文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE昨シーズンの栃木ブレックスは連敗を一度も喫しないままレギュラーシーズンを49勝11敗を乗り切った。これは優勝したBリーグ初年度を上回る成績。チャンピオンシップではセミファイナル…

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部、B.LEAGUE

昨シーズンの栃木ブレックスは連敗を一度も喫しないままレギュラーシーズンを49勝11敗を乗り切った。これは優勝したBリーグ初年度を上回る成績。チャンピオンシップではセミファイナルで千葉ジェッツに敗れたが、ケガ人続出の状況でもチームスタイルであるディフェンスとリバウンドが揺らぐことはなく、試合終盤に異常なまでの勝負強さで勝ちきる戦いぶりを披露した。今夏から宇都宮ブレックスへとチーム名は変わるが、そのカルチャーは不変である。2年前の秋にヘッドコーチへと昇格し、ブレックスのカルチャーを作り上げた安齋竜三に話を聞いた。

「天皇杯の決勝で負けたことが大きい出来事だった」

──まずは昨シーズンを簡単に振り返りたいと思います。東地区2位でチャンピオンシップに進出、セミファイナルで敗退。この結果よりも内容をどうとらえているかを聞きたいです。

ケガ人が出たり、比江島(慎)が入ってきたり、レギュラーシーズンはいろいろなことが起きました。その中でこの成績を残せたのは良かったと思っています。

実はプレシーズンをやっている時に「今季は行けるんじゃないか」と思っていたんです。負けると自信をなくしたり、「僕らがやっていることは正解なのか?」という不安が選手たちにも出てきますが、そういうのが少なくて、どんどん良くなっていきました。難しいのは分かりますけど、本当のことを言えばファイナルには行きたかったですね。

──千葉とは実力が拮抗していました。どんな要素が勝敗を分けたのでしょうか。

チームにとって天皇杯の決勝で負けたことが大きい出来事だったかなと思っています。あそこで勝つのと負けるのでは、いろんな部分がちょっと変わってきたのかなと。

──オーバータイムの残り3秒で富樫勇樹選手に逆転3ポイントシュートを許した試合ですね。

選手が8人か9人しかいない状況で、比江島もまだ合流していませんでした。本当に優勝寸前のところまでは行ったんですが。シーズンもそのぐらいの人数でやってきていたので、いっぱいいっぱいでした。あそこで勝っていたら、気分的にプラスになって疲労にも耐えられる。そこで負けて、心身ともに疲れがバッと出てきました。あそこで勝っていたら、展開も変わっていたかもしれないですね。

──天皇杯が一つのターニングポイントだったんですね。

あそこはポイントでした。比江島がいなくても優勝して、それにプラスアルファで比江島が加わる流れを作りたかったです。比江島が隣にいる時に「比江島が来て強くなったと言われないように勝とう」って、冗談で言っていたんです(笑)。

「今はメンバーがほぼ変わらないし、チームの雰囲気は良い」

──では逆に、ポジティブな意味でシーズンのポイントとなった試合はありますか?

レギュラーシーズンの5試合目にアルバルク東京とやったんですが、僕はそこがキーポイントだと思っていました。前年はA東京に6戦全敗で、僕がヘッドコーチになってから4回負けていたんです。そのシーズンに優勝したA東京にどう勝つのかだけを考えていました。今までウチが何年かやってきたことを少し崩したり、ディフェンスのやり方とかも変えたりしましたが、それはすべてA東京に勝つためでした。

──東地区は激戦区ですが、その中でもA東京にフォーカスしていたんですね。

メインはA東京でした。千葉には2勝2敗でしたが、A東京には勝てなかったので。アーリーカップの決勝でも負けたんですよ。そうなると選手にも「またA東京に勝てないのか」という思いが出てくるので、それを早めに払拭したかったです。それができれば今年は本当に良いところまで行けるんじゃないかと思っていました。

その前に富山戦がありました。京都の時からジョシュア・スミスにも勝っていなかったので、攻略のためにかなりの時間を使いました。それで次の水曜日がA東京戦だったので、あまり準備もできませんでした。でも何としてでも勝ちたくて、持っているものを全部使おうと。それで勝ったんですよね。次の北海道に負けたんですけど(笑)、それは仕方ない。開幕からA東京までのこの一連の流れを開幕前から考えていたので、そこはかなり僕の中でのポイントでした。

──そう考えると、開幕のこの時期から勝負はすでに始まっているということですね。今はまだ外国籍選手が合流しておらず、代表選手も不在ですが、今のチーム状況はいかがですか?

昨シーズンからのメンバーがほとんど残っているので雰囲気も良いです。今はアシスタントコーチ陣に練習をやってもらって、僕は何か気が付けば言います。ずっと僕がコーチするより、町田(洋介)や稲垣(敦)がやればまた違う練習の雰囲気になります。ちょっと違う視点からのスキルの取り組みもあるので、いろんな人が指導する効果は出ていると思います。

テリフィック12に参戦「アジアでどれぐらい通用するか」

──ここから外国籍選手が合流して、今月末にプレシーズンゲームがあり、来月にはアーリーカップとテリフィック12に参戦します。アジアの強豪が集うテリフィック12には初参加となりますが、どういった位置付けをしていますか?

アーリーカップが終わってすぐなので、スケジュール的には結構キツいですが、韓国とか中国のチームはいろんなことをしてくると思うし、フィジカルの部分も違ったりするので、それを体験できるのは良いですね。もちろん勝ちたいですが、そこがメインではなく、選手の調子を見たり組み合わせを試しながら、どうチームにフィットしていくのかを見たいです。

──ケガ人も復帰し、特に3番までの競争は激しそうですね。

(喜多川)修平も戻ってきて、山崎(稜)もいますし、橋本(晃佑)もジョーンズカップでかなり活躍して戻ってきました。栗原(貴宏)も怪我からの復帰を目指しています。彼らには「今なぜ自分が使われているのか」を明確にしてあげて、自分のプレーを遂行してもらいたいです。

そういう意味で、テリフィック12は今シーズンの自分たちの力がどれぐらいあるのかを見る良い機会になるし、やるからには勝ちたいので、アジアのチームの中でどれぐらい通用するのかを見てみたいです。

メンバーが変わらないので、そのまま強くなると思われがちですが、僕はそんなに簡単ではないと思っています。ウチのチームは今も競争していて、それをずっと続けられるためにも、全員のモチベーションを保っていく必要があり、固定せずに試していきたいと今は思っています。