今月31日に開幕するFIBAバスケットボールワールドカップ(中国)に向け、世界ランキング48位の日本代表は、同38位のニュージーランドと12日(〇99-89、千葉ポートアリーナ)と14日(●87-104、カルッツかわさき)に強化試合を…

 今月31日に開幕するFIBAバスケットボールワールドカップ(中国)に向け、世界ランキング48位の日本代表は、同38位のニュージーランドと12日(〇99-89、千葉ポートアリーナ)と14日(●87-104、カルッツかわさき)に強化試合を行ない、1勝1敗で終えた。



21歳にして、日本代表に欠かせない存在となった八村塁

 この2試合で最大の関心を集めたのは、もちろん6月のNBAドラフトで日本人初の1巡目指名を受けた八村塁(21、ワシントン・ウィザーズ)だ。NBA入り後、初の凱旋試合となり、また代表としては昨年9月のW杯2次予選のイラン戦以来の試合とあって、日本期待のエースがどんなプレーを見せるのか注目された。

 その八村は、12日の初戦で期待にたがわぬ働きで35得点をマーク。代表7戦目にして自己最多得点を記録するなど躍動し、「最高の出だしになった」と笑顔を見せた。だが、続く第2戦は両チーム最多の19得点を挙げたものの、フィールドゴール成功率は76%から40%に低下。チームも敗れ「相手もバカじゃない。本来は格上だし、35点を取ったら次は抑えるためにやってくる。当たりも強くなっていたのは感じた」と課題を口にした。

 互いにW杯に向けた調整段階にあるため、勝敗やスコアに大きな意味はないだろう。

 2試合を通して、ドライブ(ドリブルで攻め込むこと)やゴールに背を向けてのポストプレー、リバウンドとフォワードとしての役割をこなした八村が特別な選手であることがわかった。ただ、初戦に比べ、第2戦ではニュージーランドもテンションを上げてきたなか苦しんだのは事実である。

 第2戦でフィールドゴール成功率を下げたことに対して、堂々と「問題ないです」と言い切るあたりに八村の大物ぶりを感じたが、彼に対していまチーム内ではこんな声がある。

「(チームの)メインは塁なので、どうやったら楽にボールを渡せるかが、僕たち周りの選手の役割」(馬場雄大/23、アルバルク東京)

「スペシャルな選手なのは間違いない。自分でプッシュして、フィニッシュできますし。ただ、それが相手に研究されたときにどうするか。そこは詰めないと」(篠山竜青/31、川崎ブレイブサンダース)

「このチームにおいて、塁は自分が打ちたいと思ったシュートはすべて打ちにいっていい権利を持っている。ただ、彼がプレーするのを、見ているだけのつもりはない。彼が、強引にプレーをしすぎと思った時はサポートしたいし、どうバランスを取るかが大事になる」(ニック・ファジーカス/34、川崎ブレイブサンダース)

 チームメートの誰もが八村の実力は認めている。だが、日本がW杯の予選ラウンドで対戦するのは絶対的な存在であるアメリカ(1位)を除いても、トルコ(17位) とチェコ(24位) の欧州勢はニュージーランド以上の実力国。八村に頼るばかりでは厳しい戦いになるのは見えている。

 ニュージーランドとの第2戦では、右足首を捻挫していた渡辺雄太(24、メンフィス・グリズリーズ)が戦列に復帰して約10分と短い時間ではあったが、八村、元NBAプレーヤーのファジーカスと日本代表のビッグ3が初めて一緒にプレーしたことも話題となった。だが、連係を深めるにはもう少しがかかりそうだ。

「3人でやったのは今日が初めて。みなさんオフェンス面で注目していると思いますが、僕自身はそれよりもディフェンス面で影響を与えられる3人だと思う。ただ、そこが今回は出せなかった。そこはもう1度考えないといけない」(八村)

 203センチの八村、206センチの渡邊、210センチのファジーカス。八村は「この高さは攻撃以上に守備で効果的」と話すが、ニュージーランドを相手にリバウンドでも37対45と下回るなど課題が残った。

 一方、ファジーカスは3人でのプレーをこう振り返った。

「3人で練習したのはまだ1度だけ。それを考えると、まだまだ練習が足りない。時間はあまりないが、しっかり練習すれば連係はもっとよくなる。ケガで出遅れた雄太は、とくに攻撃面で焦りが見えたが、もう少しリラックスすれば得点は増えるはず」

 八村を生かすためにも、攻守で軸になるビック3がどう互いのよさを引き出せるかが、今後のポイントになるだろう。

 他の選手より約10日遅れで、7月31日にチームに合流してから約2週間が経過した八村。コンディションについては「湿気もあって暑いが、水分をしっかり取っているし悪くない。このままキープしていければ」と話し、残りW杯までの3つの強化試合(22日・対アルゼンチン、24日・対ドイツ、25日・対チュニジア)で「チームとして集中してやるだけ」と気を引き締めた。

 年齢ではチームでいちばん下になるが、W杯に向けては力強くこう抱負を語った。

「国際大会やアメリカでの経験は先輩たちに負けていない。プレー面ではチームを引っ張っていきたいし、オフェンス、ディフェンスの両面でインパクトを与えたいと思っています」

 八村効果はすでにチケット販売やテレビ放映(強化試合すべてが放映される)などに大きな影響を与えているが、コート内での過度な依存は逆にチームを苦しくする。大切なのは周囲とのバランスで、それこそがW杯での成否を決めるカギと言えそうだ。