文=丸山素行 写真=B.LEAGUE「プレッシャーに対して、自分自身に焦りはなかった」川崎ブレイブサンダースは栃木ブレックスとのチャンピオンシップ第1戦に57-87で敗れ、後がなくなった。いくつか敗因はあれど、ターンオーバーからの失点で20…

文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

「プレッシャーに対して、自分自身に焦りはなかった」

川崎ブレイブサンダースは栃木ブレックスとのチャンピオンシップ第1戦に57-87で敗れ、後がなくなった。いくつか敗因はあれど、ターンオーバーからの失点で20-4、速攻での得点で5-18と、栃木の得意としている『堅守速攻』を許したことが、ここまでの大差がつく結果となったことは明らかだ。

北卓也ヘッドコーチが「ポイントガードのところでターンオーバーが起こるとは思っていなかった」と試合後に語ったように、信頼を置く篠山竜青と藤井祐眞の2人がそれぞれ3ターンオーバーを犯し、自分たちでリズムを崩したことが大きな誤算となった。

ターンオーバーと一言で言っても、その内容は様々だ。篠山は「ボールが手についていない時もありましたし、もったいないところが多かった。単純なミス」と、自身の犯したターンオーバーを振り返る。

篠山がそう言うように、一瞬の隙を突かれボールを奪われたり、何でもないボールをキャッチミスするなど、個人的な不注意が引き起こしたターンオーバーだった。だからこそ、「プレッシャーに対して、自分自身に焦りはなかったです」と、決して栃木のディフェンスに屈したわけではないと主張した。

そして篠山は、「もっとボールに触ってチーム全体を落ち着かせなければいけなかった」と話し、57点しか奪えなかったオフェンスを問題視した。

「インサイドを強調したいと北さんに言われていました。(ジェフ)ギブス選手の高さのミスマッチだったり、竹内公輔選手が出た時だったり、ローポストにボールを集めてほしいと」

実際、試合序盤はバーノン・マクリンにボールを集めた。マクリンは栃木とのレギュラーシーズン最後の2試合で、フィールドゴール25本中21本成功を決めており、インサイドを強調するのは当然の選択だった。しかし、ライアン・ロシターとギブスの激しいチェックにより、第1クォーターで放った4本すべてのシュートが外れるなど、インサイドの攻めは機能しなかった。

その結果、「ローポストを生かすのか、ピック&ロールで崩していくのかが中途半端になってしまった。すべて後手に回ってしまった部分はあった」と篠山は言う。今日の第2戦までにオフェンス面での修正が必要と訴えた。

「このチャンピオンシップの雰囲気に飲まれた」

一方、藤井のターンオーバーは栃木のディフェンスに屈した側面があり、「パスを狙いすぎてしまった」と悔やむ。「ヘルプがガッツリ来てないのに、シュートよりも先にパスを見てしまった。まずはシュートを打ちにいくという積極的な気持ちが必要でした」

藤井はリングにアタックするも、ヘルプに行ったり行かなかったりする栃木の駆け引きに惑わされてシュートを打ち切れなかった。それで連続でのパスカットを許し、速攻を浴びた。

ベンチからの貴重な得点源となり、辻直人のケガの影響で先発を務めるなど、藤井はレギュラーシーズンでも多くの修羅場をくぐってきた。それでも「アウェーですし、このチャンピオンシップの雰囲気に飲まれた部分はあるかと思います」と、栃木のホームが作り出すアウェー感が少なからずプレーに影響したという。

また「長谷川(技)さんが序盤でケガをしたり、シェーン(エドワーズ)も良いところで出血して交代するなどアクシデントもあった」のも事実。それでも、この劣勢を覆すには強い気持ちを持って、背水の陣で臨むしかない。

「今シーズン一回も勝ってないですし、本当にチャレンジャーの気持ちで当たっていくしかないです。気持ちで負けないことが一番大事なので」

川崎は再び、強力インサイド陣にボールを集めて勝負するのかもしれない。だが、彼らを生かすも殺すも、ガード陣の働きに懸かっている。篠山と藤井にはベストなパフォーマンスが求められる。川崎がアップセットを成し遂げるためには、彼らが同じ轍を踏まないことが最低条件だ。