文・写真=鈴木栄一

チャンピオンシップ4強進出を果たせずに昨シーズンを終えた川崎ブレイブサンダースは、チーム刷新に着手。大塚裕土、熊谷尚也とこれまでにない日本人の即戦力補強を実施している。彼らが川崎にどんなインパクトを与えるかは大いに楽しみだが、一方で王座奪還には残留組が昨シーズン以上のパフォーマンスを披露することも重要だ。中でもケガが相次ぎ消化不良に終わった辻直人の復活は大きなポイントとなる。5月に左肩の手術を行った辻に、今の心境を聞いた。

「それでもワールドカップ出場の可能性を信じたかった」

──まずは左肩の手術について教えてください。レギュラーシーズン最終節に痛めたのは、昨年11月末の栃木ブレックス戦の負傷と同じ箇所でしたか。

同じ脱臼です。11月の栃木戦で痛めた時、「完治するには手術しかないが、その場合は残りシーズンの出場は無理」と医師から言われ、手術をせずに復帰しました。ただ、回数を重ねるごとに再発のリスクが高くなると言われていたので、まずは手術が頭に浮かびました。

チャンピオンシップの栃木戦は、絶対に自分が出場しなければいけないわけではありませんでしたが、三河戦の前の週、新潟アルビレックスBBに直接対決で負けて地区優勝がなくなった後での練習はシーズンで一番くらいの良い内容だったんです。シーズン中、あれだけ一家団結と言っておきながらも一つになりきれていなかったのが、ここにきて一つになって来ている。このメンバーと最後まで一緒にプレーしたい気持ちが強かったです。それで「出なければいけない」というより「出してくれ」とお願いしてチャンピオンシップではコートに立ちました。

寝ていても肩が抜けそうで、ユルユルの感覚は普段の生活からありました。その状態で、よりによってBリーグでも特に激しいディフェンスの栃木が相手という怖さは感じていました。

──シーズン終了後、手術をしたのは予定通りでしたか。

チームドクターには手術を勧められました。それでもワールドカップ出場の可能性を信じたかったので、手術をしないで済むのならそうしたい思いでセカンドオピニオンを聞きに行ったのですが、そこでも手術を勧められたので決心しました。

手術をしないと、またいつ肩を脱臼してもおかしくないリスクを抱えることになる。それは爆弾を抱えたままプレーするわけで、今までを振り返ってもケガや痛みがあった時の自分のパフォーマンスは良くなかった。そういう状態では思い切ったプレーができないと感じたので、手術に気持ちを切り替えました。

「新シーズンはケガなく1年を過ごして全力で戦いたい」

──ワールドカップ出場の可能性がなくなった今、日本代表をどんな思いで見ていますか。

バスケット界がこういう盛り上がりを見せている今、ワールドカップに出たかった、悔しい、という気持ちはあります。ただ、そういった思いとは別にすごく代表は応援しています。みんな一緒に戦ってきた大好きなメンバーで、会いたいですね。1回サプライズで代表の練習に行こうかと思います。呼ばれていないですけど(笑)。

──術後の経過、リハビリはどんな感じですか?

最初の1カ月はすごく順調と言われていて、自分の中でも手応えはあります。ただ、これからの1カ月、2カ月は劇的な変化があるわけでもないので、一番苦しい時期だと予想しています。ここでしっかり我慢して、バスケを始められたらと考えています。目標がないと日々のリハビリを頑張れないタイプなので、開幕戦の万全の状態で出場することを目指しています。そして、新シーズンはケガなく1年を過ごして全力で戦いたい。それができればチームは優勝により近づくと思っています。

──このオフシーズン、川崎は大きな動きがありました。北卓也ヘッドコーチの退任についてはどう受け止めていますか?

すごく驚きました。でも2年連続チャンピオンシップの初戦で負けたことを考えると、変わらないといけない部分もある。プロは厳しい世界と自分なりにより感じました

──佐藤賢次アシスタントコーチがヘッドコーチに昇格する変化があり、選手では大塚選手、熊谷選手と実績ある選手たちが加入しました。この変化をどのようにとらえていますか。

めちゃくちゃ大きいです。ヘッドコーチが変わるということはバスケットも変わるということ。そこで新しい風というか、変化に期待しています。また、新しいコーチが入ったのは僕の知らなったバスケットを教えてもらえるチャンスであり、そこは楽しみしかないですね。補強についても僕はうれしいです。チームを強くすることを考えた時、大卒の新人選手も大事だと思いますが、すぐに試合に絡むのは難しい面もあります。他のチームの主力選手が来てくれることはチームにとって必ずプラスになります。

「今はとにかく身体を見つめ直す時期と考えています」

──新しくなったチームの中で、辻選手は自身がどんなプレーをしていきたいですか。

勝っている試合は、自分もシュートをよく打って、チャンスメイクもできていた感触があります。新加入の2人はシュート力があって相手にとって脅威となる選手で、すごくやりやすくなると思います。新シーズンは自分の色を前面に出して、インサイドだけでなくいろいろなところでチャンスメイクするバスケットがしたいです。

Bリーグになってから毎年、故障で欠場しています。自分が離れている1カ月、2カ月の間、チームは練習、試合を積み重ねて僕がいない時のスタイルができつつあります。それを受けて復帰した時に一歩引いてしまうのが僕の一番良くないところで、ここ3シーズンはそれが出てしまっています。そういう気持ちにならず、勝ちたい気持ちに集中してプレーできている時は良いパフォーマンスができる。周りを気にしすぎるところはあるかもしれないです。

──川崎在籍8年目となり、チームの中での立ち位置の変化を意識することはありますか。

それは意識します。特に昨シーズン、ケガをした時に客観的にチームを見られて、そこでチームを良くしたいと行動できました。自分もリーダーシップを取らないといけない自覚が出てきた面はあるかなと。今まででしたら(篠山)竜青さん、栗原(貴宏)さんがやっていた役割を、自分で行動できたのは昨シーズンで成長した部分と思います。。

──今はまだボールを触れていないことへの焦りなどはありますか。

オフになって2カ月くらいボールを触っていませんが、あまり触りたいとも思っていません。それはなぜかと言えば、今は「バスケがしたい」より「ケガをしたくない」だし、「まずは脱臼しない肩に戻さないといけない」からで、とにかく身体を見つめ直す時期と考えています。

そういう気持ちになるのは今までなかったことですし、危機感もあります。でも、ここで焦ってバスケの練習をしたところで、手術した左肩をかばいながらになってしまいます。肩の違和感がなくなった時にバスケをしたい気持ちになると思っています。

──最後にファンへのメッセージをお願いします。

ファンの皆さんの励ましの言葉はリハビリの大きな支えとなっています。この前もロッカーの中に寄せ書きがあって、そういうのを見るとモチベーションになりますし、頑張れる要素になるので本当に感謝しています。開幕戦、全治半年で間に合わないはずだったのに登場して、「やっぱり、辻は治るのが早い」という姿を見せられるように今は頑張って一日一日を過ごしています。復帰するのを見守ってもらいたいですし、日本代表を応援しましょうと伝えたいです。