118ポンド(約53.5キロ)をリミットとするバンタム級の世界最強を決めるトーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級準決勝、WBA王者の井上尚弥(26=大橋)対IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=…
118ポンド(約53.5キロ)をリミットとするバンタム級の世界最強を決めるトーナメント、「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級準決勝、WBA王者の井上尚弥(26=大橋)対IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(26=プエルトリコ)の王座統一戦が18日(日本時間19日)、イギリスのグラスゴーで行われる。
(C)Getty Images
バンタム級転向後の2試合で衝撃的な1ラウンドKO勝ちを収めている17戦全勝(15KO)の『モンスター』井上と、19戦全勝(12KO)の『カリブの至宝』ロドリゲス。高い戦闘能力を備えた実力派チャンピオン同士の注目の一戦だ。ハイレベルの攻防が期待されるこの試合を、かつて同じバンタム級で12度の防衛を誇った元WBC王者の山中慎介氏が占った。当日、WOWOWの生中継で現地解説をする予定の山中氏は、「総合力では井上選手が勝るが、ロドリゲスも強い選手なので一瞬も目が離せない試合になる」と話す。
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■最高の勝ち方で決勝進出を果たしたドネア
――「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」の意義について、どう思いますか。
山中「現在のボクシング界にはWBA、WBC、IBF、WBOと4団体ありますが、WBSSはそのなかで誰が階級最強なのかを決めるトーナメント戦といっていいでしょうね。世界チャンピオン同士が戦うこともあるので盛り上がりますよね。今回、バンタム級でWBSSが開催されたのは井上選手という実力者がいたからでしょう」
――このイベントが山中さんの現役時代に開催されていれば出場したかったのでは。
山中「僕もチャンピオン同士で統一戦をしたかったのですが、あのころは他の団体のチャンピオンの入れ替わりが激しかったので対戦のタイミングやマッチメークが難しかったみたいですね」
――4月27日にアメリカで行われたWBSS準決勝では、WBA世界バンタム級スーパー・チャンピオンのノニト・ドネア(36=フィリピン)が5位のステファン・ヤング(30=アメリカ)に左フック一発で6回KO勝ちを収めました。
山中「ドネアが最も得意とする左フックは健在でしたね。相手を追い込んだ際に少し力みも感じられましたが、やはりパワーがあります。全盛期と比べると一瞬の動きに多少の遅れを感じたので完全復活とまではいかないかもしれないけれど、底力があるところを見せました。決勝に進む選手の勝ち方としては最高じゃないですかね。『ノニト・ドネア』という世界的な知名度もある選手がああいう勝ち方をすると次も盛り上がるでしょう」
――これは仮定の話になりますが、井上選手が決勝でドネアと戦うことになったとしたら、どんな試合になると思いますか。
山中「ドネア自身も『リスペクトしているナオヤ(井上)と戦いたい』と言っていますからね。長谷川(穂積)さんがフェルナンド・モンティエル(メキシコ)と戦ったときのような、ものすごい緊張感の漂う試合になりそうですね。一撃で終わるようなピリピリした雰囲気の戦いになるでしょう」
■すべて10点満点の井上 抜群の距離把握力
――WBSSバンタム級トーナメント準決勝、もうひとつのカードが日本時間の19日(日)、イギリスのグラスゴーで行われます。WBAチャンピオンの井上とIBFチャンピオンのロドリゲスが統一戦で拳を交えます。
山中「事実上の決勝戦ともいわれている注目のカードですね。井上選手はもちろんですが、ロドリゲスもパワーのある実力者なのでレベルの高い試合になるはず。いまから楽しみです」
――その井上選手は昨年10月の準々決勝で元チャンピオンのファン・カルロス・パヤノ(当時34=ドミニカ共和国)を開始から70秒、右一発で失神させています。
山中「1ラウンドKOというと、お客さんからは『もう少し見たかった』という声が出てくるものですが、あの倒しっぷりは会場の観客やテレビで見た人を十分に満足させるものでした。70秒でファンを満足させられる勝ち方というのは衝撃ですよ。相手の動きを数十秒見ただけで、あのワンツーを当てられるんですから。その前(18年5月)のジェイミー・マクドネル(33=イギリス)戦も衝撃的でしたしね」
――井上選手の優れている点はどこなのでしょうか。
山中「スピードやパンチ力などすべての項目が10点満点なんじゃないですかね。特にどのパンチをどこに当てるか、距離感の把握が早いんでしょう。瞬時に距離や当てるポイントをつかむ能力はずば抜けていると思います」
――課題はありますか。
山中「ないでしょう。以前、井上選手は防衛戦のなかでサウスポースタイルで戦ったことがあったけれど、あのままでも倒してしまうだろうと思ったほどですから。あのとき僕は現役だったので、同じサウスポーという点では誰にも負けたくないと思ったのを覚えています」
――山中さんは8回戦時代に3試合連続1ラウンドKO勝ちを記録していますが、1ラウンドKO勝ちのあとは逆に力んでボクシングが雑になるといったことはありませんか。
山中「僕の場合は日本チャンピオンになる前だったので注目されることもありませんでしたからね。だから3試合目も力まずに戦えました。ただ、井上選手の場合はこれだけ注目されていますからね。本人が一番気にしないようにしていると思うけれど、実際に2試合続けて1ラウンドKOしているわけで、無意識のうちに力みとして出る可能性はあると思います」
■評価の高いロドリゲス パワーには要注意
――今回の井上選手の相手、ロドリゲスの試合映像を見て、どんな印象を持ちましたか。
山中「戦力面でも動きでもバランスのとれた強い選手だと思います。パンチが固そうな印象で、パワーもありそうですね。身長は井上選手よりも少し大きいみたいですが(井上が165センチ、ロドリゲスは168センチ)、体つきは井上選手の方がしっかりしている印象を持ちました。井上選手ほどのインパクトではないけれどロドリゲスも評価の高い選手なので、事実上のWBSS決勝戦といわれるのも分かりますね」
――オッズは5対1で井上選手有利と出ています。
山中「けっこう開いているんですね。ふたりの直近の試合(井上は衝撃的な1回KO勝ち、ロドリゲスは苦戦の12回判定勝ち)が影響しているんでしょう。」
――どんな試合展開を予想しますか。
山中「瞬間的にいろんなパンチを出せる井上選手が相手なのでロドリゲスは警戒しながらスタートすると思います。ロドリゲスは右ストレートや左アッパーなどが強く、腕をたたんで近距離で打つのも巧いんですが、その距離になる前に井上選手のパンチが入るような気がします。かといって遠い距離でも井上選手のパンチが当たるイメージなんですよね。井上選手がどういう戦いをするのか、どう勝つのか、圧倒的な勝ち方ができるのか――とにかく井上選手のパフォーマンスに注目ですね」
――試合はイギリスのグラスゴーで行われます。
山中「以前、井上選手はアメリカで戦ったことがありますが、調整に苦労したとは聞いていないので問題ないでしょう。彼はハートも強いし。連続KO勝ちで自信を増しているだろうし、不安よりも楽しみの方が大きいんじゃないですか。いつものコンディションをつくれば気分よく戦えると思いますよ」
――山中さんはWOWOWの現地解説の予定です。
山中「1万3000人前後が入る会場だと聞いていますが、おそらく満員になるでしょう。井上選手はイギリスでも高い評価を受けているので、声援も多いんじゃないですか。ホームのような雰囲気で戦えるかもしれませんね。僕は現地で見たこと、感じたことをストレートに伝えられればと思っています」
――井上選手にエールを。
山中「彼は圧倒的な勝ち方を続けているので、さらに高いものを求められています。常にプレッシャーがかかっていると思いますが、井上選手はそれを力に変えるんじゃないでしょうか。会場の雰囲気や緊張感、WBSS独特の入場とリングインなど、楽しんだうえで良い結果を出して日本を盛り上げてほしいですね」
「ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)」バンタム級準決勝、WBA王者の井上尚弥(大橋)対IBF王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)は5月19日(日)午前4時30分からWOWOWプライムで生中継する。
[文/構成:ココカラネクスト編集部、取材協力:WOWOW]
山中 慎介(やまなか・しんすけ)
1982年10月11日、滋賀県出身。アマチュアを経験後、06年1月に帝拳ジムからプロデビュー。11年11月、WBC世界バンタム級王座を獲得し、左構えから繰り出す「ゴッドレフト」を主武器に6年間に12度の防衛を果たした。18年3月に引退。戦績は31戦27勝(19KO)2敗2分。
◆◆◆WOWOW番組情報◆◆◆
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海外でのビッグマッチに臨む井上尚弥と伊藤雅雪の、これまでの軌跡と試合のみどころを、貴重な対談VTRなどを交えながらたっぷりとお届けする。
【放送日】5/18(土)夜6:30[WOWOWプライム]ほか ※無料放送
★『生中継!エキサイトマッチスペシャル WBSS準決勝「井上尚弥」王座統一戦!』
対戦カード/WBA・IBF世界バンタム級王座統一戦:井上尚弥 vs エマヌエル・ロドリゲス
【放送日】5/19(日)午前4:30[WOWOWプライム] ※生中継
・現地解説:山中慎介
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対戦カード/WBO世界S・フェザー級タイトルマッチ:伊藤雅雪 vs ジャメル・ヘリング
【放送日】5/26(日)午前11:00[WOWOWライブ] ※生中継
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