。SHソナタネ・タクルアのゴールも決まり、トンガが0-7と先制する。

だがアメリカも勝利への貪欲さは変わらない。20分、アメリカはパスで展開し、No.8キャム・ドランのパスから、キャプテンのWTBブレイン・スカリーの負傷交代で入ったWTBマイク・テオがスペースを見つけて右中間にトライ。SOのAJ・マクギンティのゴールも決まり7-7の同点とする。

さらに25分、ロングパスをWTBテオがキャッチし連続トライ。コンバージョンは入らなかったが、アメリカが12-7と逆転する。

その後互いに得点がないまま前半を折り返す。

後半10分、トンガがペナルティを獲得し、SHタクルアがPGを成功させ、12-10と2点差に迫る。疲れが見え、足が止まり始めたアメリカに対し、勢いの衰えないトンガは17分、アメリカが前に落としたボールをトンガのFBテルサ・フェアイヌが自身でキックしたボールをチェイス、さらにキックしたボールを今度はWTBロロヘアが拾い、オフロードから最後はCTBマリエトア・ヒンガノが逆転のトライ。SHタクルアのゴールも成功し、12-17と逆転する。

21分、アメリカの粘り強いディフェンス陣を突破し、キャプテンのCTBピウタウがトライし12-24とリードを広げる。

だが36分、最後まで勝利を諦めないアメリカが力で押し込み、最後はFLトニー・ランボーンがトライ。ゴールも決まって24-19と1トライ差まで迫る。

しかし、39分にFBフェアイヌが駄目押しのトライ。この試合で代表引退するFLシオネ・カラマフォニが押さえたボールを、同じく引退するCTBピウタウが蹴ってゴールも決まり31-19としてノーサイド。

4トライを挙げたトンガが最後にアメリカをかわして今大会初勝利で終えた。

アメリカ代表のギャリー・ゴールドHCは、「選手たちは本当にチャレンジしてチャンスもあったが、結果が出なくて残念だ」と悔しさをにじませつつも、「この大会で世界の素晴らしいチームと戦えた経験から多くを学べたと思う」と前を見据えた。

トンガ代表のトウタイ・ケフHCは、「(最後にショットではなくスクラムを選択したことについて)なんて馬鹿なことを! と思いましたよ(笑)。しかしこの2ヶ月で10歳くらい老け込んだので、もう慣れっこです」と笑い、「最後に勝利で締めくくれて選手たちの努力が報われました。(今後のトンガ代表の強化について)黙って文句ばかり言うのはいやだから、とにかくやってみようと思います。私たちは自分たちの現状を受け入れ、改善しようと努力するだけです。私たちは笑って先に進みます」と最後まで笑みを絶やさなかった。

プールCはこれで全試合が終了し、1位イングランド、2位フランスで決勝トーナメント進出が決まった。アルゼンチンは3位で2023年大会の出場権を得た。

◇トンガ・CTBピウタウ主将、POTMで誕生日と代表ラストゲームを祝う

本日が34歳の誕生日で、そしてトンガ代表として最後の試合となった、キャプテンのCTBシアレ・ピウタウ。FLシオネ・カラマフォニとともに代表最多となるワールドカップ12試合目の出場だった。国歌斉唱で噛みしめるように涙を流し、いつも以上に気合を入れてシピタウをリードした。

試合でもアタックやディフェンスで随所に体を張り、後半21分には自身でトライも決め、最後のコンバージョンも蹴った。プレイヤー・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。

「今日は自分の誕生日で、こんな形で終われるなんて素晴らしい。選手たちがくれた最高のプレゼントだと思います。ずっとこのジャージーを着てプレーしてこられたことを誇りに思います」と喜びを語り、「名ばかりのことも多かったですが、素晴らしい選手たちのリーダーとなることができて光栄でした。少し寂しい気持ちはありますけれど、これからの選手たちがレガシーを引き継いでいってほしい」とチームメイトに感謝の言葉とエールを送った。

さらに、今年最愛の妹をなくしたことに触れ、「私たちの家族にとっては辛い日々でした。妹の思い出を胸に、個人としては本当に辛い旅でした。しかし、チームメイトや応援してくれる皆さんが支えてくれました。そうでなければここまで来ることはできませんでした」と感極まった。