◆第68回お花見レガッタ◆

3月30日~31日 埼玉・戸田ボートコース

長く厳しい冬を越え、丸々と太った蕾が一斉に開花する。日本の国花として使命感に燃える桜が、戸田を薄ピンク色に染める季節が今年もやってきた。己と向き合い、鍛錬を重ねることで、桜同様冬の間に実を太らせてきた立大ボート部。部員全員で誓った「志」を胸に、いざ戦(船)上へ。待ちに待った2019年シーズンの、開幕である。

女子シングルスカル【角谷(コ4)】


決勝戦、圧倒的な強さで独走する角谷【撮影・洞内美穂】

大会一週間前に行われた日本代表選考会において結果を出し、見事U23日本代表候補に選出された角谷。日の丸を背負った今、彼女には負けられない理由があった。「日本代表に選出されたばかりの自分が負けていられない」。いつもとは一味違うプレッシャーを抱きながら、レースに挑む。だが角谷にとって、Japanのプレッシャーなど弱風も同然だった。予選・準決勝を圧倒的強さで快勝。特急列車並みのスピードでゴールテープを切る彼女からは、レースを楽しむ余裕すら感じられた。
2日目の決勝戦でも、レースは角谷の独壇場だった。ゴール直後には、思わず腕が上がった。「勝てて一安心」。だが、角谷の戦いはこれで終わりではない。この日はシングルスカルの他に、女子エイトにもエントリーしていた。休む間もなく、仲間の待つ艇庫へと向かう。

女子エイト【岩崎(法2)佐藤理(観2)日比野(社1)三嶋(社2)篠原(理2)五十嵐い(法1)角谷(コ4)土方(コ4)小塚(観4)】


女子エイト部門を制覇したクルーたち。笑顔で金メダルを披露した【撮影・渡邊大樹】

表彰式にも行かず艇庫に直行した金メダリストが、待っていた仲間に吉報をもたらす。連覇を目指す女子エイトにとって、最高の船出だ。レースが始まると、優勝の勢いをエンジンに、スタートダッシュを決めた。この日がコックスデビューとなる小塚(観4)の指示が、軽やかに飛ぶ。終盤日体大に詰められたものの、ラストスパートをかけ首位を守り抜いた。連覇達成。各々が優勝の喜びを表す中、ここ最近ひとりでのレースが続いていた角谷も、仲間と喜びを分かち合った。「皆で勝った時の喜びは大きいです。日本代表選出よりも、シングルスカル優勝よりも、エイトでの優勝が嬉しいです」。1年生から4年生までが同じ船に乗って戦った今大会。ひとりでは辿り着けない感情が、そこにはあった。


2つの金メダルを首にかけ、満足げな表情の角谷【撮影・渡邊大樹】

「角谷のすごいところは、普段すごい感じがしないところ」。主務・山本(観4)は、自軍のエースをこのように評価する。野球の4番打者やサッカーのエースストライカー、大物選手の多くは、常日頃からその隠しきれない大物感を身にまとっている。だが、角谷はいたって普通だ。甘口カレーが大好きな、普通の21歳だ。それでも部員たちは彼女の背中を追いかけるし、信頼も寄せている。主将・滝島(文4)が「ボートに対してとても真摯な方」と言うように、角谷のボートに対する姿勢が、人を惹きつけているのだ。

「今ボート楽しいです」。大会後のインタビューで、彼女は目を輝かせた。まるで宝物を眺める無邪気な子供のように。大好きなもので輝く人は魅力的だ。角谷の強さの秘訣、それは“ボートを愛しているから”なのかもしれない。

(4月13日・合田拓斗)