球春がやってきた。MLBが7年ぶりに日本で開幕し、イチローの引退試合に沸いた。そして先月29日には、プロ野球も開幕。選抜…

球春がやってきた。MLBが7年ぶりに日本で開幕し、イチローの引退試合に沸いた。そして先月29日には、プロ野球も開幕。選抜高校野球は東邦(愛知)の史上最多5度目の優勝で幕を閉じた。

 “60フィート6インチ”=18.44m

これは、投手板から本塁までの距離である。

諸説あるが、60フィート6インチの「6インチ」がとても奥深く、今の野球の面白さを作っていると言っても過言ではない。 この6インチは国際的なルールブックで唯一、半端な数字が出ている距離なのだ。 本来は60フィートで作られていた投手板から本塁までの距離だが、当時アメリカで60.0フィートの文字の書き手が乱雑であり、これを読み手が間違え、60.0フィートを60フィート6インチと間違えて起きたことが今日の世界のルールになっていると言われている。

しかし、この「6インチ」のミスが今日の野球にとても大きな影響を与えている。6インチは約15cm。短いように見えるが、例をあげればかつてドジャースで活躍した野茂英雄投手のフォークボールは落ちはじめる前に、打者に捕らえやすくなる。逆にエンゼルス・大谷翔平投手の160kmを超える速球は、より速くミットに収まることになり、打つことが今よりも更に困難になっていたはずだ。 この6インチは人間が行ったからこそ生まれた奇跡のミスであり、野球を面白くしているルールの1つだ。 スポーツとはミスと隣り合わせのものだ。このルールを取り上げれば当時はミスであったかもしれないが、現在では立派なルールになり、むしろ成功と言える。

野球のみならず、全てのスポーツで機械の導入などで急激な変化が生まれている。だが、スポーツは人が作り上げたものであり、人が行うスポーツだからこそ「ドラマ」があり「感動」があり「夢」がある。 ミスの中にもドラマがあり、ミスとは単純にネガティブにとらえるのではなく、ポジティブにとれば、また面白いスポーツの一面が見えてくる。 ミスを単なるミスとは捕らえず、人が行うからスポーツであり、ミスがあったからこそ生まれる奇跡もある。 映像技術などに頼る事も必要になってきているのは確かであるが、スポーツにどこか人間味を残してほしい。

文:元プロ野球審判 坂井遼太郎