世界の総合格闘技の歴史、今後の業界の流れや慣習を変えるかもしれない史上初の快挙を堀口恭司が成し遂げた。

 6月14日(日本時間、15日)、ニューヨーク(NY)のマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で米・ベラトール・バンタム級タイトルマッチ(Bellator222)で同王者のダリオン・コールドウェルに挑んだRIZIN・バンタム級王者の堀口恭司は3-0の判定勝ちした。


世界の総合格闘技に「一石を投じる」勝利


 世界の総合格闘技で、2団体のベルトを同時に獲得したのは世界初。

 2018年大晦日のRIZIN.15で堀口がコールドウェルに劇的勝利を決め、そのリターンマッチとしてベラトール・バンタム級王者を掛けた一戦。

 立ち上がりの1Rこそ堀口は攻め込まれたが、コールドウェルは攻めきれず、ラウンドを追うごとに動きが鈍くなっていった。その隙を見逃さず、堀口が所属する米・フロリダの「アメリカン・トップ・チーム(ATT)」のマイク・ブラウンコーチは、セコンドから的確な指示を連発した。

 前回のRIZIN.15で堀口のフロントチョーク「ギロチン」でギブアップしたトラウマがあるコールドウェルが組み付いて離れない様子を見ると、リングサイドから「何でも良いからパンチを打ち続けて、(ジャッジの)得点を稼げ!」と指示。現役時代、UFC等の各団体で活躍し、現在はATTで各選手を指導するブラウン氏の指示に堀口もうなずきながら、金網を背に組合ながら相手に有利な状況を作らせず打撃を続けた。


 堀口自身、UFC時代以来のケージ(金網)での試合だっが「リングでロープより、金網の方が自分は得意」と語ってきたが、それが活かされた試合だった。この日の試合前のリングチェックでも「RIZINのリングよりかなり広いし、(素早く動き回る)自分にとっては有利」と語っていた。


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敵地・アメリカでの「U.S.A.」コールが一転、コールドウェルへのブーイングに…


 均衡状態の展開が続く中、地元ファンを中心に「U.S.A.」コールが会場全体を包んでいったが、もどかしいベラトール王者の動きにしびれを切らした会場全体がブーイングへと変わっていった。試合後、堀口は「自分へのブーイングだと思った」と語ったが、明らかに攻めあぐねていたコールドウェルへのブーイングだった。

 試合は双方決め手が無く、5Rが終わり判定へともつれ込んだ。

「(敵地で)判定になったらダメだと思っていた」と言う堀口は、試合後の判定を待つ間もリング上でブラウンコーチと「ちょっと厳しいかもな…」と語りながら判定を待った。

 「New Champion!」とリングアナウンサーが叫んだ瞬間、堀口は拳を突き上げ、満面の笑みで喜びを爆発させた。スポーツの聖地・MSGで新たな歴史が生まれた瞬間だった。


勝利インタビューで「セフード君、やろうよ」と言うつもりが…

 常々「NYだろうが、MSGだろうが、日本だろうが、どこの国だろうが、自分の戦いをするだけなので、変わらないです」と語ってきた堀口。しかし、この一戦に掛ける思いは特別だった。

 12日の試合前メディア対応に続いて、この日の試合後の記者会見でも米・メディアから「先日のUFCのバンタム級王者戦でヘンリー・セフードが凄い試合をしたがどう思うか?」、「2団体の王者を同時に獲得する事は、世界の総合格闘技においても非常に斬新で、画期的な事だ。今後の展望は?」と言う質問が相次いだ。



 常々、「日本、世界の格闘技を盛り上げるために」と言い続けてきた堀口は、米・メディアから同じ質問されるたびに「この試合で、世界の総合格闘技の流れを変えたい」と強調してきた。

 試合後の記者会見では「団体の垣根を越えて、自分が2団体の王者になった事は、ベラトールのスコット・コーカー代表、RIZINの榊原代表の協力があったからこそだと思いますし、本当に感謝です。2団体のベルトを獲った事によって、世界の総合格闘技の流れが変われば良いと思う。RIZIN、ベラトール、UFC、それぞれが別々ではなく、垣根を越えて闘える機会があれば良いと思います」と試合後の記者会見で語った。


 2018年に「那須川君、やろうよ!」とリング上での勝利インタビューで発言し、堀口恭司vs那須川天心が実現した時のように、今回は「セフード君、やろうよ!」とUFC王者との対戦を宣言するつもりだった堀口。負けを覚悟した直後にリングアナウンサーの「New…」と言う言葉を聞いた瞬間に「驚きと嬉しさで、言おうと思っていた事が全て(頭から)飛んでしまった(笑)」と苦笑い。

 本人がマイクパフォーマンスをするまでもなく、多数の米メディアから「セフードと闘う機会は来ると思うか?」と言う質問が殺到したように、この日の夜の闘いで確実にその機運は高まった。

 アメリカの各スポーツメディアがこぞってトップ扱いする等、全米を震撼させた堀口の「一石を投じた」戦いは、無限の可能性を秘めている。


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[文/構成:ココカラネクスト編集部]